空き家を買ってリノベーションする人が増えている理由

中古住宅活用が注目される背景
日本では少子高齢化や人口減少により住宅総数に占める空き家の割合が年々上昇しています。直近の令和5年住宅・土地統計調査によれば、2023年時点で全国の空き家は約900万戸、空き家率13.8%に達し過去最多となりました(*1)。
こうした空き家増加を受け、国も新築偏重から既存住宅の有効活用へと方針転換しています。実際、2023年時点で日本の既存住宅流通シェアは全取引の約40.4%まで上昇し、2018年の約14.5%から大きく改善したものの、依然として欧米の5分の1程度と低水準にとどまっています(*2)。
住宅ストックが世帯数を上回る中、良質な中古住宅を「長く大切に使う」社会への移行が重要視され、空き家リノベーションが注目されるようになっています。
新築よりも安く理想の住まいが手に入る?
新築住宅価格の高騰もあり、「中古+リノベ」で理想の住まいを手に入れる動きが広がっています。
中古住宅は新築に比べ物件価格が割安な傾向があり、その分の予算をリノベーション費用に充てて自分好みの住まいに改装できるメリットがあります。実際、国の調査では中古一戸建ての平均購入価格が約2,517万円なのに対し、注文住宅の建築費用は平均3,415万円と、新築取得にはより高額な資金が必要です(*3)。
中古物件を購入してリノベすれば、新築より低コストで理想の間取りやデザインを実現できる可能性が高く、この点も中古住宅活用が注目される理由となっています。
空き家購入のメリット・リノベーションの魅力

物件価格が安く、初期費用を抑えられる
空き家となっている中古物件は市場価格が安く設定されている場合が多く、購入時の初期費用を大幅に抑えられるのが大きなメリットです。
築年数が経過した住宅でも、構造がしっかりしていれば低価格で取得して必要な改修を行うことで、新築同様の快適な住まいに再生できます。物件取得費用を抑えられれば、その分をリノベーションに回して設備グレードを上げたり、デザインにこだわったりと自由度の高い住まいづくりが可能です。
安く買って自分仕様に改装できる点で、空き家購入はコストパフォーマンスに優れた選択肢と言えます。また、購入額が少なければ住宅ローン借入も小さく抑えられ、将来の返済負担が軽減できる点も大きな利点と言えます。
自分好みにカスタマイズできる
中古空き家をリノベーションする最大の魅力は、住まいを自分好みに一から設計し直せる点です。間取り変更や内装デザイン、水回り設備の刷新など、新築注文住宅のようにゼロからプランニングして理想の暮らしを形にできます。
古い住宅でも、梁や柱など既存の趣きを活かしつつ、キッチンやバスルームを最新設備に交換することで、レトロな雰囲気と現代的な快適性を両立させることも可能です。既存住宅を土台に「スケルトンリフォーム」(全面改装)すれば構造以外を自由に作り変えられるため、世界に一つだけのオリジナル空間を実現できるのがリノベーションの醍醐味です。
例えば和室を洋室に変更したり、対面式のアイランドキッチンを新設するなど、既存間取りにとらわれない大胆な改変も思いのままです。
補助金や税制優遇が活用できる
中古住宅のリノベーションには、公的な補助金制度や税制優遇措置を活用できるケースがあります。
国土交通省の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」など、省エネ改修や耐震改修を行う場合に工事費用の一部が補助される制度が複数用意されています。また一定のリフォームを行うと所得税の控除や固定資産税の減額を受けられる「住宅ローン減税(増改築)」「リフォーム減税」の制度も整備されています(*4)。
さらに自治体によっては空き家改修補助や移住支援金を設けているところもあります。こうした支援策を上手に使えば自己負担を軽減でき、より計画的にリノベーションを進めることができます。
空き家購入からリノベーションまでの基本ステップ

