固定資産税が「6倍になる」って本当?まずは結論から

空き家にかかる固定資産税が6倍になるという話題は事実ですが、すべての空き家が対象ではありません。
結論から言えば、適切に管理されず「特定空き家」に指定され、自治体から改善の勧告を受けた場合に限り、住宅用地特例が外れて固定資産税が増額(最大6倍相当)されます。ただし通常の空き家では直ちに税金が6倍になることはなく、要件を満たした一部の空き家に限られます。
背景として、日本全国の空き家数は増加の一途をたどっており、2023年時点で約900万2,000戸(空き家率13.8%)に達し過去最多となっています(*1)。
こうした問題を受けて2015年に「空家等対策特別措置法」(以下、空き家対策法)が施行され、周辺環境に悪影響を及ぼす空き家を「特定空き家等」に認定して固定資産税の優遇(住宅用地の特例)を除外する措置が取られてきました。
2023年度の法改正ではさらに対象範囲が拡大し、「管理不全空き家」に対しても固定資産税6倍措置が現実的に適用される流れが進んでいます(*2)。
増税は『特定空き家』に指定された場合に限られる
固定資産税が増額(最大6倍相当)されるのは、放置された空き家が空き家対策法に基づく「特定空き家等」に認定され、自治体から改善の「勧告」を受けた場合です(*3)。
特定空き家とは、防災・衛生・景観などの観点で周辺に著しい悪影響を及ぼしていると認められる状態の空き家のことを指します。
これは後述する詳しい基準を満たしたごく一部の空き家であり、空き家だからといって即座に税金が6倍になるわけではありません。適切に管理され近隣に迷惑をかけていない空き家であれば、この増税措置の対象にはなりません。
逆に言えば、空き家を放置して危険な状態にしてしまうと特定空き家に指定される可能性があり、その状態で行政から「勧告」を受けてしまうと、翌年度から住宅用地特例が適用されなくなり固定資産税が増額されます。
このように増税となる条件は限定的ですが、心当たりのある空き家所有者は注意が必要です。
2023年度の法改正で『6倍化』が現実的に進行中
従来、行政指導の対象は前述の「特定空き家等」のみでした。しかし2023年12月の法改正により、「管理不全空き家」という新たな区分が設けられました。
管理不全空き家とは、現時点では倒壊などの危険が顕在化していないものの、このまま放置すれば将来的に特定空き家になり得る状態の空き家を指します。改正法施行(令和5年12月13日)以降は、市町村がこの管理不全空き家に対しても指導・勧告を行うことが可能となり、勧告を受けた管理不全空き家も特定空き家と同様に住宅用地特例が解除されることになりました(*2)。
つまり、「まだそこまで危険ではない」と油断して放置している空き家も、今後は早い段階で税優遇を外され増税されるリスクがあるということです。
この改正によって、増加し続ける空き家への対策が強化され、固定資産税の最大6倍化措置がより現実味を帯びています。特定空き家になる前に行政が介入できるようになったことで、空き家所有者に求められる管理責任は一段と厳しくなったといえます。
空き家の固定資産税が6倍になる仕組み

なぜ「6倍」というインパクトの大きい数字になるのでしょうか。それは住宅用地に対する固定資産税の特例が関係しています。
住宅が建っている土地(住宅用地)は、本来の課税評価額に対し税負担を大幅に軽減する特例措置が適用されており、建物を取り壊して更地にしたり特例の適用を外されたりすると、この優遇が受けられなくなるため固定資産税額が跳ね上がるのです。
「住宅用地の特例」が外されるとどうなる?
