家賃収入にかかる所得税とは?税区分・計算の基本

家賃収入の利益は「不動産所得」として課税される
家賃収入による利益は税法上「不動産所得」として扱われ、所得税(あわせて復興特別所得税)の課税対象になります。
不動産所得は、土地や建物の貸付けによって得られる収入から必要経費を差し引いて計算される所得区分です(*1)。
不動産所得は「総収入−必要経費」で計算する
具体的には「総収入金額 - 必要経費 = 不動産所得」という計算式になります。
総収入金額には受け取った家賃のほか、更新料・名義書換料・承諾料・頭金など賃貸借に伴い受領するもの、敷金や保証金のうち返還不要な金額、共益費等の名目で受け取る電気代や水道代、掃除代なども含まれます。
なお、敷金等は原則「預り金」ですが、返還不要となる部分は返還不要が確定した日に収入計上します。
一方、必要経費には固定資産税や火災保険料、減価償却費、修繕費など、賃貸収入を得るために直接要した費用が該当します。不動産所得の金額がプラス(黒字)であれば、他の所得と合算したうえで超過累進税率(5%~45%)による所得税が課されます。
一方、計算上マイナス(赤字)になる場合には、その赤字を他の所得から差し引く「損益通算」が認められるケースがあります。
申告要否は「収入」ではなく「所得(利益)」で判定する
なお、給与所得があるサラリーマンの場合、原則として各種所得金額(給与所得・退職所得を除く)の合計が20万円超となると確定申告が必要で、この「20万円」は収入ではなく所得(収入-経費)で判定します。
20万円以下でも赤字で還付を受けたい場合などは申告することで税金が戻ってくる可能性がありますが、所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告が別途必要となるケースがある点は押さえておきましょう。
まずは家賃収入の収支構造を正しく把握し、所得税の計算の全体像を押さえておくことが大切です。
なお、赤字で還付を狙う場合は損益通算のルールにも注意が必要で、土地取得に係る借入金利子など、通算の対象外となるものがあります
家賃収入で所得税は戻ってくる?還付が発生する条件

還付の条件は「前払いの税金(源泉徴収等)があること」
家賃収入に係る所得税が戻ってくることはあります。ただしそれは、「納め過ぎた税金」がある場合に限られます。
具体的には、給与から源泉徴収された所得税や予定納税額が、家賃収入も含めた最終的な年間所得に対する税額より多い場合、確定申告を行うことでその納め過ぎ分が還付されます(*2)。
言い換えると、不動産所得が他の所得と相殺されて所得全体の税負担が軽減された結果、前払いされていた税金の一部が払い過ぎとなり、返金される仕組みです。
不動産所得の赤字で課税所得が減ると還付が起きやすい
典型的なケースは「不動産所得が赤字」の場合です。
例えば、本業の給与所得がある方が賃貸経営で赤字を計上すると、給与にかかる所得税の一部が払い過ぎになります。
給与から天引きされる源泉所得税は、副収入がない前提で計算されていますが、確定申告で賃貸の赤字を申告すると課税所得総額が減り、本来納めるべき税額も下がります。その差額が還付金として手元に戻るわけです。
【具体例】
給与所得が600万円、不動産所得が▲50万円の場合、源泉徴収は600万円ベースで行われていますが、確定申告後の課税対象は550万円となるため、その差に相当する税金が還付されます。
黒字なら還付ではなく追加納税になることが多い
一方、家賃収入で利益(黒字)が出ている場合は、基本的に還付は生じません。
この場合は他の所得と合算して税額が計算され、源泉徴収されていた税額では不足し、追加で納税が必要になるケースもあります。重要なのは、所得税の還付は「払い過ぎた税があること」が前提だという点です。
なお、還付申告ができる期間は、原則として所得が発生した年の翌年1月1日から5年間です。
また、不動産所得が赤字であっても、土地取得に係る借入金利子など、損益通算の対象外となる費用があるため、実際の還付額は想定より少なくなる場合がある点には注意が必要です。
還付のカギとなる損益通算とは?仕組みと対象経費

損益通算は“不動産の赤字”を他の所得と相殺できる仕組み
「損益通算」とは、不動産所得の赤字を他の黒字の所得から差し引くこと(所得間の相殺)を指します(*3)。
