不動産投資の確定申告とは?初心者向けに仕組みを解説

確定申告が必要なのは「年末調整で不動産所得は精算されない」ため
不動産投資で賃貸収入を得ている人は、給与所得とは別にその収支を不動産所得として確定申告し、適切に納税する必要があります(*2)。
年末調整では給与所得以外の税金までは精算されないため、給与以外の所得が一定額を超える場合には、自ら確定申告しなければなりません。
税法上、所得は10種類に分類されており、家賃収入から必要経費を差し引いた利益は「不動産所得」として扱われます。不動産所得がプラス(黒字)で税額が発生する場合は納税が必要です。
また、不動産所得が赤字の場合、法律上は申告義務がないケースもありますが、確定申告を行えば給与所得など他の所得と損益通算して所得税の還付を受けられる可能性があります(*3)。
ただし、別荘など趣味目的の貸付けによる損失や、土地等の取得に伴う借入金利子に相当する損失などは損益通算の対象外となる点に注意が必要です(*3)。
このように、不動産投資における確定申告は、所得を正しく計算して納税するだけでなく、節税のチャンスにもなり得る重要な手続きです。
家賃収入は「不動産所得」として申告し、税額が決まる
不動産所得とは、家賃収入などの総収入金額から必要経費を差し引いた所得のことです。
給与所得などとは別区分で、不動産所得が黒字なら他の所得と合算され、赤字なら他の所得と損益通算できます(*3)。
不動産投資で確定申告が必要な人・不要な人|20万円ルールも解説

20万円ルールは「収入」ではなく「所得(利益)」で判定する
給与所得者の場合、給与・退職所得以外の所得金額(不動産所得など)の合計が年間20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告は不要です(*2)。
これがいわゆる「20万円ルール」です。ここでいう「20万円」は家賃収入(売上)ではなく、家賃収入-必要経費=所得(利益)で判定する点に注意しましょう。
ただし、この規定が適用されるのは所得税のみであり、住民税については別途申告が必要になる場合があります(*3)。
例えば、会社員が不動産所得として年間10万円のプラスが出た場合、所得税の確定申告義務は原則ありませんが、住民税の申告が必要となることがあります。
一方、不動産所得を含む給与以外の所得が20万円を1円でも超える場合には、確定申告が必要です(*2)。
また、20万円以下でも、医療費控除や住宅ローン控除(初年度)などで確定申告を行う場合は、原則として給与以外の所得もあわせて申告する必要があります。
| ケース | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 会社員/不動産所得が20万円以下 | 原則不要 | 必要となる場合あり |
| 会社員/不動産所得が20万円超 | 必要 | 必要 |
| 会社員/不動産所得が赤字 | 義務は生じないことが多い(※) | 状況による |
| 医療費控除・住宅ローン控除(初年度)などで申告する | 必要(申告するなら原則まとめて申告) | 必要 |
| 個人事業主・年金生活者など(給与なし) | 20万円ルールは原則適用なし | 必要 |
※赤字でも、確定申告を行うことで損益通算や還付の可能性があります(条件により適用制限あり)。
会社員と個人事業主では「申告要否の判定基準」が別物
確定申告が必要かどうかは、給与所得者(会社員)か、給与所得のない個人事業主等かで判断基準が異なります。
会社員の場合、年末調整で給与所得の税金が精算されるため、基本的には給与以外の所得(不動産所得など)が20万円を超えるかが一つの目安になります(*2)。
一方、給与所得のない個人事業主や年金生活者の場合、この20万円ルールは適用されません。そのため、不動産所得がある方は、原則として不動産所得を含む総所得金額が所得控除額(基礎控除など)を超えるかで申告要否を判断します。
また、会社員で不動産所得が赤字の場合や、個人事業主でも所得が控除内に収まる場合には、所得税の申告義務が生じないことがあります。
ただし赤字でも確定申告を行うことで、給与所得など他の所得と損益通算して還付を受けられる可能性があり、青色申告であれば損失の繰越控除による節税効果も期待できます。
したがって「申告が必要か」の判断は、義務の有無だけでなく、申告するメリットも踏まえて検討するとよいでしょう。
