空き家でも固定資産税はかかる?基礎知識を確認

固定資産税とは?誰に課税されるのか
固定資産税とは、毎年1月1日時点で土地や家屋などの固定資産を所有している人に課される税金です。税率は標準で評価額の1.4%(都市計画税は0.3%)に設定され、各自治体により課税されます。
つまり、たとえ利用していない空き家であっても、所有者である以上は毎年の固定資産税を支払う義務があります(*1)。
この税金は土地と建物それぞれに課税され、納税通知書は所有者に対して年4回などの頻度で送付されます。空き家を相続した場合も相続登記などで所有者となった人が納税義務者となり、引き継いで支払う必要があります。
空き家でも税額が変わらない理由
空き家になったからといって、ただちに固定資産税が軽減されるわけではありません。
なぜなら、土地については「住宅用地の特例」という制度があり、人が住む住宅が建っている土地は税負担が大幅に軽減されますが、空き家であっても構造上住宅と認められ他の用途に使われていない限り、その土地は引き続き住宅用地として扱われ特例が適用されるからです。
要するに、空き家であっても建物が住宅として存在している限りは、更地扱いにならないため税負担が原則据え置かれます。また建物部分の固定資産税については、居住の有無にかかわらず評価額に対して課税されます。
以上のように、空き家だからといって自動で税額が下がることはなく、むしろ適切に管理しないと特例が外れて税金が増えるリスクがある点に注意が必要です(*2)。
空き家の固定資産税が増えるケースもある?

特定空き家に指定されると税額が最大6倍に
適切に管理されず放置された空き家は、自治体から「特定空家等」に認定されることがあります。
特定空き家とは、倒壊や衛生面で危険・有害となっているなど周囲に悪影響を及ぼす状態の空き家です。行政から措置の勧告を受けた特定空き家になると、これまで受けていた住宅用地特例(固定資産税の土地課税標準を最大1/6に減額)の対象外となり、土地の固定資産税が翌年度から一気に増額されます。
具体的には、住宅用地特例が外れることで土地部分の税額が従来の最大6倍程度に跳ね上がるケースがあります。これは空き家対策特別措置法に基づき、問題のある空き家に対して税負担を重くすることで放置を抑制する措置です。
実際、2023年12月13日に施行された改正空家対策特別措置法により、新たに『管理不足空家等』というカテゴリーが追加され、放置すれば特定空き家になる恐れがある状態でも勧告により特例が解除され増税される仕組みが導入されました。このように、空き家は放置すると固定資産税・都市計画税が急増し得るため注意が必要です(*3)。
「住宅用地の特例」が外れる条件とは
空き家の敷地に適用されている住宅用地特例が外れるのは、「特定空き家等」として行政から勧告を受けた場合が代表的です。
さらに、住宅としての機能を失った場合や今後も人が住む見込みがないと認められる場合も特例除外の条件となります(*4)。具体的には、総務省の通知では以下のような客観条件に該当すると住宅用地と見なされないとされています。
| 補助対象になり得る空き家の判断例 |
|---|
| 建物が老朽化し「構造上もはや住宅と認められない」状態にある場合 |
| もう人が住む見込みがなく「解体が予定されている」場合 |
| 適切な管理が行われず「今後も人が居住する見込みがない」と認められる場合 |
以上のいずれかに該当すると、その空き家の土地は住宅用地特例の適用対象から除外されます。
例えば所有者自ら居住再開する意思もなく荒廃が進んでいる空き家は、この条件に当てはまりやすく、やがて特例が解除される恐れがあります。特例が外れれば固定資産税は翌年度以降大幅に増えるため、空き家所有者は該当しないよう管理状態に留意することが重要です。
固定資産税が減免される可能性のある空き家とは?