この仕組みにより、給与所得など他の所得の課税対象額が減少し、その結果として所得税の還付が生じることがあります。家賃収入で税金が戻ってくる最大のカギが、この損益通算です。
仕組みを具体的に説明します。不動産所得は「総収入-必要経費」で計算されます(*1)。
必要経費が大きく総収入を上回れば不動産所得はマイナス(赤字)となり、この赤字分を損益通算によって他の所得(例えば給与所得)から差し引ける場合があります(*3)。
還付額の目安は「赤字×(その人の税率帯)」で考える
例えば、給与所得500万円の方が不動産所得で50万円の赤字を計上した場合、損益通算により課税所得が減少し、その差に応じた所得税が還付されます。
| 内容 | 損益通算前 | 損益通算後 |
|---|---|---|
| 給与所得 | 500万円 | 500万円 |
| 不動産所得 | ― | ▲50万円 |
| 合計所得金額 | 500万円 | 450万円 |
| 所得税率(仮) | 20% | 20% |
| 所得税額 | 約100万円 | 約90万円 |
| 還付の目安 | ― | 約10万円 |
※上記は仕組みを理解するための簡略例であり、実際の税額は各種控除や復興特別所得税を考慮して計算されます。
ただし、損益通算には適用除外となる損失もあります。
代表的なのは別荘など趣味・保養目的の不動産です。例えば自分の別荘を時折貸して得た収入について経費過多で赤字が出ても、その赤字は他の所得と通算できません(主として趣味・保養目的の貸付けは、損益通算の対象外とされるためです)。
損益通算できない赤字(別荘・土地利子・海外中古償却など)がある
また、土地取得ローンの利子に由来する赤字も通算不可とされています。
不動産所得の計算上、土地購入のための借入金利子は必要経費になりますが、その利子が原因で不動産所得が赤字になった場合、その赤字分は「なかったもの」とみなされ、他の所得と相殺できません(*4)。
要するに、土地購入費用の利息で意図的に赤字を作って給与所得を圧縮するような節税は認めない趣旨です。
なお、損益通算の可否や対象範囲には細かなルールがあるため、「赤字なら必ず還付につながる」とは限らない点も押さえておきましょう。
近年では海外中古不動産の減価償却を利用した節税スキームも規制されました。令和3年以降、耐用年数の算定を簡便法で行った海外中古建物の減価償却費による赤字は損益通算できない特例が導入されています。
こうした制度改正も踏まえ、損益通算が適用できる赤字かどうか、事前によく確認することが大切です。
いつ所得税が戻る?不動産の確定申告スケジュール

還付時期の目安は「e-Taxが早い/書面は遅い」
還付金が振り込まれるタイミングは、確定申告書を提出してから概ね3週間~1か月程度が目安です(*5)。
e-Tax(電子申告)で提出すれば処理が早く、約2~3週間ほどで指定口座へ振り込まれます。書面提出の場合は1か月~1か月半ほどかかることが一般的です。
実際の還付時期は申告時期や税務署の処理状況によって多少前後しますが、還付を早めたい場合は、混雑する確定申告期(2月中旬以降)より前に提出するのがポイントです。
| 申告方法 | 還付までの目安 |
|---|---|
| e-Tax(電子申告) | 約2〜3週間 |
| 書面提出 | 約1〜1.5か月 |
還付を確実かつスムーズに受け取るには、確定申告のスケジュールと手続きを正しく踏むことが重要です。
確定申告は原則2〜3月、還付申告は5年さかのぼれる
まず、令和7年分(2025年分)の確定申告(相談・受付)期間は、2026年2月16日(月)~3月16日(月)です。
なお、還付申告(払い過ぎ税金の返還を求める申告)自体はこの期間外でも可能で、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます(*2)。
例えば2023年分の所得税について還付申告するなら、税務署は2024年1月以降受け付けてくれます(5年間さかのぼって還付申告可)。払い過ぎの税を一日でも早く受け取りたい場合、1月中から書類を整えて提出すると良いでしょう。
還付を早めるなら「1月に提出できる準備」が最強
申告にあたっての書類準備もスケジュール上のポイントです。
年明け後、確定申告書(申告書第一表・第二表)と、「不動産所得用の収支内訳書(または青色決算書)」を作成する必要があります。経費の領収書や源泉徴収票(給与所得がある人)なども手元に揃えておきます。