固定資産税には、住宅1戸あたり200㎡以下の住宅用地部分について課税標準を評価額の6分の1に減額する住宅用地特例があります。また、都市計画税も同様に3分の1に減額されます。
この特例のおかげで、一般的な戸建て住宅の土地に係る固定資産税額は大幅に抑えられているのです。例えば評価額が同じ土地でも、上に住宅が建っている場合と更地の場合では課税標準が6倍(200㎡以下部分の場合)も違ってきます。
ところが特定空き家等に指定され勧告を受けると、その土地はもはや住宅用地とは認められなくなります。結果として住宅用地特例が外れ、評価額に対して固定資産税がまるまる課税されることになります(*4)。そのため「6倍」という表現が用いられるほど大幅な税額アップにつながるのです。
厳密には都市計画税も併せて増えるため、トータルではさらに負担増になりますが、固定資産税(年税率1.4%)だけ見ても1/6負担からフル負担になるため税額ベースで最大6倍に相当するわけです。
注意したいのは、「建物が無くなる(または住宅扱いされなくなる)と土地の税金が上がる」という点です。固定資産税・都市計画税は毎年1月1日時点の状況で課税されますので、特例が外れる状態がその時点で確定していれば、同年の課税から増額が適用されます。
通常課税と優遇措置の差額シミュレーション
実際に税額の差がどの程度になるか、具体的な数字で見てみましょう。例えば建物評価額500万円・土地評価額2,000万円・土地面積200㎡以下というモデルケースで試算します。
| 状態 | 建物分 500万円 × 1.4% |
土地分 2,000万円 × 1/6 × 1.4% |
合計固定資産税額 |
|---|---|---|---|
| 住宅用地特例 適用あり |
7万円 | 約4.7万円 | 約11.7万円 |
| 住宅用地特例 適用なし |
7万円 (建物残存時) |
28万円 | 約35万円 |
このケースでは固定資産税額が年間23.3万円も増加し、約3倍(土地分に限れば6倍)に跳ね上がっています。建物を解体して更地にしてしまった場合は建物分の税金がゼロになる一方で土地分は同様に28万円となるため、トータルではさらに負担増となります。
このように優遇の有無で大きな差額が生じるため、空き家の所有者にとって住宅用地特例が適用されなくなることの影響は非常に大きいのです。
いつから6倍になるの?具体的なタイミングとは
結論としては、自治体からの「勧告」を受け、その状態が翌年の課税期日(1月1日)まで改善されなかった場合、翌年度分の固定資産税から税額が上がることになります。
特定空き家に指定されてからの流れ

空き家が特定空き家等に該当する状態だと自治体が判断すると、所有者に対して段階的な措置がとられます。
まずは「助言」や「指導」といった段階で、口頭や文書により改善を促されます。この段階で適切な対応(例:修繕や清掃、危険箇所の是正など)を行えば、固定資産税の優遇措置が直ちに失われることはありません。
しかし、指導に従わずに問題が放置されると、次に「勧告」が発せられます(空き家対策法第14条)。勧告は法的な位置づけがある通知で、ここまで至ると固定資産税等の軽減措置が解除される条件が満たされます。
さらに勧告後も改善がなされない場合、「命令」へと進み、最終的には行政代執行(自治体による強制的な解体等)に踏み切られるケースもあります。命令に違反すると50万円以下の過料(罰金)が科される可能性もあります。
要するに、特定空き家等に認定→指導(任意の改善要請)→勧告(税優遇解除のライン)→命令(強制力のある是正指示)→代執行(自治体による強制措置)という段階を踏む流れです。
固定資産税の増額はこのうち「勧告」を受けた段階で発生することになります。
指定から除外措置撤廃までのスケジュール
特定空き家に指定されてから勧告に至るまでの期間はケースバイケースですが、一般的には以下のようなスケジュール感となります。
近隣通報・自治体調査で危険空き家と判断。
所有者へ通知+助言・指導を実施。
↓
所有者に数ヶ月~状況次第の猶予。
適切な管理・修繕で問題解消すれば終了。
↓
指導に従わず改善なし → 勧告書を交付。
この時点で住宅用地特例が解除。
是正期限を設定される場合も。
↓
勧告後も是正せず期限超過 → 命令発令。
さらに不履行なら自治体が強制撤去(代執行)。
撤去費用は所有者へ費用請求・社会的信用失墜。
以上のように段階を経ますが、勧告に至るまで少なくとも半年~1年程度はかかる場合が多いと考えられます。したがって、「ある日突然知らない間に税金が6倍になる」というよりは、事前に何度も警告や連絡が来た上での措置となるのが通常です。
実際の課税はいつの納税通知書から?
