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住宅取得の贈与税がかからない方法とは?非課税枠1000万円を最大限活用するための要件と注意点

不動産を購入する際、親や祖父母から資金援助を受ける人は少なくありません。しかし、まとまった金額の援助には通常、贈与税がかかることが大きな負担になります。

実は、2026年現在、一定の制度を利用すれば、住宅取得のための贈与税を合法的に0円にできる方法があります。

さらに、暦年贈与の基礎控除110万円と併用すれば、条件次第で最大1,110万円まで非課税で贈与を受けることも可能です。

本記事では、この非課税特例を最大限活用するために、制度の仕組みや適用要件、具体的な手続き、そして見落としがちな注意点について、専門家の視点からわかりやすく解説します。

目次

  1. 住宅取得の贈与税は本当にかからない?基本の仕組みと課税ルール
    1. 贈与税の計算方法と課税対象
    2. 住宅取得時に贈与が問題になる理由
  2. 住宅取得のための贈与が“かからない方法”とは?非課税制度を使う仕組み
    1. 制度を使うといくら得するのか
  3. 非課税枠1000万円の内容とは?対象となる住宅・金額・期間
    1. 対象となる住宅の条件
    2. 非課税枠の金額と期限
  4. 非課税を適用するための要件|贈与者・受贈者・住宅の要件まとめ
  5. 贈与税がかからないための手続き方法|確定申告の流れと必要書類
    1. 確定申告の手順(贈与税申告)
    2. 必要書類の準備
    3. ミスしやすいポイント
  6. 贈与税がかからないケース・かかるケースを比較|境界線の典型例
    1. よくあるグレーケース
    2. 対象外となる典型パターン
  7. 非課税制度のメリット・デメリット|いつ使うべきか判断基準
    1. 非課税制度の主なメリット
    2. 非課税制度の留意点(デメリット)
    3. いつ使うべきか判断基準
  8. 非課税枠を最大限活用するための戦略|贈与タイミング・住宅ローンとの組み合わせ
    1. 贈与の最適なタイミング
    2. 夫婦で非課税枠を使うコツ
    3. 住宅ローン控除との併用ポイント
  9. まとめ|住宅取得の贈与税がかからないようにするポイント総整理
  10. よくある質問(FAQ)|住宅取得の贈与税で特に多い疑問を専門家が回答
    1. 住宅購入前に贈与してもいいですか?
    2. 現金以外(株式・土地)は対象になりますか?
    3. 夫婦で二重に非課税枠は使えますか?

住宅取得の贈与税は本当にかからない?基本の仕組みと課税ルール

贈与税の計算方法と課税対象

親や祖父母から住宅購入資金の贈与を受けた場合、その金額に応じて贈与税が課されます。贈与税は、贈与によって財産をもらった人(受贈者)が支払う税金です。

 

暦年課税制度では、毎年1月1日から12月31日までにもらった財産の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残り(課税価格)に対して累進税率(最高55%)が適用される仕組みになっています(*1)。

 

なお、直系尊属(親・祖父母)から、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子・孫が贈与を受ける場合は、原則として「特例贈与」の税率表で計算します(一般贈与とは税率表が異なります)。

 

たとえば両親から合計500万円の支援を受けた場合、基礎控除後の課税価格390万円に対して特例税率で計算すると、贈与税は48万5,000円となります。

 

贈与額 基礎控除後の課税価格 税率 控除額 贈与税額
500万円 390万円 15% 10万円 48万5,000円
800万円 690万円 30% 90万円 117万円
1,000万円 890万円 30% 90万円 177万円
1,500万円 1,390万円 40% 190万円 366万円

金額が大きくなるほど税率も上がり、特に多額の贈与では最高55%という非常に高い税率が、基礎控除後の課税価格に対して適用される仕組みとなっています。

 

住宅取得時に贈与が問題になる理由

住宅購入には多額の資金が必要です。若い世代では頭金や建築資金を親から援助してもらうケースも少なくありません。

 