還付申告では振込先口座を指定する箇所がありますので、本人名義の口座を正確に記入しましょう。
未入力や誤りがあると確認に時間がかかり、還付が遅れることがあります。電子申告の場合、マイナンバーカード等の準備や事前の設定も含め、余裕をもって進めるとスムーズです。
提出後は税務署で内容確認・審査を経て還付額が決定され、上記の目安期間で指定口座に「国税還付金」として振り込まれます。e-Taxで申告した場合、マイページから還付金の処理状況を確認できるため、振込までの進捗を把握しやすい点もメリットです。
なお、所得税の還付とは別に、赤字によって翌年度の住民税も減額される場合があります(住民税は6月の納税通知書で調整)。このように、申告時期と還付時期のスケジュール感を把握しておくことで、資金計画にも余裕を持てるでしょう。
家賃収入の必要経費とは?還付額が変わる主な項目

必要経費は「賃貸収入を得るために直接必要」が基準
必要経費として認められる費用を正しく計上すれば、不動産所得が圧縮され、所得税の負担(ひいては還付額)に大きく影響します。まずは、家賃収入から差し引ける「主な必要経費」を把握しておきましょう。
主な必要経費の一覧
| 経費の種類 | 内容・ポイント |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 賃貸に供している期間・部分に対応する税額は経費 |
| 損害保険料 | 火災保険・地震保険など(複数年契約は按分) |
| 減価償却費 | 建物・設備が対象(土地は不可) |
| 修繕費 | 原状回復・維持目的のみ(資本的支出は除外) |
| 管理費・募集費 | 管理委託料・仲介手数料・広告費など |
| ローン金利 | 利息部分のみ経費(元本不可・土地利子は損益通算制限あり) |
以下、それぞれの経費について補足します。
● 固定資産税
賃貸物件に毎年課税される固定資産税は、賃貸に供している期間・部分に対応する税額を必要経費にできます(*1)。都市計画税も同様です。
● 損害保険料
火災保険や地震保険など、賃貸物件にかける保険料も経費です(*1)。年払いの場合も、その年分は費用として計上できます。複数年分を一括で支払った場合は、原則として期間に応じて按分します。
● 減価償却費
建物や設備の購入代金は一度に経費にできませんが、耐用年数にわたり減価償却という形で毎年費用配分します。
現金支出を伴わずに所得を圧縮できる点が特徴で、計上漏れがあると還付額に直接影響します。
なお、土地は減価償却の対象外です(*1)。
● 修繕費
給湯器の交換や屋根の補修など、原状回復・維持目的の支出は必要経費です(*1)。
一方で、建物の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする増改築は「資本的支出」となり、原則として資産計上し減価償却します。判断に迷う場合は税理士に相談すると安心です。
● 管理費・募集費
不動産管理会社に支払う管理委託料や、入居者募集の広告費用も経費になります。毎月の管理手数料や、客付けの仲介手数料などがこれに当たります(*4)。
● ローン金利
物件購入やリフォームのための借入金利子も経費算入できます(*4)(元本返済部分は経費になりません)。
ただし、土地取得に係る借入利子で生じた赤字は、他所得と損益通算できない点に注意が必要です。
● その他経費
水道光熱費(オーナー負担分)、賃貸管理業務の通信費や交通費、税理士など専門家報酬も必要経費になります。
「賃貸収入を得るために直接必要な支出」であれば、幅広く認められます(*4)。
NG経費は「私用混在」と「家事按分の根拠不足」が原因になりやすい
経費にならない主なもの
| 経費にならないもの | 理由 |
|---|---|
| 所得税・住民税 | 個人に課される税金のため |
| 生活費・私的支出 | 賃貸事業と直接関係しないため |
| 親族への給与・家賃 | 原則不可(青色申告専従者給与を除く) |
自宅兼賃貸物件の場合、共用部分の水道光熱費などは業務分のみ按分して経費計上します。
このように適切な範囲で必要経費を計上すれば、不動産所得が減少し、所得税の負担軽減、さらには還付額増加に直結します。領収書類はきちんと保管し、漏れなく経費算入することが大切です。
【具体例】家賃収入で還付されるパターン別シミュレーション

ここでは家賃収入に対する所得税の還付が発生する場合/しない場合を、具体的な数値例で比較します。