不動産投資の確定申告で提出する書類一覧

| 書類名 | 提出の要否 | 用途・補足 |
|---|---|---|
| 源泉徴収票 | 提出不要 | 給与収入・源泉徴収税額を申告書に転記するために使用 |
| 管理会社の年間収支報告書 | 提出不要 | 家賃収入・管理費・修繕費などの集計確認用 |
| 収支内訳書/青色申告決算書 | 提出必須 | 不動産所得の計算結果を記載 |
| 領収書・通帳など証拠書類 | 提出不要(保存義務あり) | 経費の裏付け資料(税務調査に備えて保存) |
源泉徴収票
給与所得がある方は、会社から交付される源泉徴収票を確定申告で参照します。
源泉徴収票にはその年の給与収入額や源泉徴収税額などが記載されており、給与所得と不動産所得を合算して申告する際に必要です。
なお、確定申告書(紙提出を含む)に源泉徴収票の添付や提示は不要とされています。そのため、申告書作成時に源泉徴収票の数値を転記(またはデータ連携で取り込み)できるよう、手元で保管しておきましょう。
管理会社の年間収支報告書
物件を不動産管理会社に委託している場合、年末に「年間収支報告書」等の名称で、その年の家賃収入や管理費・修繕費などの支出をまとめた報告書が発行されることがあります。
これは確定申告で不動産所得を計算する際に役立つ資料です。報告書には1年間の総家賃収入、空室期間、管理委託料や修繕費の合計額などが一覧になっています。
この書類自体は税務署に提出する必要はありませんが、申告書の収入・経費欄を正確に記入するための参考資料として活用できます。
なお、報告書や明細が「一式」など内訳が不明瞭な表記になっている場合は、後で説明できるよう、可能な範囲で内訳明細・見積書・領収書もあわせて保管しておくと安心です。
管理会社を利用せず自主管理している場合は、自分で1年間の家賃入金や支出をまとめた収支明細を作成しておきましょう。
領収書・通帳など証拠書類
必要経費を裏付ける領収書や振込記録も重要です。
物件の修繕費や管理費、火災保険料、仲介手数料、ローン利息など、経費として計上する支出には対応する証拠書類を保管しておきます。また家賃の入金や経費支出を証明するため、銀行通帳の該当箇所を整理しておくとよいでしょう。
これらの証拠書類は税務調査時に提示を求められる可能性があるため、日頃から整理・保存しておきましょう。
帳簿や書類の保存期間は原則として7年(一定の場合は5年)とされているため、迷う場合は長めに保管しておく運用が安全です。
不動産投資の確定申告で計上できる経費とは?

経費は「賃貸収入を得るために直接必要」が判断基準
不動産所得の計算上、賃貸収入を得るために直接必要な費用は「必要経費」として計上できます(*5)。主な必要経費の例として、以下のようなものがあります。
-
- 固定資産税(物件にかかる毎年の税金)
-
- 損害保険料(火災保険や地震保険など物件にかける保険料)
-
- ローンの利息(借入金の利子部分)
-
- 管理委託料(管理会社へ支払う建物管理費や入居者募集費)
-
- 修繕費(建物や設備の修理・原状回復のための費用)
-
- 減価償却費(建物・設備の購入代金を耐用年数で配分した費用)
-
- 水道光熱費(共用部分の電気代や水道代など大家負担分)
-
- 通信費(賃貸運営に使った電話代や郵送費用等)
-
- 交通費(物件の巡回や管理のために使った交通費)
-
- 広告料(入居者募集のための広告掲載料や不動産仲介手数料)
以下の表に、特に迷いやすいポイントだけをまとめます(*5)。
| 項目 | 経費にできる例 | 注意点(迷いやすい所) |
|---|---|---|
| ローン利息 | 利子部分 | 元金は不可。取得〜使用開始までの利子は、原則として取得費に含める扱いになる点に注意 |
| 修繕費 | 原状回復・故障修理など | 価値を高める工事は「資本的支出」として減価償却になる場合あり |
| 管理委託料 | 管理費・募集費など | 明細が「一式」だと説明しづらいので、内訳や請求書も保管 |
| 通信費・交通費 | 募集連絡、物件確認など | 私用と混ざる場合は、根拠が説明できる範囲で按分 |
| 修繕積立金 | (ケースにより) | 原則は修繕が完了した年分の経費。一定要件を満たす場合に支払年に算入できることもある |
以上は一例ですが、要するに賃貸経営に必要であり、かつプライベートな支出と明確に区分できる費用であれば経費算入できます(*5)。