しかし前述のように、まとまった援助には贈与税が課され、せっかくの支援に大きな税金が発生してしまいます。

 

例えば親から子へ住宅取得資金1,000万円を贈与した場合、特例税率適用時の贈与税額は177万円になります。これでは子世帯の負担が増えてしまい、親からの支援という本来の目的が損なわれかねません。

 

そこで国は、一定の要件を満たす住宅取得資金の贈与について、贈与税を非課税にする特例制度を設けています。この制度を活用すれば、親からの援助をそのまま住宅取得に充てられるメリットが生まれます。

 

住宅取得のための贈与が“かからない方法”とは?非課税制度を使う仕組み

住宅取得資金を非課税(または当面の贈与税負担を抑えて)受け取るために利用できる制度は、大きく2種類あります。

 

どちらも「贈与税を減らす」点は共通ですが、目的とゴール(非課税で終わるのか/相続で精算されるのか)が異なるため、まずは全体像を押さえておきましょう。

 

● 住宅取得等資金の贈与税非課税の特例

父母や祖父母など直系尊属から、住宅の新築・取得または増改築等のための資金を贈与により受け取っても、一定額まで贈与税が非課税になる制度です。

 

適用期限は2026年(令和8年)12月31日までで、受贈者ごとに最大1,000万円まで贈与税がかかりません(省エネ等住宅の場合。それ以外は500万円まで)(*2)。

 

本制度の詳細が本記事の中心テーマです。なお、非課税の対象はあくまで「これから住宅を取得等するための資金」であり、既存の住宅ローン返済に充てる目的では使えない点にも注意が必要です。

 

● 相続時精算課税制度

生前にまとまった贈与を受けても、一定の手続きのもとで贈与時点の税負担を抑えられる制度です。

 

原則として、贈与時には累計2,500万円まで贈与税がかからず(超える部分は一律20%で課税)、将来の相続税計算時に贈与時の評価額が加算されて精算されます(*3)。

 

さらに2024年(令和6年)1月1日以降の贈与からは、相続時精算課税でも年間110万円の基礎控除が新設され、110万円以下であれば申告不要かつ相続税の加算対象外となりました。

 

便利になった一方で、110万円を超える部分は相続で精算されるため、将来の相続税まで見据えた判断が欠かせません。

制度 贈与時の扱い 非課税(控除)の目安 注意点
住宅取得等資金の非課税特例 要件を満たす範囲は贈与税が非課税 省エネ等住宅:最大1,000万円/それ以外:最大500万円(受贈者ごと) 期限・申告・住宅要件あり/ローン返済目的は対象外
相続時精算課税 贈与時の負担を抑え、相続で精算 累計2,500万円まで(超過分は一律20%)+年間110万円の基礎控除 110万円超は相続で加算/将来の相続税まで要検討

 

制度を使うといくら得するのか

では、これらの非課税制度を活用すると具体的にどれくらい贈与税が節約できるのでしょうか。簡単な試算で見てみます。

 

まず、住宅取得資金の非課税特例を最大限利用した場合です。

 

通常、親から子へ1,110万円(非課税枠1,000万円+基礎控除110万円)の援助を行うと、特例税率を適用しても約210万円の贈与税負担が生じます。

 

しかし本特例を使えば、この210万円が不要になります。受け取った1,110万円をそのまま住宅取得に充当できるため、資金効率の改善に直結します。

 

次に、相続時精算課税制度を利用した場合です。

 

仮に親から子へ2,500万円を一度に贈与したとしましょう。本来なら累進課税により約810万円の贈与税が課され得る金額ですが、本制度を選択すれば贈与時点での贈与税は原則かかりません(超過分があれば一律20%)。

 

ただし、この場合は将来の相続時に贈与分が精算されるため、贈与時点の税負担がゼロでも、相続税まで含めたトータルの税負担は別途検討が必要です。

 