相続後の一定期間に限って減免されるケース
空き家の固定資産税が軽減または据え置かれるケースとして、相続直後の一定期間という状況が挙げられます。
被相続人が居住していた家屋を相続した場合、すぐに売却や解体の方針が決まらないことも多いでしょう。しかし適切に管理していれば、空き家になっても当面は住宅用地特例による軽減を継続できます。
実際、空き家を相続してもきちんと管理し、自治体の軽減措置を活用すれば、一定期間は固定資産税の増額を抑えながら所有し続けられると指摘されています。
さらに、国の制度として「相続空き家3,000万円特別控除」があり、相続した空き家を早期に処分する場合に譲渡所得から最大3,000万円(※条件により減額あり)まで控除できます。
2024年1月1日以降の売却からは、買主が譲渡年の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行った場合も適用対象となりました。また、相続人が3人以上の場合は1人あたりの控除額が2,000万円に減額される一方、適用期限は2027年(令和9年)12月31日まで延長されています。
なお、この特例を受けられる住宅には、昭和56年以前築などの要件があります(*5)。
いずれにせよ、相続後しばらくは税負担を軽減できる措置が存在するため、「空き家を相続してすぐ税金が跳ね上がるのでは」と心配な方も、早めに対策を講じれば一定期間は現状維持または負担軽減が可能です。
解体・売却予定地として減免されるパターン
老朽化した空き家を「近く解体する」「売却予定である」といった場合、自治体によっては固定資産税の減免措置を受けられる場合があります。特に増加する空き家問題に対処するため、空き家を解体した後の土地に対して一定期間、税金を軽減する制度を設ける市町村が増えています。
この減免制度では、対象となる老朽空き家を事前に自治体が確認・認定し、所有者が期限内に除去(解体)した場合、翌年度以降の土地の固定資産税・都市計画税について、本来の税額と住宅用地特例があったとみなした税額との差額が減免されます(*6)。
例えば自治体によって2年間から最長で10年間など、減免される期間は異なりますが、その間は更地であっても税負担が大幅に増えないよう配慮されます。
解体や売却の計画が明確にある空き家の場合、こうした制度を利用できれば大きな節税になります。
地域の条例による独自減免制度の活用
国の制度とは別に、各自治体が条例に基づき独自の固定資産税減免制度を設けているケースもあります。
地方税法第367条の規定により、市町村長は特別の事情がある場合に固定資産税を減免できると定められており、この権限を活かして空き家対策に取り組む自治体が増えています。
例えば老朽危険空き家の除却を促進するための条例減免では、「一定の空き家を除却した場合に、その跡地の固定資産税を○年間減免する」ことが定められています。実際に自治体の事例調査によれば、空き家除却後の税負担を軽減する措置を講じている市町村は全国で多数存在し、その内容も様々です。
中には「空き家バンク」に登録すると一定の減税措置が受けられる例や、低所得の高齢者が所有する空き家に対して条例で減免するケースも報告されています。
地域独自の減免制度は自治体の条例集やWebサイトで公開されている場合もありますので、自分の空き家所在地域にそのような制度がないかチェックし、活用できるものは積極的に申請しましょう(*7)。
国・自治体の主な減免制度の種類

相続人が複数いる空き家の場合の特例措置
相続により複数の相続人で共有している空き家については、国の税制上の特例が存在します。
代表的なのが前述した被相続人居住用家屋の譲渡所得に係る3,000万円特別控除です。この特例では、相続で取得した空き家を一定期間内(相続から3年後の年末まで)に売却すれば、譲渡益から最大3,000万円を控除できますが、共有名義の場合でも相続人それぞれに適用される点が特徴です。
例えば2人で共有相続した空き家なら各人がそれぞれ最高3,000万円まで控除可能で、合計6,000万円まで非課税となり得ます(※令和6年以降は相続人3人以上の場合に一人あたり2,000万円に減額)。
このように複数相続人がいるケースでも、売却による税負担を大きく減らす国の特例措置が用意されています。
一方、固定資産税の面では、相続人が複数いる空き家でも共有者全員が連帯して納税義務を負います。各自の持分割合で負担するのが原則ですが、代表者を決めて納税するケースもあります。