では、実際にどのタイミングの納税通知書から税額が6倍(優遇解除)になるのでしょうか。
ポイントは、固定資産税の課税は毎年1月1日時点の土地・建物の状況に基づいて行われることです。
例えば、ある空き家について前年中に勧告が出され、その後も放置して2026年1月1日を迎えた場合、2026年度(令和8年度)の固定資産税通知書から増額後の税額になります。一方、勧告後でも年内に建物を除却するなどして状況が改善し、年明け時点で住宅用地特例が適用可能な状態に戻っていれば、翌年度の増税は回避できます。
このように、課税切替のタイミングは年単位で訪れます。勧告を受けたら猶予はさほど長くないため、次の課税期日までに何らかの対処を行わないと翌年から大幅増税となる点に注意が必要です。
固定資産税が増える対象になる「特定空き家」とは?
ここまで何度も登場した「特定空き家等」とは、空き家対策法に定義された問題のある空き家のことです。具体的には、放置すれば周囲の生活環境に深刻な影響を及ぼす恐れがあると認められる空き家を指します。この章では特定空き家の定義や基準、そして自治体ごとの指定判断の違いについて解説します。
空き家対策特別措置法に基づく定義
「特定空き家等」は法律上、次のように定義されています。
『そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等』(*5)。
簡単に言えば、倒壊の危険や衛生被害、景観悪化など深刻な問題を引き起こしている空き家が特定空き家に該当します。
ポイントは「将来的にそうなる恐れが高い場合」も含まれることです。実際に倒壊していなくても、著しく老朽化して傾いている建物などは特定空き家に認定され得ます。
また衛生上も、ゴミの不法投棄や害虫発生が酷い空き家は該当する可能性があります。景観については、地域の美観を著しく損ねて周辺住民の生活環境を悪化させるような場合が該当します。
要するに「放置すると危ない・迷惑」なレベルの空き家が特定空き家とみなされるのです。
特定空き家に認定されるか否かは最終的に市町村長の判断になります。自治体は国のガイドラインに沿って判断基準を定めていますが、地域ごとに多少の裁量もあります。
判定基準:倒壊危険・衛生リスク・景観阻害など
特定空き家の判定基準は大きく分けて4つのカテゴリーがあります。
| 項目 | 具体例・リスク |
|---|---|
| 保安上の危険 | ・極度の老朽化で倒壊の恐れ ・屋根や壁の崩落、傾いた立木が周囲に物理的危害 |
| 衛生上の有害性 | ・ゴミ放置で害虫・悪臭が発生 ・ネズミ・蚊などの繁殖源(例:大量ゴミでハエ発生) |
| 景観の阻害 | ・外観損壊や落書きで地域景観を乱す ・景勝地・観光地で景観条例に抵触 |
| その他周辺環境への悪影響 | ・空き家が不審者の侵入拠点に ・越境樹木や雪国で雪崩リスク など多岐 |
以上のいずれかに該当すれば特定空き家に指定され得ます。実際には現地調査チェック項目に沿って総合判断されますが、自治体の公表事例を見ると「屋根瓦が落下しかけている」「壁に大きな穴が開いて動物の死骸や糞尿で悪臭を放っている」「庭木が生い茂り隣家の敷地まで侵入している」などが典型例です。
要は放置が進み「危険」または「迷惑」と周囲から認識される状態が基準になります。
自治体の裁量が大きく、判断が分かれることも
特定空き家の指定は法律の定義がありますが、最終的な認定権限は各市区町村にあります。そのため自治体ごとに運用に差が出ることも事実です。
実際、全国的に見ると特定空き家として把握されている物件は約1.8万件(2020年時点)にとどまりますが、その他管理不全な空き家は推計24万戸以上存在するとされます(*6)。このギャップは、自治体によって指定のハードルや積極性が異なることを示唆しています。
都市部の自治体では空き家対策に熱心で、老朽危険な空き家は次々と特定空き家に指定し措置をとっている例があります。