非課税枠1000万円の内容とは?対象となる住宅・金額・期間

対象となる住宅の条件

非課税特例の対象となる「住宅用家屋」には、いくつかの条件があります。まず、住宅が日本国内に存在することが前提です。

 

また新築・取得の場合は、登記上の床面積が40㎡以上240㎡以下で、その50%以上が居住用である必要があります(*4)。

 

なお、床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、贈与を受けた年の合計所得金額が1,000万円以下であることが追加要件となります。

 

中古住宅の場合は、耐震基準を満たすことがポイントです。

 

新耐震基準(1981年基準)に適合している住宅であることが求められ、耐震性能を証明する書類(耐震基準適合証明書など)を用意できることが条件になります。

 

要件を満たさない古い住宅でも、取得後に耐震リフォームを行い、所定の証明書を提出することで対象に含める道があります。

 

増改築の場合は、自ら所有し居住中の住宅に対して行う工事で、工事費用が100万円以上であること、さらにその費用の半分以上が居住用部分の工事に充てられることが条件です。

 

なお、住宅の敷地となる土地の取得資金も、この非課税特例の対象に含まれます。

 

ただし、土地だけの購入が常に対象になるわけではなく、住宅の取得とあわせて行う敷地取得、または住宅取得に先行して行う敷地取得など、一定の範囲に限られます。

 

土地の「現物贈与」はこの特例の対象外となる点にも注意しましょう。

区分 主な要件(要点) 注意点
新築・取得 国内住宅/床面積40㎡以上240㎡以下/居住用50%以上 40〜50㎡未満は合計所得金額1,000万円以下が必要
中古住宅 耐震基準に適合(証明書等で確認) 要件を満たさない場合は耐震改修+証明書で対応できることも
増改築 自ら所有し居住中/工事費100万円以上/住居部分工事が過半 工事の内容・割合で対象外になることがある
敷地(土地) 住宅取得と一体、または取得に先行する敷地取得の対価 土地のみ購入は要注意/土地の現物贈与は対象外

非課税枠の金額と期限

特例で非課税になる金額(非課税枠)は、住宅の性能によって異なります。一般的な住宅の場合、非課税枠は贈与総額500万円までです。

 

一方、省エネ性能や耐震性能などが一定基準以上の「省エネ等住宅(質の高い住宅)」に該当する場合は、+500万円が上乗せされ、最大1,000万円まで非課税とされています。

 

たとえば、断熱等性能や一次エネルギー消費量などが一定基準以上の住宅が対象になり、非課税枠1,000万円を使うには「省エネ等住宅」に該当することを、住宅性能証明書等で示す必要があります。

 

反対に、性能要件を満たさない場合は500万円枠になるため、同じ贈与額でも税負担が変わり得ます。

 

なお本特例が適用できるのは、現行では2024年から2026年(令和8年)12月31日までに行われる贈与が対象です(*5)。

 

制度は数年ごとに延長されてきましたが、利用を検討している場合は期限を意識して進めましょう。

 

非課税を適用するための要件|贈与者・受贈者・住宅の要件まとめ

非課税の特例を受けるには、贈与を行う人・贈与を受ける人・住宅それぞれに以下の条件を満たす必要があります(*4)。

 

条件は多いですが、「誰から・誰が・いつまでに・どんな住宅に使うか」の4点を押さえると整理しやすくなります。

 

● 贈与者の要件

贈与者は受贈者の直系尊属(父母や祖父母など)であること。

※配偶者の父母(義父母)は直系尊属に含まれません(養子縁組した場合を除く)。

 

● 受贈者の要件

・贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること。

・贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること(取得する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)。

・過去に本特例の適用を受けている場合は、その金額を控除した残額が非課税限度額となること。

・贈与時に日本国内に住所を有すること。

なお、「合計所得金額」には給与所得だけでなく、株式の譲渡所得など分離課税の所得も含まれるため、年によっては想定外に上限を超えることがあります。

 