物件探しと現地見学
まずは希望エリアの空き家情報を収集し、条件に合う物件を探します。自治体の空き家バンクや不動産サイトを活用して、価格帯・立地・築年数などから候補を絞り込みましょう。
気になる物件が見つかったら現地見学は必須です。実際に建物や周辺環境を確認し、間取りや広さ、陽当たり、周辺道路の幅やインフラ状況などをチェックします。空き家は長期間管理されていない場合も多いので、外観だけでなく内部の状況も内見時によく確認し、劣化の有無や修繕箇所を把握しておくことが重要です。
また、平日と週末・昼夜など時間帯を変えて現地を歩き、周辺の生活環境や騒音状況を確認しておくと安心です。
なお、自治体によっては空き家バンク以外に独自の空き家紹介制度を設けている場合もあるため、役所や地元不動産会社に問い合わせてみるのも有益です。
状態調査(インスペクション)の実施
購入候補の物件が見つかったら、専門家による建物状況調査(インスペクション)を行いましょう。建築士など資格を持つ第三者に依頼し、構造躯体や給排水管、雨漏り跡の有無、シロアリ被害の兆候などを詳細に調べてもらいます。
2018年の宅建業法改正で中古住宅の契約時にはインスペクションの説明が義務化され、買主は事前に住宅の状態を確認しやすくなりました(*7)。目に見えない部分の劣化リスクを把握するためにも、費用はかかりますが購入前にインスペクションを実施することを強く実施することをおすすめします。
なお、調査で判明した不具合はあらかじめ補修費用を見積もり、価格交渉やリノベ計画に反映することも可能です。
契約・登記と費用精算
インスペクション等で購入意思が固まったら、売主との売買契約に移ります。重要事項説明を受けて物件状況を再確認し、問題がなければ不動産売買契約を締結します。
契約時には手付金を支払い、残代金決済と物件引渡し日はリノベーション計画も踏まえて設定します。決済日に残金を支払い物件の引き渡しを受けたら、所有権移転登記など必要な登記手続きを行います。不動産取得税や仲介手数料など諸費用の精算もこのタイミングでまとめて実施します。
こうして正式に物件の所有者となったら、いよいよリノベーション準備に入ります。また、契約前には権利関係や境界の最終確認、インフラの引込状況なども専門家にチェックしてもらい、不安要素は潰しておきましょう。
リノベーション計画と工事着手
物件取得後は、リノベーションの具体的な計画を立てます。建築士やリフォーム会社と相談しながら、希望する間取り変更や設備グレード、デザインの方向性を詰めていきます。インスペクション結果を踏まえ、耐震補強や断熱改修など必要な工事項目も洗い出します。
プランと見積もりが固まったら工事契約を結び、リノベーション工事に着手します。工事中は定期的に現場を確認し、施工業者と緊密にコミュニケーションを取ることで、設計意図との差異や不具合を早期に是正できます。
また、着工前には近隣住民への工事挨拶を行い、騒音・埃への対策など施工時の配慮も徹底しましょう。数ヶ月の工期を経て改修工事が完了したら、いよいよ生まれ変わった住まいの引き渡しです。
完成後の活用・運用
リノベーションが完了した空き家は、自宅として快適に暮らすのはもちろん、場合によっては様々な活用が可能です。
移住先の住まいとして再生した場合は地域に根ざした暮らしを始め、近隣住民との交流も深めましょう。また、自宅の一部を賃貸にしたり店舗として活用すれば、副収入を得たり地域に貢献したりといった運用もできます。
定期的なメンテナンスを行い住宅性能を維持することも大切です。将来転売を検討する場合は、リノベ効果で資産価値が向上している可能性もあります。せっかく再生した住まいを有効に活用し、空き家を「負動産」ではなく価値ある資産として運用していきましょう。
空き家購入時の注意点と失敗しないコツ