一方、財政や人員が限られる小規模自治体では、問題が深刻でも所有者への配慮から指定を慎重に判断しているケースも指摘されています。例えば「近所から苦情が出ても、所有者不明や高齢者世帯で対応が難しい場合はすぐには特定空き家にせず説得に時間をかける」といった運用がなされる場合もあります。
いずれにせよ、自治体ごとに対応温度差があるとはいえ、法改正後は管理不全空き家についても指導が入るようになったため、どの地域でも空き家放置への目は厳しくなっています。「うちの地域は大丈夫」と油断せず、基準に触れる恐れがないか自己点検しておくことが大切です。
税額が6倍になると実際いくら増える?事例で比較
固定資産税が増額される場合、具体的にどの程度の負担増になるのかは物件の評価額によって様々です。この章では土地評価額の違いによる差や、都市部と地方での負担感の違いを見てみましょう。ケースによっては年間で10万円を超える増税負担が生じることもあります。
土地評価額別:優遇あり vs 優遇なしの差
まずは土地の評価額(課税標準額)ごとに、住宅用地特例の有無で税額がどれほど変わるか比較してみます。固定資産税率1.4%で計算すると次のようになります(200㎡以下部分の場合、都市計画税除く)。
| 評価額 | 優遇あり (1/6×1.4%) |
優遇なし (1.4%) |
差額 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 約1.17万円 | 7万円 | 約5.8万円増(約6倍) |
| 1,000万円 | 約2.33万円 | 14万円 | 約11.7万円増(約6倍) |
| 3,000万円 | 約7万円 | 42万円 | 約35万円増(約6倍) |
ご覧のように、評価額に比例して増税額も大きくなります。数百万円台の土地でも数万円、数千万円台では数十万円単位で税額が跳ね上がる計算です。特に評価額の高い都市部の土地では、6倍課税になると負担増も非常に大きくなります。
なお、土地面積が200㎡を超える部分についてはもともと特例で1/3課税となっていたため、優遇が外れるとその部分は3倍程度の増額になります(都市計画税は2/3→通常で1.5倍程度)。
しかし小規模住宅用地(200㎡以下)の部分が占める税額が大きいケースが多いため、全体として「約5〜6倍」の増税となるのが一般的です。
都市部と地方での負担感の違い
都市部の高額な土地ほど、特例解除による税額アップのインパクトは大きくなります。
例えば都心部で評価額が1億円を超えるような土地の場合、固定資産税・都市計画税の合計で年間数十万円〜百万円単位の増額になる可能性があります。一方、地方の低評価の土地であれば、増額幅も相対的に小さくなります。
具体例を挙げると、都内郊外で評価額6,000万円・土地200㎡の空き家が特定空き家になったケースでは、固定資産税は約42万円増え年間約84万円に跳ね上がります。対して地方で評価額300万円・土地150㎡の空き家の場合、固定資産税は約1.4万円増えて年間約1.7万円程度になります。
絶対額で見ると都市部の方が負担増が大きいですが、地方の所有者にとっても「それまで数千円~1万円台だった税金が倍以上になる」ことは痛手でしょう。
また、都市部では空き家が密集した住宅地に点在すると景観や防災面で地域への悪影響が大きく、行政も積極的に対策に乗り出す傾向があります。結果として都市部の空き家所有者の方が早期に特例解除措置を受けやすい面もあるかもしれません。
地方では空き家率自体は高いものの周囲に与える影響が相対的に軽微なケースも多く、発見や対応が遅れがちな側面があります。
年間10万円以上の差が出るケースも
前述のように、評価額1,000万円規模の土地でも年間約12万円程度の増税になる計算です。
実際に特定空き家の勧告を受けた事例では、「優遇あり11.7万円→優遇なし35万円」で約23万円の増額となったケースも報告されています。これは建物評価額500万円・土地評価額2,000万円のケースでしたが、築年数が古く建物評価額が低い空き家ほど土地の税負担割合が高いため、空き家の固定資産税増額分の大半は土地分によるものとなります。