いずれにせよ相続人間で管理責任や納税分担を整理しておくことが重要です。相続登記の義務化も始まったため、共有のまま放置せず早めに手続きを済ませておくと安心です。
空き家解体後の土地に対する軽減措置
国の制度にはないものの、前述のように自治体レベルで広がっているのが、空き家解体後の土地の固定資産税減免です。多くの自治体では条例や要綱で、老朽空き家を除去した所有者に対し、一定期間その更地の固定資産税を減免する措置を設けています。
典型的な制度内容としては、「特定空家等(またはそれに準ずる老朽空き家)に認定され、なお住宅用地特例の恩恵を受けていた空き家を解体除去した場合、翌年度以降○年間、住宅用地特例が引き続き適用されるものとみなして税額を減免する」というものです。
減免率は住宅用地特例相当(最大で土地課税標準1/6)であり、期間終了後や途中で土地を売却した場合には本来の税額に戻ります。
また、近年は「管理不足空家」というカテゴリーも導入されつつあります。これは「放置すれば特定空家になる恐れのある空き家」を指し、自治体による指導や優先的な対応の対象となります。管理不足空家に該当し、改善指導に従わない場合は、住宅用地特例が解除される可能性があります。
このような減免措置は空き家除去への強いインセンティブとなるため、空き家を解体して土地を活用・売却したいと考えている所有者は、必ず自治体の制度を確認することが重要です。制度を利用するには事前の現地調査や申請が必要で、解体前に相談するのが鉄則です(*8)。
地方税法第367条に基づく条例減免制度
地方税法第367条は、市町村長が「天災その他特別の事情」がある場合に特定の納税者に固定資産税の減免を行えると定めています。空き家問題はまさに「特別の事情」と言えるため、この条項を根拠に各自治体が条例で減免制度を設けています。
例えば空き家解体後の減免もこの条項に基づくもので、多くの自治体が老朽危険空き家の除去促進を目的として条例を制定しています。
そのほか、市区町村独自の判断で「空き家バンク登録住宅の固定資産税を○年間○割減免」といった活用促進策や、低所得の高齢者世帯が所有する長期空き家の税を減免するといった条例もあり、まさに地域の実情に応じた多様な制度が存在します。
国土交通省の調査によれば、こうした条例減免措置を講じている自治体は少なくなく、参考事例として情報提供も行われています。自分の自治体に該当の制度があるかどうかは、市役所税務課や自治体公式サイトの「税の減免」情報で確認可能です。
条例減免は自治体ごとに内容や期間が異なるため要件をよく読み、該当する場合は積極的に申請を検討しましょう(*9)。
減免申請の流れ|いつ・どこで・どうやって手続きする?

市区町村の税務課で申請するのが基本
空き家の固定資産税減免を受けたい場合、手続きは原則としてその空き家が所在する市区町村の税務担当課で行います。具体的な部署名は自治体によりますが、「資産税課」「市民税課 固定資産税係」などが窓口になります。
市区町村の資産税課など税務担当窓口へ電話・来庁し、制度の有無や対象要件を確認。
↓
担当者による現地確認で減免対象になるかを調査。
先に解体すると対象外になるため必ず解体前に相談。
↓
認定後に工事契約・着工。
工事写真・領収書を確保しておく。
↓
解体後、所定の申請書・領収書・写真等を添付し自治体へ交付申請。
↓
審査完了後、減免決定通知書が発行。
翌年度以降の固定資産税が減免扱いに。
減免が認められる場合、解体後に正式な申請書類を提出し、審査のうえ減免決定通知書が発行される流れです。いずれにせよ手続きは地元自治体で完結しますので、迷ったら役所窓口に相談するのが第一歩です。
必要書類(固定資産税納税通知書・登記簿など)
減免申請時には、所定の申請書に加えていくつかの書類の提出が必要です。
| 提出書類 | 概要・用途 |
|---|---|
| 固定資産税の納税通知書(課税明細書) | 対象となる空き家・土地を特定し、課税状況を確認するため |
| 物件の登記事項証明書(登記簿謄本) | 所在・地番・所有者情報を確認し、対象物件を証明 |
| 申請者の身分証明書 | 所有者本人であることを確認(運転免許証・マイナンバーカード等) |
| 相続関係を示す書類(遺産分割協議書・戸籍など) | 申請者が相続人の場合、権利者であることを証明 |
| 跡地確認通知書 等(解体実施証明) | 空き家を除却済みであることを示す書面(住宅政策担当課が発行) |
例えば福岡県久留米市では、老朽空き家を除却後に資産税課へ減免申請書と住宅政策課発行の跡地確認通知書を提出する運用になっています(*10)。