● 住宅に関する要件

・贈与を受けた翌年3月15日までに住宅を新築・取得し、その代金に贈与資金の全額を充てること。

・贈与翌年3月15日までにその住宅に居住する(または速やかに居住見込みである)こと。

・取得する住宅が、配偶者や親族など特別な関係にある人からの譲渡や請負によるものではないこと。

また、贈与資金は期限までに住宅取得等の対価に充てる必要があるため、資金が余ったり、取得が間に合わなかったりすると、非課税が認められず課税対象となる点にも注意が必要です。

区分 主な要件 つまずきやすい注意点
贈与者 直系尊属(父母・祖父母) 義父母は対象外(養子縁組を除く)
受贈者 1月1日時点で18歳以上/合計所得金額2,000万円以下(40〜50㎡未満は1,000万円以下)/贈与時に国内住所 合計所得金額は分離課税の所得も含む
住宅・手続き 翌年3月15日までに取得等し、対価に全額充当/同日までに居住(または速やかに居住見込み) 資金が余る・期限に間に合わないと課税対象になり得る
取引相手 配偶者・親族など特別関係者からの譲渡・請負ではない 親族から家を買う/親族に工事依頼は対象外になりやすい

贈与税がかからないための手続き方法|確定申告の流れと必要書類

確定申告の手順(贈与税申告)

非課税特例を受けるには、贈与を受けた翌年に贈与税の申告手続きを行う必要があります。

 

たとえ贈与税額が0円でも、必ず確定申告をして特例の適用を受ける旨を税務署に申告しなければなりません。

 

申告期間は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までで、この期限を過ぎると特例は適用されません(*5)。なお、所得税の確定申告は2月16日からですが、贈与税の申告は2月1日から開始される点に注意が必要です。

 

期間内に所轄税務署へ贈与税の申告書を提出し、申告書の該当欄に非課税特例の適用を受ける旨を記載します。

 

申告書の作成は税務署窓口のほか、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)を利用すれば自宅からオンライン提出も可能です。郵送での提出も可能で、消印が3月15日であれば期限内申告として扱われます。

 

期限までに正しく申告を済ませることで、贈与税が課されない手続きが完了します。

手順 やること ポイント
① 書類をそろえる 契約書・性能証明・本人確認などを準備 添付漏れがあると非課税が認められないことがある
② 申告書を作成する 贈与税申告書を作り、特例適用欄に記載 0円でも申告必須
③ 提出する 税務署/e-Tax/郵送で提出 郵送は消印が期限内ならOK
④ 期限を守る 2/1〜3/15に完了させる 期限超過は特例が使えない

必要書類の準備

贈与税の申告書には、特例の適用を受けるために以下の書類を添付する必要があります(*5)。

戸籍謄本(受贈者と贈与者の関係を証明)
住宅の売買契約書または建築請負契約書の写し(住宅取得に資金を充てたことを証明)
住宅の性能に関する書類(省エネ等住宅(質の高い住宅)の非課税枠を利用する場合:例・住宅性能証明書など)
住宅の耐震基準適合を証明する書類(中古住宅で昭和56年以前築の場合や耐震改修を行う場合)
増改築工事証明書(リフォーム資金に特例適用する場合)

 

このほか、申告には受贈者の本人確認書類(マイナンバーカード等)も必要です。提出前に不備がないか書類をチェックしましょう。

書類の種類 主に必要になるケース 補足
戸籍謄本 全員 直系尊属からの贈与であることの確認
売買契約書/請負契約書(写し) 新築・購入 住宅取得等に資金を充てたことの裏付け
住宅性能証明書など 非課税枠1,000万円を使う場合 省エネ等住宅(質の高い住宅)であることの証明
耐震適合の証明書類 中古住宅・耐震改修を含む場合 耐震基準を満たすことの確認
増改築工事証明書 リフォーム・増改築 対象工事であることの確認
本人確認書類(マイナンバー) 全員 申告時に必須(e-Taxは提出方法が異なる)

ミスしやすいポイント

非課税の特例を確実に受けるため、以下の点に注意しましょう。

 