年間10万円を超える増税は家計に与える影響も無視できません。固定資産税は毎年必ずかかるコストですから、5年放置すれば50万円、10年で100万円以上の追加負担にもなり得ます。「更地にしても税金が上がるだけ」といった理由で解体をためらう所有者が多いのも、この負担増の大きさが背景にあります。
以上のように、税額6倍(特例解除)がもたらす経済的インパクトは物件次第で非常に大きくなり得ます。少なくとも数万円、多ければ数十万円規模のコスト増となるため、空き家所有者にとって看過できない問題です。
この負担を回避・軽減するために、次章以降で紹介する対策に早めに取り組むことが重要です。
加えて、建物の簡易点検も重要です。屋根瓦のズレや外壁のひび割れ、雨漏り跡など異常がないか確認し、問題があれば早めに補修します。特に空き家期間が長引く場合は、台風や大雪の後などにも見回りをして被害がないかチェックすると安心です。
これら最低限の維持管理を行うだけでも、建物の劣化スピードは大きく緩和されますし、周囲への悪影響も防げます。「空き家には適切な管理が不可欠」であることは国もガイドラインで強調しています(*7)。
忙しい中でも年に一度は時間を作り、我が家の空き家の健康診断とお掃除をしてあげましょう。
管理実態を記録・写真で残しておく
空き家の管理を行う際には、日時や内容を記録しておくことをお勧めします。できれば写真も撮影し、どのような状態でどんな手入れをしたか証拠を残しましょう。
これは万一近隣から苦情が出たり、行政から調査が入ったりした際に「きちんと管理している」という証明になるためです。
例えば草刈りを行ったら作業前後の庭の写真を残し、日付と共に保存します。建物点検をしたら問題箇所(ひび割れ等)の写真を撮り、補修したらその写真も残します。こうした管理記録は将来トラブル防止に役立ちます。
特に離れた場所に空き家を所有している場合、現地に行ける頻度が限られるため一回ごとの作業内容を詳細にメモしておくと良いでしょう。
自治体によっては、空き家所有者が自ら管理計画や点検結果を報告できる制度を設けているところもあります。また、第三者から空き家に関する通報があった場合でも、所有者側で管理の実績を示せれば対応がスムーズになります。
「管理していない」と見なされないための自衛策として、記録の蓄積は有効です。
管理代行・サブスクサービスの活用も
遠方に住んでいたり高齢であったりして自分で管理に行けない場合は、空き家管理サービスの利用も検討しましょう。
近年、民間業者やNPOが提供する空き家の見回り・清掃代行サービスが各地で充実してきています。月1回や隔月など定期巡回してくれるプランもあり、料金は頻度にもよりますが月額数千円から利用できるものが一般的です。
管理代行業者に依頼すれば、草刈りやポストの郵便物回収、簡易清掃、雨漏り点検などをプロが代行してくれます。報告書や写真を送ってくれるサービスもあり、自分は現地に行かなくても維持管理状況を把握できます。
特に相続で遠方の空き家を引き継いだケースなどでは、交通費や時間を考えても専門業者に任せた方が結果的に安上がりなこともあります。
自治体によっては空き家管理サービスの利用料補助制度を設けているところもありますし、地域包括支援の一環でボランティア団体が見守りを兼ねて草刈りを手伝ってくれる仕組みがある場合もあります。
「自分でできないから仕方ない」と放置せず、使えるものは使って管理を続けることが肝心です。それがひいては特定空き家への指定リスクを減らし、税負担増を防ぐことにつながります。
空き家所有者が知っておきたい制度・支援策
空き家問題に対応するため、国や自治体は様々な支援制度を用意しています。うまく活用すれば、解体費用の負担軽減や税金の優遇を受けられるかもしれません。ここでは空き家所有者なら知っておきたい代表的な制度を紹介します。
空き家解体補助金・管理補助制度
多くの自治体では、老朽化した空き家を解体撤去する際に補助金を交付する制度があります。
自治体によって条件や金額は様々ですが、一般的には「特定空き家等に該当する恐れのある老朽住宅を所有者が除却する場合、工事費用の一部(例えば5分の1から2分の1、上限50~100万円程度)を補助する」という内容です。