そのほか自治体により、解体工事の写真や工事業者の発行する工事完了証明書の添付を求めるケースもあります。申請書類の様式は自治体サイトからダウンロードできることが多いので、事前によく確認し不備なく準備しましょう。
申請のタイミングと有効期限に注意
減免申請はタイミングを逃さないことが肝心です。多くの自治体では、空き家を解体した場合翌年の固定資産税から減免を適用しますが、そのためには「解体した翌年の○月○日まで」に申請といった期限が定められています。
典型的には翌年の1月末日までとしている自治体が多く、例えば和歌山県紀美野町では空家除却の翌年1月末までに申請書と必要書類を提出するよう規定しています。この期限を過ぎるとその年度の減免が受けられなくなる恐れがありますので注意しましょう。
また、一度減免が決定しても有効期限(減免期間)が来れば自動で終了しますし、期間が複数年にわたる場合は各年度ごとに継続申請が必要な場合もあります。
実際、減免期間10年の自治体では毎年状況報告や更新手続きが求められることがありますし、減免期間中に売却や新築など状況変化があれば途中打ち切りとなります。
したがって、申請のタイミングはもちろん、減免が認められた後も定期的な手続きを忘れないよう気をつけることが大切です。
減免申請が通りやすくなるポイント

解体や売却の計画が明確であること
自治体に減免申請をする際、空き家の今後の活用計画がはっきりしていると有利です。
減免制度の趣旨は空き家の放置防止や除却・利活用の促進にあります。そのため「〇年〇月までに解体します」「売却先を探しています」といった具体的な計画がある方が、自治体も減免を認めやすくなります。
実際、多くの自治体の減免要件では「勧告前の特定空家であること」「一定期間内に除却すること」などが掲げられており、計画の有無がカギとなります。申請時には解体工事の見積書や不動産業者との媒介契約書など、計画を裏付ける書類を添付すると説得力が増すでしょう。
反対に計画が曖昧なままだと減免してもらえないばかりか、放置とみなされる可能性があります。自治体としても「近い将来に撤去される見込みがあるなら減免で支援しよう」と判断しやすいため、事前相談の段階から具体的な方針を示すようにしましょう。
管理状態・防災対策を実施しているか
空き家の管理状況も、減免の可否や指定回避の重要なポイントです。
適切な管理がされている空き家は、行政から見てもリスクが低く、特定空家の認定対象になりにくいだけでなく、減免制度の対象としてもふさわしいと判断されやすくなります。国土交通省も「空き家には適切な管理が不可欠」として、定期的な清掃・草刈りや点検を行うよう呼びかけています。
実際、管理不全空家と見なされる条件として「必要な管理を怠っていること」が挙げられており、裏を返せば管理が行き届いていれば特例解除(増税)や勧告のリスクを減らせるということです。
減免申請時にも、例えば「○ヶ月に1度帰省して家屋を清掃・通風している」「倒壊の恐れがある箇所に補修を施した」など、管理努力の状況を伝えると好印象です。自治体によっては申請書に現在の管理状況を書く欄がある場合もあります。
なお、管理が困難な場合は空き家管理サービスを利用する方法もあります。専門業者に見回りや清掃を委託している事実があれば、客観的に管理実態を示せるでしょう。いずれにせよ、「放置ではなく適切に管理している空き家」であることを示すことが、減免を受けるうえで有利に働きます。
相続登記の完了や納税義務者の整理
空き家が発生する背景として相続が関係するケースは少なくありません。
2024年から相続登記(不動産の名義変更)が義務化されたこともあり、早めに相続人へ名義を移しておくことは管理や税申請の面でも重要です。相続登記が未了で故人名義のままだと、行政とのやり取りや申請手続きがスムーズに進まない可能性があります。
自治体によっては減免申請の際に登記事項証明書を提出させるため、名義人が現所有者でない場合説明が必要になるでしょう。
実際、国や自治体は「相続を知った日から3年以内に登記を」と周知しており、相続登記を怠ると過料のリスクもあるため注意喚起しています。
また、相続人が複数いる場合は代表者を決めておくことも大切です。誰が空き家の管理責任者・納税義務者になるのかを整理し、可能なら持分を集約しておくと良いでしょう。
自治体側も、所有者関係が明確で責任の所在がはっきりしている方が減免を認めやすい傾向にあります。相続発生後は登記と役所への届出を速やかに行い、必要なら専門家のサポートも受けつつ所有関係をクリアにしておきましょう。
減免を受けられないケースとは?