減価償却費については次章で詳説しますが、経費に含めること自体はもちろん可能です。
NGになりやすいのは「私用混在・資本的支出・元金返済」
反対に、経費として認められない費用の例も把握しておきましょう。
典型的なのは賃貸業とは関係のない個人的な支出です。例えば大家自身の生活費や自宅の光熱費、プライベートの旅行費などは必要経費になりません。
また、物件の購入代金やローンの元金返済分も経費にはできず、建物の購入費用は減価償却によって少しずつ費用化します(土地は非減価償却資産のため経費になりません)。
さらに、建物の価値を高める増改築費用など資本的支出は修繕費とは区別され、一括で経費計上できず減価償却の対象となります。
経費に計上できるか迷った場合は、「それが賃貸収入を得るために直接必要な支出か」を基準に判断すると良いでしょう(*5)。
減価償却とは?不動産投資の税金対策としての仕組み

減価償却は「建物・設備だけ」を年数で分けて経費化する仕組み
減価償却とは、建物や設備の取得費用を法定耐用年数にわたって分割し、毎年経費として計上していく仕組みです。
土地は減価償却できませんが、建物や設備は時間の経過とともに価値が減少するため、その購入代金を一定年数で配分して経費化が認められています。
不動産投資(賃貸用)でよく使う建物の耐用年数は、構造によって異なり、木造(住宅用)は22年、鉄筋コンクリート造(住宅用)は47年です(*6)。
なお、用途や資産区分によって耐用年数・償却方法が変わるため、実務では「自分の物件がどの区分か」を確認することが大切です。
計算方法は、個人の不動産投資では定額法(毎年ほぼ同額)が一般的です。平成19年4月1日以後に取得した資産の定額法は、ざっくり言うと次の考え方になります。
-
- 定額法の減価償却費=取得価額 × 償却率(償却率は国税庁の表で決まる)
たとえば、取得価額2,200万円・耐用年数22年の木造(住宅用)の場合、定額法の償却率は0.046なので、
2,200万円 × 0.046 ≒ 101.2万円/年を減価償却費として計上できます(単純に「2,200万円÷22年=100万円」と近いですが、実務は償却率で計算します)。
| 構造(住宅用の例) | 法定耐用年数 | 定額法の償却率(平成19年4月1日以後取得) |
|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 0.046 |
| 鉄筋コンクリート造 | 47年 | 0.022 |
また、中古物件を購入した場合は、耐用年数をそのまま使わず、簡便法で見積耐用年数を計算するのが基本です。考え方は次のとおりです。
-
- (法定耐用年数 − 経過年数)+(経過年数 × 20%)
(端数処理など細かいルールもあるため、当てはめるときは注意が必要です)
- (法定耐用年数 − 経過年数)+(経過年数 × 20%)
減価償却費は現金支出を伴わない経費のため、帳簿上の利益を圧縮して課税所得を減らす効果があります。
節税になる一方で「手残りズレ・デッドクロス」に注意が必要
一方で、ローン返済(元金)は現金支出が続くため、帳簿上の利益と手残り(キャッシュフロー)がズレることがあります。
減価償却が進んだ後に税負担が増えやすい局面(いわゆるデッドクロス)もあるため、購入直後だけでなく中長期の収支もセットで見ておくと安心です。
不動産投資の確定申告の手順をわかりやすく解説

最初にやるべきは「収入・経費・ローン利息・減価償却」の材料集め
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| ① 準備 | 必要書類をそろえる | 源泉徴収票は添付不要/数値参照用 |
| ② 計算 | 不動産所得を計算 | 減価償却・損益通算を忘れない |
| ③ 提出 | e-Taxまたは書面で提出 | 期限内提出で控除を最大化 |
まず、確定申告に必要な書類を揃えます。
前述の源泉徴収票(給与所得がある人)、賃貸収入と支出の明細(管理会社の年間収支報告書や自作の収支表)、経費の領収書や通帳の記録などを用意しましょう。
また、申告に使用する確定申告書(第一表・第二表)や、収支内訳書(不動産所得用)または青色申告決算書(不動産所得用)の様式も準備します(税務署や国税庁サイトから入手可能)。
青色申告を行う方は日々の帳簿を基に決算書類を作成する必要があるため、早めに取り掛かりましょう。