所得制限や空き家の築年・構造要件などが設けられることもありますが、該当すればかなりの助けになります。
実際、2020年の全国調査では全体の約48%の市区町村が空き家解体補助制度を実施していたとの報告があります。特に人口規模の大きい都市部自治体ほど導入率が高く、政令市などでは8割近くが制度を有していたそうです。この背景には、危険な空き家の除却が急務となっている都市部事情があります。
また、一部自治体では空き家の管理費用を補助する制度もあります。例えば草刈りや簡易補修にかかった費用の一部を助成したり、NPO等が行う空き家見回りサービスに対して補助金を出したりするケースです。数は多くありませんが、高齢の所有者向けにボランティア派遣を行う自治体もあります。
固定資産税の減免措置(自治体による)
前述の通り、更地になると固定資産税が上がってしまう問題がありますが、近年はそれを緩和する独自措置をとる自治体も現れています。例えば、空き家を解体後の土地の固定資産税を一定期間減免する条例を制定するケースです。
具体例として、徳島県鳴門市では老朽空き家を取り壊した土地について、最初の5年間は解体前と同じ税額に据え置き、以降5年間かけて通常税額に戻すという減免制度を実施しています(10年間の段階的減免)(*8)。
長崎市でも、特定空き家に指定され特例が外れた空き家を除却した場合、増額となった土地税を3年間にわたり減免する措置を講じています(*10)。
このような措置はまだ少数派ですが、増え続ける空き家に対応するため「アメとムチ」のアプローチとして注目されています。すなわち、放置すれば税優遇を外して負担増にする一方、除却すれば一定の税負担を軽減して除却を促すという考え方です。実際、こうした減免制度がある自治体では、所有者が空き家を早めに処分する動機付けになっているとの報告もあります。
空き家を更地にすることを検討している場合、お住まいの自治体に減税制度がないか問い合わせてみましょう。現在は無い場合も、自治体側でも空き家除却後の利活用を進めるため、今後こうした税制上の措置が広がる可能性があります。
相続登記の義務化との関連性
最後に、2024年4月から施行された相続登記の義務化について触れておきます。空き家問題と密接に関係する制度変更です。
従来、不動産を相続しても登記名義を変更することは義務ではなく、放置された結果所有者不明の空き家や土地が全国に多数生じていました。この状態では行政が空き家対策をしようにも所有者に連絡がつかず支障が出るため、大きな社会問題となっていました。
義務化後は、不動産を相続した人は相続開始および所有権取得を知った日から3年以内に登記申請を行うことが法律で義務付けられました。正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります(*9)。
この新制度により、将来的には相続登記未了の空き家が減少し、所有者不明ゆえに放置されるケースの抑制が期待されています。
空き家所有者にとって重要なのは、自身が相続で得た不動産について速やかに登記を済ませることです。相続登記を怠ると、いざ売却や解体補助金申請をしようとしても手続きが進まないばかりか、今回の義務化でペナルティ対象にもなり得ます。
また、将来子や孫に空き家を引き継ぐ際も登記が明確であれば円滑ですし、行政としても所有者が判明していれば連絡・支援がしやすくなります。
さらに関連して2023年には「相続土地国庫帰属制度」も始まりました。これは相続した土地を手放したい場合に一定の要件下で国に帰属(引き取ってもらう)できる制度です。
空き家付き土地も対象になり得ますが、建物は除却する必要がある等ハードルは高めです。ただ、将来的に管理が困難な土地を早めに整理する選択肢にもなりますので、知っておいて損はありません。
以上のように、相続登記義務化など関連制度が動き始めています。空き家問題は所有者個人だけでは解決が難しいため、法律や制度の後押しを受けつつ適切に対処していくことが求められます。
よくある質問(FAQ)

Q1. 特定空き家に指定されたらすぐに6倍?