まず、申告漏れに注意が必要です。贈与税がかからない場合でも申告自体は必須なので、「税金が0だから」と確定申告を怠ると特例が適用されず、通常の贈与税が課されてしまいます。

 

同様に、申告期限の遅れにも注意が必要です。期限を過ぎた申告では非課税扱いにならないため、必ず毎年3月15日までに提出を完了させましょう(*5)。

 

また、必要書類の不備にも注意してください。戸籍謄本や契約書のコピー、住宅性能に関する証明書などの添付漏れがあると特例の適用が認められない可能性があります。

 

提出前に書類がすべて揃っているか十分確認することが大切です。

 

贈与税がかからないケース・かかるケースを比較|境界線の典型例

よくあるグレーケース

非課税特例の適用可否が紛らわしいケースをいくつか紹介します。似た状況でも条件を満たさない場合には贈与税がかかるため、事前に「どこが境界線か」を押さえておきましょう。

 

ケース1:贈与者の範囲

祖父母が孫に住宅資金を贈与するケースは対象(非課税)ですが、義理の両親(配偶者の父母)が子に資金提供するケースは原則として対象外(課税)となります。

 

ただし、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当するため、特例の対象になります。

 

ケース2:受贈者の年齢

贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上なら対象ですが、高校生など17歳以下の場合は対象外です。

 

ケース3:贈与資金の使途

親から贈与された資金を住宅の購入代金(家屋および敷地)に充てれば対象ですが、その一部を家具・家電などに使ってしまった場合、その部分は非課税特例の対象にならず課税されます。

 

登記費用や引越し費用、手数料なども「住宅取得資金」には含まれないため、どこまでが対象かを先に確認しておくと安心です。

 

さらに、贈与された資金は期限までに住宅取得等の対価に充てる必要があり、余った部分があると課税対象になり得ます。

 

ケース4:住宅取得の名義

親から資金贈与を受けた子が自分名義で住宅を取得すれば対象ですが、親が自分名義で住宅を購入し後から子に譲渡した場合は、金銭の贈与ではなく不動産の贈与となり本特例の対象外です。

 

この場合、通常の贈与税や不動産取得税等が別途かかる可能性があります。

論点 非課税になりやすい例 課税になりやすい例
贈与者 父母・祖父母からの贈与 義父母からの贈与(養子縁組なし)
年齢 1月1日時点で18歳以上 1月1日時点で17歳以下
資金使途 家屋・敷地の取得対価に充当 家具家電・引越し等に流用/資金が余る
名義 受贈者(子・孫)名義で取得 親名義で取得→後から子へ譲渡

対象外となる典型パターン

以下のようなケースでは本特例が適用できず、通常どおり贈与税の課税対象となります。

 

・受贈者の所得が要件を超えている(例:合計所得2,000万円超)
・受贈者がすでに非課税限度額(累計上限)を使い切っている
・購入した住宅に受贈者自身が居住しなかった(例:取得後に賃貸に出した)
・住宅の床面積が要件を満たさない(例:40㎡未満で小さすぎる)
・不動産そのものを贈与した(例:親が所有する家をそのまま子に贈与した)
・贈与税の申告をしなかった、または期限後に申告した

 

上記の場合、通常の贈与税率(最高55%)による課税を受ける可能性があるため注意が必要です。

 

非課税制度のメリット・デメリット|いつ使うべきか判断基準

非課税制度の主なメリット

本特例を活用することには多くの利点があります。

 

第一に、大幅な節税効果です。最大1,000万円の贈与が非課税になることで、通常なら数百万円かかる贈与税を節約できます。

 

たとえば親から子へ1,110万円(非課税枠1,000万円+基礎控除110万円)の援助を行うと、特例税率でも通常は210万円の贈与税が生じますが、本特例を使えば0円にできます。

 

第二に、相続税負担の軽減につながる点です。

 