不動産所得は「収入−必要経費−減価償却」で計算する
次に、その年の不動産所得の金額を計算します。
まず1年間の総家賃収入額を集計し、次に必要経費の合計額を算出します。総収入金額-必要経費=不動産所得という計算式になります。
経費の内訳については前述のとおりですが、減価償却費も忘れずに計上します。こうして計算された不動産所得がプラスであれば課税対象となり、確定申告書の「不動産所得」欄に記入します。
不動産所得がマイナス(赤字)であった場合は、給与所得など他の所得から差し引く損益通算が可能です(*3)。さらに青色申告をしていれば、その赤字(純損失)を翌年以降3年間に繰り越して後年の黒字と相殺することも可能です(*7)。
提出はe-Taxが基本、期限内申告で控除を最大化できる
確定申告書の作成・提出には、電子申告(e-Tax)を利用する方法と、書面(紙)で提出する方法があります。
電子申告を利用する場合、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使って自宅のパソコンやスマホから申告書を作成・送信できます。
マイナンバーカード等の準備は必要ですが、画面の案内に沿って入力すれば自動計算されるため、初めてでも進めやすい方法です。
また、青色申告の場合、要件を満たしたうえでe-Tax(電子申告)または電子帳簿保存を行うと、青色申告特別控除は最大65万円となります(*7)。
一方、書面提出の場合は、完成した申告書類一式を印刷し、所轄税務署に郵送または持参して提出します。
郵送の場合は申告期限日の消印が有効です。なお、源泉徴収票等の添付(貼付)や提示は不要とされているため、提出用に貼る必要はありません(申告書作成のための手元資料として保管します)。
申告期限は原則として翌年の2月中旬~3月中旬ですが、2025年(令和7年)分は2026年(令和8年)2月16日(月)~3月16日(月)が受付期間です。
期限を過ぎると、青色申告特別控除(55万円・65万円)の適用を受けるための要件(期限内申告)を満たせなくなるため注意しましょう(*7)。
税額の納付が必要な場合は期限までに納税を済ませ、還付がある場合は後日指定口座に振り込まれます。
不動産投資の確定申告でよくある間違いとリスク

経費ミスは「払い過ぎ」か「追徴」のどちらかになる
不動産投資の確定申告でありがちなミスの一つは、経費計上の誤りです。
本来経費にできる費用を計上漏れしてしまう「過少計上」と、経費にならないものまで含めてしまう「過大計上」があります。
過少計上の場合、余分な税金を納めることになり投資家に不利益です。例えば減価償却費を計上し忘れると、不動産所得が実際より大きくなって税負担が増えてしまいます。
一方、過大計上の典型例は私的支出を経費に含めてしまうケースです。こうした誤りが税務調査で発覚した場合、本来納めるべき税額に加えて過少申告加算税(原則10%)が課される可能性があります。
さらに、追加で納める税額のうち「当初申告税額または50万円のいずれか多い金額」を超える部分は15%となる点にも注意が必要です。加えて、納付が遅れれば延滞税が発生することもあります。
経費の過少・過大計上を防ぐには、日頃から領収書や明細を整理し、根拠が説明できる形で帳簿付けを行うことが大切です。
| ミスの種類 | よくある例 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 過少計上 | 減価償却費の計上漏れ、経費の付け忘れ | 税負担が増える(払い過ぎ) |
| 過大計上 | 私的支出の混入、按分せず全額計上 | 追徴課税(過少申告加算税・延滞税等) |
| 悪質と判断 | 隠ぺい・仮装など意図的な不正 | 重加算税など、より重いペナルティの対象になり得る |
家事按分は「全額計上」が一番危険、根拠をセットで残す
自宅と賃貸物件で共用している費用や、プライベートと事業用途が混在する支出を処理する際の家事按分も、誤りが生じやすいポイントです。典型的な例は、本来按分すべき費用を全額経費に算入してしまうケースです。
例えば、自宅兼事務所の電気代や個人の携帯電話料金などは事業利用分のみ経費にできますが、その判断を誤って全額を経費計上すると過大計上となります。
逆に、事業に使った割合を過小に見積もって経費計上しないと過少計上となり、せっかくの節税機会を逃してしまいます。