所有者不明・管理実態がない空き家
減免制度を利用するには、「誰が所有し管理しているか」が明確であることが大前提です。
所有者が死亡し相続人も放置したままの空き家や、相続人が多数いて権利関係が複雑な空き家では、申請主体が定まらず減免を受けることができません。所有者不明の空き家は管理責任者も不在のため、特定空き家に指定されても改善されず放置が深刻化するケースが多いです。
行政としても、誰とも連絡が取れない物件には減免どころか通常の税金徴収すら困難です。このような空き家は税負担が軽減されないどころか、固定資産税の滞納が累積し最終的には行政代執行や強制徴収の対象になる可能性もあります。
実際、「相続人同士で方針が決まらず放置された家は特定空き家となりやすい」ことが指摘されています。減免を受けるには、きちんと所有者を確定させ管理に乗り出すことが不可欠です。所有者不明・管理放棄状態の空き家は減免制度の恩恵を受けられず、むしろペナルティ的に税負担が増す方向へ向かう点に注意しましょう。
条件を満たしていない老朽空き家
空き家の減免制度は万能ではなく、対象となる物件の要件が細かく定められています。
例えば「1981年以前に建築された老朽住宅であること」や「特定空家に準ずる状態であること」「自治体から事前調査で減免対象と認定されること」等の条件です。築年数が浅かったり、建物の状態が比較的良好で倒壊などの危険が少ない空き家は、そもそも減免の必要性が低いと判断され対象外になることがあります。
また「今後人が住む可能性がある空き家」も住宅用地特例が継続するため、減免ではなく現行制度の範囲で対処すべきとされるでしょう。要するに、減免制度は本当に危険・迷惑なレベルの老朽空き家に焦点を当てているため、それに該当しない空き家は減免の土俵に上がらないのです。
自治体の基準表などを見ると、「昭和56年5月以前着工」「長期間使用されていない」「周囲に悪影響を及ぼす恐れがある」等が典型的な要件になっています。
自分の空き家がこれらに当てはまらない場合、残念ながら減免制度の対象にはならない可能性が高いです。その場合は賃貸活用や売却など他の方法で税負担軽減を図る必要があるでしょう。
既に特定空き家に指定されている物件
前述のように、一旦「特定空家等」に指定され行政から勧告まで出てしまった物件については、固定資産税の住宅用地特例がすでに解除されており、軽減どころか増税措置の段階に入っています。このような物件は減免制度の対象外です。
なぜなら減免制度は「勧告前」の空き家に対して自主的な除却を促すインセンティブとして設けられるのが通常であり、勧告後の特定空き家には適用されないからです。
例えば条例の表現でも「特定空家等(※勧告を受けていないもの)」と明記されているケースが多く、勧告済み=アウトとされています。既に勧告を受けてしまった空き家は、所有者としては減免による猶予を得る余地はなく、速やかに除却等の義務を果たさなければなりません。行政も悪質な放置と見なして強制執行や行政代執行の準備に入る段階です。
したがって「特定空き家指定され税金が6倍になってから減免申請しよう」という考えは通用しないと心得ましょう。減免を検討するなら、そうなる前の段階で動く必要があります。一度指定されてしまったら税の優遇は一切無くなる(増える一方)という点で、まさに最後通告だと言えます(*1)。
よくある誤解と注意点|損をしないために
自動的に減額されるわけではない
「空き家になったら固定資産税が安くなるのでは?」という誤解があります。しかし前述の通り、空き家だからといって自動的に税額が減ることはありません。
減免措置がある場合でも所有者が自ら要件を満たし、自治体に申請して初めて適用されるものです。申請しなければ通常どおりの税額を請求されますし、そもそも減免制度自体がない自治体もあります。