この非課税枠で生前贈与した分は、原則として将来の相続財産に持ち戻す必要がなく、親の資産圧縮に有効です(*6)。結果として相続税負担の軽減にもつながります。

 

第三に、資金計画の柔軟性が高まります。

 

親からの援助を活用できるため、自己資金+贈与資金でより良い住宅を取得したり、住宅ローンの借入額を抑えたりしやすくなります。

 

早期に資金を受け取ることで、若いうちから住まいを確保できる点もメリットです。

 

さらに、高性能な住宅(省エネ等住宅)であれば非課税枠が拡大されるため、質の高い住宅取得を後押しする効果もあります。親子間で効率的に資産を移転でき、双方にとってメリットの大きい制度と言えます。

 

メリット 具体的に何が良いか
節税効果 非課税枠の範囲なら贈与税が0円になり得る
相続対策 親の資産を生前に移転し、相続税負担の軽減につながる
資金計画 住宅ローンを抑えたり、住まいの選択肢を広げたりできる
住宅性能の後押し 省エネ等住宅なら非課税枠が大きく、性能投資を後押し

非課税制度の留意点(デメリット)

一方で、本特例には留意すべき点や制約もあります。最大の制約は利用対象者が限られることです。

 

受贈者の合計所得が2,000万円を超える場合や18歳未満の場合は制度を利用できず、高所得世帯・未成年には適用外です。

 

また、取得する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、合計所得金額が1,000万円以下であることが追加条件となります。

 

次に、非課税枠には「使い切り」の考え方がある点に注意が必要です。

 

非課税枠の利用は一生に一度という意味ではありませんが、受贈者ごとに累計の非課税限度額が決まっており(省エネ等住宅で1,000万円、それ以外で500万円)、過去に利用した分がある場合はその残額の範囲での適用になります。

 

また、制度の期限がある点にも注意が必要です。適用期限は現行では2026年(令和8年)12月31日までで、それ以降に贈与を予定している場合は制度延長や代替策を検討する必要があります。

 

さらに、特例適用のための手続きや書類準備に手間がかかる点もデメリットと言えます。

 

贈与税が0円でも申告が必須で、申告漏れや期限後申告、書類の添付漏れがあると、特例が適用されず通常の贈与税が課される可能性があります。これらの条件を踏まえ、自分の状況で本特例を使うべきか検討しましょう。

留意点 つまずきやすいポイント
対象者の制限 所得・年齢で対象外になる
非課税枠は累計上限 過去の利用分があると「残額」しか使えない
期限がある 2026年12月31日までの贈与が対象
手続きが必須 0円でも申告・添付書類が必要(漏れると課税リスク)

いつ使うべきか判断基準

結論としては、「要件を満たす範囲で、期限内に住宅取得が確実な人」ほどメリットが大きい制度です。

 

特に、省エネ等住宅で非課税枠1,000万円を使えるケースや、住宅ローンを抑えたいケースでは効果が出やすくなります。

 

一方、所得要件に引っかかる場合や、住宅取得の時期が読めず期限に間に合うか不安な場合は、相続時精算課税など別制度も含めて比較したうえで判断すると安心です。

 

非課税枠を最大限活用するための戦略|贈与タイミング・住宅ローンとの組み合わせ

贈与の最適なタイミング

非課税枠を最大限に活用するには、贈与するタイミングの計画が重要です。

 

基本的には、売買契約(または工事請負契約)を締結した後、かつ、決済(引き渡し)の前に資金贈与を行い、購入資金に充当するのが理想です。

 

これは「贈与を受けたお金で住宅の対価を支払った」という流れを明確にするために重要で、資金の受け取りが遅れると要件を満たせないリスクが高まります。

 

早めに贈与すれば、申告準備にも余裕が生まれ、贈与金を確実に住宅費用に充てやすくなります。

 

また、受贈者の所得が将来的に増えて要件を超えそうな場合は、所得が低いうちに贈与を受けておく戦略も有効です。

 