| ケース | 家賃収入 | 必要経費 | 不動産所得(収入-経費) | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 黒字 | 100万円 | 60万円 | +40万円 | 追加納税になりやすい |
| 赤字 | 100万円 | 150万円 | ▲50万円 | 還付が出る可能性 |
黒字なら追加納税になりやすく、還付は基本的に起きない
例えば、年間家賃収入が「100万円」、必要経費合計が「60万円」だったとします。
この場合、不動産所得は40万円の黒字です。給与所得など他の所得がある方は、この40万円分だけ課税所得が増えることになります。当然、源泉徴収されていた所得税では足りず、確定申告で追加納税が必要になるケースです。
家賃収入で利益が出ている限り、基本的に所得税が戻ってくることはありません。むしろ利益に応じた所得税・住民税の負担増を見込む必要があります。
赤字で損益通算できると、還付が発生しやすい
次に、家賃収入が同じく100万円でも、必要経費が「150万円」かかったと仮定します。修繕や減価償却費がかさみ、この年は50万円の赤字(不動産所得▲50万円)になりました。
この50万円は損益通算で給与所得などから差し引かれ、課税所得が減少することで本来の所得税額が下がります。その結果、給与から源泉徴収されていた所得税が「納め過ぎ」になり、還付が発生します。
ここではイメージを掴むために単純化すると、税率が20%相当の範囲で課税されている場合は「50万円×20%=10万円」が所得税の軽減額(=還付の目安)になります(*6)。
還付は“税率帯”で変わるため金額は人によって違う
ただし、所得税は超過累進課税のため、実際には「どの税率帯で課税されているか」によって戻る金額は変動します(赤字の全額に20%が掛かるとは限りません)。
また、所得税が動けば、あわせて課される税(復興特別所得税)も連動して変わります。概算の考え方としては、「赤字額×(その人の実効的な税率帯)」が還付の目安と捉えると分かりやすいでしょう。
なお、所得税が軽減される場合、住民税(所得割は原則10%)も翌年度に同様に軽減されます。住民税分は口座振込ではなく、翌年の税額が減る形で反映されるのが一般的です。
以上のシミュレーションから、家賃収入で所得税の還付を受けるには、賃貸収支が赤字になり損益通算できることが前提です。黒字であれば税金は戻らず、赤字で初めて他所得との相殺による減税メリットが生まれます。
ただし、無理に赤字を作ろうとするのは本末転倒です。あくまで必要な経費を適切に計上した結果としての赤字であり、結果的に節税につながる、というスタンスで捉えましょう。
不動産所得の節税につながるポイント|青色申告・特例制度

節税の主軸は「青色特別控除」と「赤字の繰越」
賃貸収入から得られる利益を最大化するには、使える節税制度を正しく理解し、要件を満たしたうえで適用することが重要です。ここでは、不動産所得の節税につながる代表的なポイントを整理します。
● 青色申告特別控除の活用
青色申告者には、所得から最大55万円(要件を満たせば65万円)を控除できる特典があります(*9)。
対象となるのは、不動産の貸付けが事業的規模(おおむね貸家5棟以上または貸室10室以上)で、正規の簿記に基づいて記帳・申告している場合です。
例えば、所得税率20%相当の人が65万円控除を受けられれば、所得税だけでも約13万円の軽減効果が見込めます。事業的規模に満たない場合でも青色申告は可能ですが、その場合の控除額は原則10万円にとどまります。
近年はe-Taxによる電子申告や電子帳簿保存の要件を満たすことで、65万円控除を受けやすくなっています(*7)。青色申告を行うには事前の承認申請が必要なため、賃貸を始めた段階で早めに手続きを済ませておきましょう(*8)。
家族を使うなら「専従者給与」と白色との差を理解する
● 青色事業専従者給与の活用
配偶者や親族が賃貸経営を実際に手伝っている場合、青色申告であれば「労務の対価として相当な範囲」の給与を支払い、経費として計上できます(*8)。
例えば配偶者に年間50万円の給与を支払えば、その分だけ不動産所得が圧縮されます。配偶者に他の収入がなければ、世帯全体で見た税負担が軽くなるケースもあります。
一方、白色申告ではこの給与の経費計上は認められず、代わりに事業専従者控除(配偶者は最高86万円、配偶者以外の親族は1人当たり最高50万円)が適用されます(*9)。