特に、住宅用地特例による軽減は空き家でも機械的に適用されていますが、これはあくまで法律上の措置であり、空き家だから追加で税金がまけられているわけではありません。むしろ管理不全で特例適用外となれば自動的に増額される方が現実的です。
つまり、固定資産税の負担軽減を図りたいならば、自ら動いて制度を利用することが不可欠なのです。「知らなかった」「放っておいてもそのうち下がると思った」では済まないので、常にアンテナを張り、制度を把握して行動しましょう(*11)。
減免後も定期的な更新・届出が必要
減免が認められて安心してしまう方もいますが、そこで気を抜いてはいけません。多くの減免制度は期限付きであり、継続して恩恵を受けるには毎年または数年ごとに更新手続き(届出や申請)が必要になります。
例えば減免期間2年の自治体なら、1年目の終了時に所定の様式で翌年分の申請を改めて行うことになります。これを怠ると、その次年度から減免が打ち切られてしまうので要注意です。
また、減免期間中に土地を売却したり新たに活用(駐車場や建物新築)した場合、速やかに報告する義務があります。報告なく状況が変われば不正受益と見なされ、遡って減免取消し・追徴ということもありえます。
さらに、減免期間終了後は通常の課税(更地課税)に戻るため、その時の税負担増も見越しておく必要があります。減免期間が長期の場合、年数経過に伴い段階的に軽減率が縮小するケースもあります。
このように、一度認められたからといって放置せず、定期的に自治体からの通知や必要な手続きを確認し、期限内に対応することが大切です(*12)。
解体してもすぐに税額が下がらないケースもある
「空き家を壊せば税金が安くなる」というのは半分正解で半分誤解です。確かに長期的には更地にして活用すれば有効活用による収益や特例終了後の税負担増の回避につながります。しかしタイミングによっては解体直後に税額が下がるどころか上がる場合もあります。
固定資産税は毎年1月1日の状況で課税されますので、例えば1月2日に空き家を解体したとしても、その年の1月1日には家屋が存在していたため当年分の税金は減りません。逆に翌年1月1日時点では更地になっているため住宅用地特例がなくなり、もし自治体の減免措置を受けられなければ翌年度から土地の税額が跳ね上がります。
このように解体の効果が現れるのは翌年度以降となるため、「壊したのに税金がすぐには安くならない」と感じるケースがあるわけです。
さらに、家屋を解体すると建物部分の固定資産税こそゼロになりますが、土地部分は前述の通り特例喪失で大幅増になるため、トータルでは増税になることも珍しくありません。したがって更地売却などで早期に手放さない限り、解体=即減税とは限らない点に注意しましょう。
これを避けるには解体前に減免制度を利用することが重要です。解体してしまった後では自治体も減免のしようがないため、計画段階で相談することが改めて大切です。
よくある質問(FAQ)

Q1 減免対象になる空き家の築年数に制限はある?
固定資産税の減免制度そのものには築年数の明確な全国共通基準はありませんが、実際には古い木造住宅など老朽化した空き家が主な対象となるケースが多いです。
自治体の減免条例では「昭和56年(1981年)5月31日以前に着工された住宅」など築年要件を設けている場合があります。これは旧耐震基準の住宅=老朽空き家とみなす目安です。
また、国の相続空き家譲渡の特例(3,000万円控除)でも昭和56年以前築という条件があります。したがって、築浅の空き家は減免よりも他の利活用策を検討すべきでしょう。
一方で、築年数が古ければ自動で減免されるわけではなく、危険度や管理状況も考慮されます。「目安として築40年以上の老朽空き家が減免対象になりやすいが、自治体次第」であり、心配な場合は自治体に直接確認するのが確実です。
Q2 賃貸中や一部使用中でも減免は可能?