いいえ、すぐには6倍にはなりません。
特定空き家に認定された時点では直ちに税優遇が外れるわけではなく、まず自治体から助言・指導が行われます。その後も改善されず勧告を受けた段階で初めて住宅用地特例が外れ、翌年度の固定資産税から増額される流れです。
したがって特定空き家に指定=即増税ではなく、勧告を受けるかどうかが一つの分かれ目となります。なお、管理不全空き家に指定された場合も同様で、指導に従わず勧告に至れば翌年度から増税となります。
Q2. 所有者が高齢でも責任は免れない?
残念ながら免れません。 空き家の所有者が高齢であっても、適切に管理する責任からは逃れられません。
法律上、固定資産税の納税義務者は所有者であり、空き家対策法でも所有者等に適正管理が求められています。高齢で管理が難しい場合は、前述したように代理の管理サービスや親族の協力、自治体のサポート制度を活用するしかありません。
自治体によっては高齢者世帯向けに民生委員などが見回りを支援してくれるケースもありますが、だからといって特定空き家の指定が猶予されたり税金が免除されたりすることは基本的にありません。
どうしても管理できない場合は、思い切って売却や解体といった根本的な対策を検討すべきでしょう。
Q3. 更地にすれば逆に課税額が上がるって本当?
はい、本当です。 前述の通り、家屋を解体して更地にすると住宅用地特例が使えなくなるため、土地の固定資産税・都市計画税が解体前より高くなります。
ただし建物が無くなることで建物にかかっていた固定資産税・都市計画税はゼロになるので、その分は差し引かれると案内されています(*3)。
一般的には建物税より土地税の方が額が大きいため、多くのケースで更地にした方が税額は上がる結果になります。
まとめ|『知らないうちに6倍』を防ぐために今できること
空き家の固定資産税6倍問題は、「特定空き家に指定され勧告を受ける」という最悪の状況に至らなければ回避できます。そのために今できることは大きく二つです。
一つは、空き家を適切に管理し続けること。定期的な換気・清掃・点検を怠らず、周囲に迷惑をかけない状態を維持しましょう。管理が難しい場合は専門サービスの利用も検討し、「管理されている空き家」として行政に認識してもらえるよう努めることが大切です。
もう一つは、空き家の処遇を早めに決断すること。放置期間が長引くほど建物は傷み、問題化しやすくなります。活用するにせよ売却・解体するにせよ、先延ばしせず計画を立てましょう。特に相続で取得した空き家は相続登記を速やかに行い、利活用や処分の準備を進めるべきです。
国や自治体の制度も活用し、所有者自身が主体的に空き家と向き合うことが求められます。知らないうちに特定空き家にされていた…という事態を避けるため、定期的な情報収集も欠かせません。空き家は適切に管理・活用すれば地域の資源にもなり得ます。『負動産』にしないための第一歩として、できることから対策を講じていきましょう。
出典元
*1 総務省統計局:「令和5年住宅・土地統計調査」
*2 国土交通省:「空家法」と「2023改正空家法」
*3 空家・空地管理センター:「空き家対策特別措置法により、国定資産税が6倍になるって本当ですか?」
*4 大阪府八尾市:「税金関連よくある質問」
*5 国土交通省:「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施 を図るために必要な指針(ガイドライン) 」
*6 総務省:「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」
*7 国土交通省:「空き家には適切な管理が不可欠です。」
*8 徳島県鳴門市: 「老朽空き家を取り壊した場合の土地固定資産税の減免について」
*9 国土交通省:「空き家所有者情報ガイドライン」
*10 長崎市: 「長崎市老朽危険空家等を除却した土地に係る納税義務者の固定資産税の減免に関する条例」