ただし、事業的規模に満たない貸付けでは、白色の事業専従者控除自体が使えない点にも注意が必要です。
専従者給与を利用する場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を事前に提出し、実態に即した業務内容と給与支払いを行うことが前提となります(*8)。
減価償却は“短期の節税”だけでなく“長期の税負担”も読む
● 純損失の繰越控除
当年に大きな赤字が出て他の所得と相殺しきれなかった場合でも、青色申告であればその赤字(純損失)を最長3年間繰り越し、翌年以降の所得から差し引くことができます。
白色申告にはこの繰越制度がないため、赤字を無駄にしないという点でも青色申告のメリットは大きいと言えます(適用には期限内申告が必要です)。
● 特例・優遇制度の活用
不動産所得に直接関係する制度以外にも、節税につながる仕組みがあります。代表例が小規模企業共済で、掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象になります。掛金は月額最大7万円(年84万円)まで設定できます。
ただし、不動産貸付業の場合は事業的規模が前提となるなど加入要件があるため、対象になるか事前確認が必要です。
また、省エネ改修や耐震改修などに関する税制優遇が適用できる場合もあります。賃貸併用住宅などでは按分計算が関わることもあるため、制度ごとの要件を確認しましょう。
● 減価償却の有利な活用
現在、新築建物は原則として定額法による減価償却となります(*8)。
一方、中古建物では耐用年数を法定より短く見積もれる特例(簡便法)が使える場合があり、償却費が大きくなりやすい傾向があります。
また、設備や備品については、取得価額30万円未満で一括償却できる特例が利用できるケースもあります(要件あり)。
減価償却は毎年の所得を左右する重要な要素のため、取得時点で償却方法や適用条件を確認し、長期的な収支計画に沿って選択することが大切です。
● 地方税や補助制度
所得税ではありませんが、自治体による空き家対策補助や耐震診断補助などを活用できれば、実質的なコスト削減につながります。
また、新築賃貸住宅に対する固定資産税の軽減措置なども、賃貸経営全体の負担を抑える要因になります。国の制度だけでなく、自治体独自の施策にも目を向けるとよいでしょう。
以上のように、不動産所得の節税では青色申告を軸に、制度を正しく使うことが重要です。ただし、節税を目的に無理な経費計上や不自然な取引を行うのは避けるべきです。
あくまで法律に則った適正な方法で税負担を抑え、その分キャッシュフローを安定させることが、健全な不動産経営につながります。
家賃収入で所得税を払う際の注意点|税務調査・NG経費

調査で見られやすいのは「赤字の妥当性」と「経費の根拠」
● 赤字申告と税務調査のリスク
不動産所得で毎年のように大きな赤字を計上していると、その妥当性について税務署から確認を受ける可能性があります。
とくに、副業として賃貸経営を行っている場合、赤字が長期間続くと「事業として成立しているのか」「趣味的な経営ではないか」と判断されることがあります。
実際、趣味・保養目的の別荘的な物件については、損益通算が認められていません(*3)。もっとも、修繕費や減価償却費などによる実態に即した赤字であれば、過度に心配する必要はありません。
一方で、家族間で不自然に高額な地代や使用料を支払って赤字を作るなど、形式だけの赤字は否認される可能性があります(*4)。節税を意識する場合でも、あくまで実態に沿った申告を心がけましょう。
● 経費の水増し・不適切計上に注意
必要経費として認められない支出を含めてしまうと、後日否認され、加算税や重加算税の対象となることがあります。
典型的なNG例は、個人的な生活費やレジャー費用を賃貸経営の経費として計上するケースです。自宅兼用物件の場合は、家事関連費を業務分だけ按分し、その計算根拠を残しておくことが重要です(*4)。
また、青色申告専従者給与についても注意が必要です。事前の届出なしに親族へ支払った給与は経費になりません。専従者に該当しない親族への家賃や使用料の支払いも、原則として必要経費には算入できません。
ローン返済については、元本部分は経費にならず、利息のみが経費対象である点も押さえておきましょう。この利息のうち、土地取得に対応する部分は損益通算の対象外となります(*4)。