家事按分を適切に行うには、按分の根拠(使用割合など)を合理的な基準で算出し、その計算メモを残しておくと良いでしょう。根拠が明確であれば税務署にも説明が付きますし、不明確な場合はシビアに見積もっておく方が無難です。
青色申告は「事前申請+期限内+帳簿要件」を落とすと損する
青色申告には数々のメリットがありますが、その反面、形式要件を満たさないと特典を受けられなかったり、場合によっては青色申告の承認が取り消されるリスクもあります。よくあるのは事前手続きの不備です。
青色申告を利用するには、原則その年の3月15日まで(新規開業や賃貸開始の場合は開始日から2か月以内)に「青色申告承認申請書」を税務署に提出して承認を受けておかなければなりません(*7)。
これを忘れると、その年は青色申告の特典(55万円・65万円控除や損失繰越控除等)を受けられず白色申告扱いになってしまいます。
また、帳簿付けの不備にも注意が必要です。青色申告では日々の取引を正規の簿記(複式簿記)で記帳し、決算書類(損益計算書・貸借対照表)を期限内に提出することが求められます。
決算書の添付漏れや申告の遅れがあると、青色申告特別控除が適用されない(控除額が小さくなる)可能性があります。
青色申告を利用する以上、帳簿・書類の整備と期限厳守は基本です。
不動産投資の確定申告で節税する方法

青色申告は「控除+赤字繰越」で節税効果が大きい
青色申告には税制上の特典が多数あります。代表的なのが青色申告特別控除で、要件を満たすと不動産所得から最大65万円を控除できます(*7)。
ただし「青色申告をするだけ」で最大控除が受けられるわけではなく、控除額は記帳方法・期限内申告・e-Tax利用などで変わります。
また、青色申告者は不動産所得が赤字の場合に、その損失を翌年以降3年間繰り越すことが可能です(*7)。白色申告には通常、赤字の繰越控除がないため、節税面で青色申告が有利なのは明らかです。
| 控除額 | 主な要件 | ポイント |
|---|---|---|
| 65万円 | 複式簿記+期限内申告+e-Tax(または電子帳簿保存) | 最も節税効果が大きい |
| 55万円 | 複式簿記+期限内申告 | 電子要件なしの場合の基本ライン |
| 10万円 | 青色申告(簡易な記帳を含む) | 青色の最低ライン。記帳と申告は必要 |
赤字は「損益通算→控除しきれない分は繰越」が基本戦略
不動産所得が赤字になった場合の税務上の扱いについて説明します。
まず、その年の不動産所得の赤字は他の所得(給与所得など)から差し引くことができます。これを損益通算といい、確定申告をすることで適用されます(*3)。
さらに、その年の損失で控除しきれない部分(純損失)は、青色申告をしていれば翌年以降3年間にわたり繰り越して後年の黒字と相殺することが可能です(*7)。
一方、白色申告では通常、赤字の繰越控除は認められません。したがって、赤字で所得税が発生しない場合でも、節税の観点からは確定申告書を提出しておくことが望ましいです。
土地建物の按分を誤ると「減価償却の前提」が崩れる
不動産を購入した際に、土地と建物の価額を按分する作業も節税上重要です。
一括購入した物件では、契約書に内訳がない場合でも合理的な基準で土地と建物に取得費を配分する必要があります。これは建物のみ減価償却でき、土地はできないためです。
按分方法で迷った場合は、固定資産税評価額(課税明細)を使って、土地・建物それぞれの評価額の割合で購入価額を配分する方法が実務上は説明しやすいでしょう。
契約時には固定資産税評価額等に基づき、根拠が残る形で適切に按分しておくことが大切です。
まとめ|不動産投資の確定申告は「ルール理解」と「事前準備」で迷わない

不動産投資で得た収入の確定申告は、正しい知識を持って臨めば決して難しくありません。
サラリーマンの副収入に申告義務があること、必要経費や減価償却を適切に計上できること、青色申告の優遇を活用できること——こうしたポイントを押さえておけば、適法に節税しつつ安心して投資を続けられます。
ただし、節税だけを目的に投資判断をするのは避けましょう。減価償却による節税効果は永続ではなく、償却が進むと税負担が増えやすい局面(いわゆるデッドクロス)が来ることもあります。
手残り(キャッシュフロー)を軸に、長期目線で収支を管理することが大切です。
ぜひ本記事の内容を参考に、来年以降の確定申告に役立ててください。
不動産投資の確定申告でよくある質問(FAQ)

不動産投資では青色申告と白色申告のどちらを選ぶべきですか?