基本的に賃貸や居住中の住宅は空き家ではないため、空き家向けの減免制度の対象にはなりません。
固定資産税の住宅用地特例は賃貸住宅や別荘であっても適用されますが、それ以上の追加減免措置はありません。むしろ、相続空き家の譲渡特例などでは「相続から譲渡まで事業や貸付けに使っていないこと」が条件となっており、一部でも人の居住や賃貸利用がある場合は特例対象外となります。
同様に自治体の減免制度も、「長期間誰も使用していない空き家」が前提ですので、一部でも人が住んでいたり貸している状態では適用されません。例えば親族が時折滞在している家や、空き家の一部を倉庫代わりに使っている場合も、厳密には空き家の定義から外れる可能性があります。
減免を受けるには完全に空き家であることが求められるため、賃貸中・使用中であれば減免ではなく通常の住宅用地特例(または一般の土地課税)で課税されるとお考えください。
要件に反して減免を受けると不適用を指摘される恐れもありますので、現に使用している場合は制度の対象外となる点に注意が必要です。
Q3 相続放棄した空き家の固定資産税はどうなる?
相続放棄をした場合、原則としてその不動産に関する固定資産税を支払う義務は相続人から消滅します。
相続放棄すると法律上は初めから相続人でなかったことになるため、放棄者がその空き家の納税通知書を受け取っても支払い義務はありません。実務的には、市町村は当初相続人を納税者とみなして通知書を送ってくることがありますが、放棄済みである旨を伝えれば取り下げられます。
ただし注意点として、被相続人が亡くなった年の1月1日時点では被相続人が納税義務者であったため、その年の税金は故人の相続財産(遺産)から支払われます。
相続人全員が放棄し誰もいなくなった場合、その空き家は「所有者不明」の状態になり、最終的には国庫に帰属する流れとなります。その間の固定資産税は基本的に未納のまま滞留し、徴収も困難となります。
自治体によっては相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立て、管理人がいる間はその人に税金を請求することもありますが、いずれにせよ放棄した人が払う必要はありません。
相続放棄を選択する場合、その不動産の管理責任や税負担からは解放されますが、空き家が放置状態になると周囲に影響を及ぼす可能性もあるため、専門家に相談しつつ適切な処理(例えば自治体への引き取り交渉など)を検討すると良いでしょう。
まとめ|空き家の固定資産税減免は「正確な理解と早めの申請」が鍵
空き家の固定資産税は、何もしなければ基本的に通常どおり課税され、むしろ管理不全による特例解除で増税リスクすらあります。
一方で、条件に合致すれば各種の減免措置で負担を軽減できる可能性があります。
本記事で解説したように、国の特例(譲渡所得控除)から自治体独自の減免制度まで、多岐にわたる制度が存在します。大切なのは、それらの正確な条件を理解し、適切なタイミングで行動することです。
空き家を相続したら早めに登記や管理方針を決め、自治体の窓口に相談してみましょう。老朽空き家を抱えているなら放置せず、除却や活用の計画を立てて減免制度の活用を検討してください。
「知らなかった」で損をしないよう、最新情報をチェックしながら、空き家の固定資産税対策に取り組んでいきましょう。
出典元
*1 神戸市:「固定資産税に関するQ&A」
*2 仙台市:「空き家の敷地について、住宅用地の特例は適用されますか。」
*3 鴻巣市:「空家法改正の概要」
*4 総務省:「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」
*5 国税庁:No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
*6 新潟県三条市:「危険な空家解体後の土地の固定資産税等を減免します」
*7 福岡県久留米市:「老朽化した危険な空き家(住宅)の固定資産税について」
*8 紀美野町:「紀美野町空家除却後の土地に対する固定資産税の減免に関する要綱」
*9 国土交通省:「空き家には適切な管理が不可欠です。」
*10 鴻巣市:「空家法が改正(2023年12月)されました」
*11 総務省:「空き家対策における事例集」
*12 新潟県加賀市:「危険空家等の解体費用を助成します」