● 初期費用の扱い
物件取得時にかかる不動産仲介手数料や登記費用などは、その年の経費として一括計上するのではなく、原則として資産計上し、建物の取得原価に含めて減価償却で費用化します。
取得時の費用は税務調査でも確認されやすいポイントのため、安易に全額を経費にしないよう注意しましょう。
● 収入の漏れなく把握・申告
家賃収入は、銀行振込など記録が残る形で受領するのが基本です。
現金で受け取る場合でも、必ず記録を残し、帳簿に正確に反映させましょう。申告漏れは故意でなくても問題となり、延滞税や無申告加算税の対象になります。
税務署は賃貸借契約書や不動産会社の資料などから収入を把握している場合もあるため、「少額だから大丈夫」と考えるのは危険です。
● 税務調査への備え
賃貸オーナーにも、一定の確率で税務調査が行われる可能性があります。
とくに規模が大きい場合や、副業として高額な損益通算を行っている場合は、調査対象になりやすい傾向があります。調査では帳簿や領収書、契約書などの提示を求められますが、日頃から整理・保存していれば過度に構える必要はありません。
証憑整理と記帳をしていれば過度に怖がる必要はない
青色申告者には帳簿・証憑類の保存義務があり、内容によっては過去数年分を遡って確認されることもあります。
領収書の改ざんや架空計上などの不正があれば、重加算税(35%~40%)が課される可能性もあります。節税は制度の範囲内で行い、不正と疑われる行為は避けることが大切です。
以上の点に留意し、適正に申告・納税していれば、家賃収入に関する税務上のトラブルは基本的に回避できます。適切な経費計上による還付や節税は、制度上認められた正当な権利です。
日頃から帳簿と証憑を整え、「経理はクリアに」を意識することが、安心して賃貸経営を続けるための第一歩と言えるでしょう。
まとめ|家賃収入の所得税は条件次第で戻る。確定申告が鍵

家賃収入にかかる所得税について、その基本から還付の仕組み、申告方法、節税策、注意点まで解説しました。
結論として、賃貸経営で所得税が戻ってくるかどうかは「収支状況」と「適切な確定申告」にかかっています。
必要経費を差し引いた結果、不動産所得が赤字になれば、給与など他の所得と損益通算することで、源泉徴収された所得税等の一部が還付される可能性があります。一方で、黒字で利益が出ている場合は所得税は戻らず、追加納税が生じるケースもあります。
そのため、日頃から経費を正確に計上し、青色申告など利用できる制度は積極的に活用することが大切です。不動産所得の赤字は節税につながりますが、認められる範囲であることも忘れないでください。
また、仮に大きな赤字が出なくとも、青色申告特別控除や専従者給与といった仕組みで課税所得を減らせる余地があります。
最終的に、確定申告こそが税金を取り戻す「鍵」になります。
どんなに経費計上や節税策を講じても、確定申告をしなければ還付という結果にはつながりません。逆に言えば、正しい知識に基づいて申告さえ行えば、払い過ぎた税金は戻ってきますし、適法な節税も実現できます。
不動産投資は家賃収入という果実を得る一方で、税金というコストも伴います。しかし、本稿で述べたような制度を理解し上手に対応すれば、そのコストを最小限に抑え、手元に残る利益を最大化することが可能です。
ぜひ本記事の内容を参考に、適切な税務対応を取り入れてみてください。ご自身で難しい場合は税理士など専門家に相談するのも賢明です。正しい申告と節税で、健全かつ有利な賃貸経営を実現させましょう。
出典元
*1 国税庁:No.1370「不動産所得(不動産収入を受け取ったとき)」
*2 国税庁:No.2030「還付申告(所得税の確定申告で税金が戻るケース)」
*3 国税庁:No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」
*4 国税庁:No.2210「必要経費の知識」(不動産所得と経費の取扱い)
*5 国税庁:e-Tax『還付金処理状況の確認』(電子申告後の処理期間)
*6 国税庁:No.2260「所得税の税率」
*7 国税庁:No.2072「青色申告特別控除」(55万円控除・65万円控除の要件)
*8 国税庁:No.1399「新たに不動産貸付を始めたときの届出」(青色申告承認申請の期限等)
*9 国税庁:No.1373「事業としての不動産貸付けとそれ以外との区分」(貸付規模と税務上の取扱い)