青色申告と白色申告の最大の違いは、事前申請の要否と税制上の優遇の有無です。
青色申告は事前に所轄税務署へ「青色申告承認申請書」の提出が必要ですが、青色申告特別控除や損失の繰越控除など有利な制度が利用できます(*7)。
白色申告は事前手続きなしで選択できますが、青色申告のような優遇は基本的にありません。
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前申請 | 必要 | 不要 |
| 青色申告特別控除 | 10万/55万/65万(要件で変動) | なし |
| 赤字の繰越 | 原則3年 | 通常は不可 |
| 帳簿・書類 | 要件が厳しめ(複式簿記等) | 比較的シンプル |
青色申告特別控除の55万円・65万円は、主に「複式簿記での記帳」「期限内申告」「e-Tax(または一定の電子帳簿保存)」などの要件で決まります。
なお、賃貸の規模によって、青色申告で使える制度(例:専従者給与など)の扱いが変わることがあるため、該当する場合は要件を確認しておくと安心です。
不動産所得が赤字の場合でも確定申告は必要ですか?
不動産所得が赤字の場合、所得税の確定申告が必ずしも必要とは限りません。
ただし、税務上のメリットを考えれば申告した方が有利なケースが多いです。確定申告を行うことで、給与所得など他の所得と損益通算でき、所得税が還付される可能性があります。
また、青色申告なら赤字を3年間繰り越して後年の黒字と相殺することもできます(*7)。
なお、所得税の確定申告をしない場合でも、状況によっては住民税の申告が必要になることがあります(自治体の取扱いもあるため、必要に応じて確認すると安心です)。
副業禁止の会社でも、不動産投資をして確定申告して大丈夫ですか?
賃貸収入は一般に「資産運用」として扱われ、会社の副業規定の対象外とされることも多い一方で、会社の就業規則の定義次第です(物件数が多い・事業的に運営している等の場合、社内ルール上の扱いが変わることもあります)。
また、確定申告の内容が直接会社に通知されるのが一般的ではありませんが、住民税の金額変動から副収入の存在を推測される可能性はあります。
リスクを下げたい場合は、確定申告書第二表の「住民税に関する事項」で、給与・公的年金等以外の所得に係る住民税を「自分で納付(普通徴収)」にする方法が有効です。
ただし、自治体の運用により必ず普通徴収になるとは限らないため、「確実にバレない」とは言い切れない点は押さえておきましょう。
出典元
*1 総務省統計局:「住宅・土地統計調査」
*2 国税庁:タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
*3 国税庁:タックスアンサー No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」
*4 千葉県船橋市:「令和7年度(令和6年分)市民税・県民税の申告について」
*5 国税庁:タックスアンサー No.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
*6 日本住宅・木材技術センター:「木造建築物等の耐久性等に係る評価報告書」(公式サイト掲載PDF、該当ページ参照)
*7 国税庁:タックスアンサー No.2070「青色申告制度」