たとえば昇進などで合計所得金額が2,000万円を超える前に特例を利用しておけば、後から適用外になるリスクを避けられます。

 

さらに、制度の適用期限(2026年12月31日)にも注意し、計画的に贈与の時期を決めましょう。

 

重要なのは「家の契約日」ではなく、実際に贈与を受けた日が基準である点です。駆け込みにならないよう、余裕を持って準備することが肝心です。

期限の種類 何をいつまでに つまずきやすい点
制度期限 2026年12月31日までに「贈与」を受ける 契約日ではなく「受け取った日」が基準
手続き期限 贈与の翌年3月15日までに「贈与税申告」 0円でも申告が必須
居住の目安 原則として翌年3月15日までに居住(または速やかに居住見込み) 注文住宅などは遅れやすいので要計画

夫婦で非課税枠を使うコツ

夫婦それぞれが非課税枠を利用できれば、世帯として受け取れる非課税贈与額をさらに拡大できます。

 

たとえば夫が自分の父母・祖父母から、妻も自分の父母・祖父母からそれぞれ贈与を受ければ、夫婦合計で最大2,000万円まで非課税にすることも可能です(各受贈者ごとに最大1,000万円)。

 

この際、配偶者の親からの贈与は適用対象にならないため、必ず「自分の直系尊属」からそれぞれが受贈する必要があります。

 

また、夫婦で活用する場合は、住宅の名義(持分)を資金の負担割合に合わせることが重要です。

 

負担割合と持分が一致しないと、夫婦間で別の贈与があったとみなされ、贈与税の課税対象となる可能性があります。

 

夫婦共有にする場合は、贈与額・自己資金・ローン負担を踏まえて持分を設計すると安心です。状況に応じて夫婦間での最適な活用計画を立てましょう。

住宅ローン控除との併用ポイント

住宅取得時には、親からの贈与特例だけでなく住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)も活用できます。

 

非課税贈与により自己資金が増えれば借入額を減らせますが、その分ローン残高に応じた控除額は小さくなります。贈与税の非課税メリットと住宅ローン控除のメリットのバランスを考えることが大切です。

 

また、両制度を併用する場合、住宅ローン控除の計算で「住宅取得資金の贈与を受けた部分」をどう扱うかで誤りが生じやすい点にも注意が必要です。

 

贈与で頭金を増やしつつ、無理のない範囲でローンも活用して控除のメリットを残すのが、実務上のバランスが取りやすい戦略と言えます。

 

まとめ|住宅取得の贈与税がかからないようにするポイント総整理

住宅取得資金に対する贈与税を非課税にするためのポイントを最後に整理します。親からの援助を有効活用するために、次の4点をまず確認しましょう。

 

● 贈与者・受贈者の条件

贈与者は父母・祖父母など直系尊属であること(配偶者の父母は対象外。ただし養子縁組をしている場合は対象)。

 

受贈者は贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上で、合計所得金額が2,000万円以下であること(床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)。

 

また、贈与時に日本国内に住所を有することが必要です。

 

● 住宅および資金使途の条件

住宅の床面積(40㎡以上240㎡以下)や居住用割合などの要件を満たしていることを確認します。

 

非課税枠は省エネ等住宅(質の高い住宅)で最大1,000万円、それ以外は500万円です。贈与資金は住宅の取得・新築・増改築の代金に充て、期限までに使い切ることが前提となります。

 

家具・家電、引越し費用などは対象外で、既存の住宅ローン返済に回すこともできない点に注意しましょう。

 

期限としては、2026年12月31日までに贈与を受けること、贈与翌年3月15日までに住宅の取得等と居住(原則)を満たすことが重要です。

 

● 非課税特例の手続き

贈与を受けた翌年の確定申告期間(2/1~3/15)内に贈与税の申告書を提出し、特例を適用する旨を申告します。贈与税額が0円でも申告は必須です。

 

戸籍謄本や売買契約書(請負契約書)コピーなど必要書類を揃え、添付漏れがないように確認しましょう。

 

● 最大限活用するための戦略

暦年贈与の基礎控除110万円は併用できるため、省エネ等住宅なら最大1,110万円まで非課税にできます。

 

夫婦それぞれが自分の親から贈与を受けられる場合は、合計で最大2,000万円まで非課税枠を広げられます(持分は負担割合に合わせることが重要)。

 

また、まとまった援助を検討する場合は相続時精算課税制度との組み合わせも選択肢になりますが、将来の相続税まで見据えた判断が必要です。

確認ポイント 最低限押さえる内容
人(贈与者・受贈者) 直系尊属から/受贈者18歳以上/所得要件を満たす/国内住所
住宅(対象物件) 床面積・居住用割合の要件/省エネ等住宅かどうか
資金使途(使い方) 住宅の対価に充当/対象外支出に流用しない/期限までに使い切る
手続き(申告) 翌年2/1〜3/15に贈与税申告/必要書類の添付漏れを防ぐ

上記を満たせば、最大1,000万円の非課税枠を活用して住宅取得資金の贈与税を0円にできます。

 

まずは「誰から・誰が・どの住宅に・いつまでに・どう申告するか」を順番に確認し、落とし穴(親名義購入、申告漏れ、入居遅れ、資金の流用など)を避けながら進めましょう。

 

よくある質問(FAQ)|住宅取得の贈与税で特に多い疑問を専門家が回答

住宅購入前に贈与してもいいですか?

はい、住宅を購入する前に贈与を受けても構いません。

 

ただし、その贈与金は贈与を受けた翌年3月15日までに住宅の取得代金に充てる必要があります。

 

本特例では資金の使途と期限が決まっているため、贈与を受けたらできるだけ速やかに物件の契約・購入に進みましょう。

 

実務上は「贈与→支払い」の流れが分かるよう、売買契約(または工事請負契約)後〜決済(引き渡し)前のタイミングで受け取ると管理しやすくなります。

 

現金以外(株式・土地)は対象になりますか?

いいえ、現金以外の資産は本非課税特例の対象になりません。

 

株式や不動産(土地・建物)そのものを贈与された場合、それは住宅取得「資金」ではないため特例は適用されず、通常の贈与税の対象になります。

 

非課税枠を使いたい場合は、住宅取得等の対価に充てる「金銭」の贈与として受け取る必要があります。

 

なお、土地そのものの贈与は対象外ですが、住宅の取得とあわせて行う敷地取得の「費用」に充てるための金銭贈与は対象になり得ます。

 

夫婦で二重に非課税枠は使えますか?

はい、条件を満たせば夫婦それぞれが非課税枠を利用できます。

 

例えば夫が夫の両親から、妻は妻の両親から資金贈与を受ければ、それぞれ最大1,000万円ずつ、合計で最大2,000万円まで非課税にすることも可能です。

 

ただし、配偶者の親からの贈与は対象外のため、それぞれ自分の直系尊属から贈与を受ける点に注意しましょう。

 

また夫婦それぞれが贈与を受けた資金で持分を取得するよう、住宅の名義(持分)を資金の負担割合に合わせることが重要です。

 

出典元
*1 「国税庁:贈与税の計算と税率(暦年課税)
*2 国税庁:「住宅取得等資金の贈与税非課税措置(概要・非課税限度額)
*3 国税庁:「相続時精算課税制度(贈与税の申告等)
*4 国税庁:「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
*5 国税庁:「住宅取得等資金非課税措置の申告手続・必要書類
*6 朝日新聞:「住宅取得資金贈与の非課税制度に関する解説

執筆者

執筆者

神戸 翔太

クールコネクト(株)

代表取締役

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群馬県伊勢崎市を拠点に、農水産物の生産・卸売を中核事業として展開。農業で培ったネットワークを活かし、外国人向け不動産賃貸・社宅代行、空き家活用、清掃事業など周辺領域にも事業を広げ、地域の課題解決に取り組んでいる。

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