目に見えない劣化・シロアリ被害のリスク
空き家には長年放置されたことで進行した劣化やシロアリ被害など、目に見えないリスクが潜んでいる場合があります。特に木造住宅では床下や壁内部の腐朽、シロアリ食害が進んでいても外見からは分からないことが少なくありません。
ある調査では、新築時の防蟻処理保証が切れて年数が経過した住宅の約2割で腐朽や蟻害等の生物劣化が発生していたとの報告もあります(*5)。購入後に構造的な重大欠陥が見つかれば補修費用が嵩むため、インスペクションで専門家に徹底点検してもらう、シロアリ予防工事を追加で行うなど、リスクへの備えを怠らないことが重要です。
特にシロアリ被害は気付きにくく、発見時には構造躯体に深刻なダメージを与えている恐れもあるため注意が必要です。
リフォームではなくリノベ向きかの見極め
購入を検討している空き家が「リフォームで済む物件か、フルリノベーションが必要な物件か」を見極めることも大切です。
比較的築浅で軽微な修繕で住める物件ならリフォーム中心で費用を抑えられますが、築古で間取りも設備も一新したい場合はリノベーション前提で考える必要があります。表面的には綺麗でも構造耐力や断熱性能が不十分な家は、大規模改修しないと快適な住宅にはなりません。逆に構造が良好で水回りだけ交換すればよい家もあります。
プロとともに物件のポテンシャルを見定め、「どこまで改修すべきか」「費用に見合う価値向上が得られるか」を判断すると失敗を防げます。リフォームとリノベのどちらが適切か迷う場合は、専門家の意見も参考にしながら総合的に検討しましょう。
法律・用途制限・再建築可否などの確認
空き家を購入する際は、その物件が抱える法的な条件や制限も事前に確認しましょう。都市計画法による用途地域の制限で希望の用途に使えない場合や、建ぺい率・容積率オーバーで増築が難しいケースもあります。
特に注意すべきは接道義務を満たさない「再建築不可物件」です。敷地が幅4m未満の道路にしか接していないなど建築基準法の要件を満たさない土地上の建物は、原則として建て替えや大規模な増改築が認められません(*6)。
再建築不可物件を購入した場合、将来取り壊して新築することはできず現状の建物を活かすしかないため、事前に再建築の可否を役所で確認しておくことが大切です。
リノベーション費用の目安と資金計画

建物構造・築年数別の費用相場
空き家リノベーションにかかる費用は、建物の構造や築年数によって大きく変動します。
一般に木造戸建ての全面リノベーション費用は30坪規模で500万〜1500万円程度が目安ですが、築年数が古く耐震補強や断熱工事を伴う場合はさらに費用が増えます。
実際の事例では、築20年程度までの戸建てなら800万~1500万円ほどで全面改装できるケースが多いのに対し、築30~40年クラスの古民家では骨組みを残して構造補強・断熱を施すため1,500万~3,000万円程度かかった例もあります。
鉄骨造やRC造は木造より改修費用が割高になる傾向です。あくまで目安ですが、自身の物件の築年や構造に応じた概算費用を把握し、資金計画に反映させましょう。
中古+リノベで住宅ローンを組む方法
空き家購入とリノベーションを一体で資金調達する方法として、「一体型住宅ローン」の活用が挙げられます。
民間銀行によっては中古購入費用とリフォーム費用をまとめて融資するプランがありますが、公的な支援策では住宅金融支援機構の【フラット35】リノベが代表的です。
これは中古住宅の取得と一定のリフォーム工事を同時に行う場合に利用できる長期固定金利型住宅ローンで、条件を満たすリフォームを実施すればAプランでは当初10年間0.5%、Bプランでは当初5年間0.25%の金利引き下げが適用されます(2025年4月以降はそれぞれ1.0%、0.5%に拡大予定)(*8)。
中古+リノベ向けローンを活用すれば、物件購入から改修まで一括で資金手当てでき、資金計画を立てやすくなります。まず金融機関や機構に相談し、自分に合った融資商品を検討しましょう。
融資・補助金・リフォーム減税の活用
リノベーション資金計画では、自己資金と住宅ローンに加え各種の補助・優遇制度を積極的に活用することがポイントです。
例えば先述の補助事業を利用できれば数十万〜数百万円の補助金が受け取れ、自己負担を減らせます。耐震改修やバリアフリー改修は所得税控除の対象となり、住宅ローン減税(増改築版)では借入残高上限2000万円の年末残高の0.7%が10年間所得税から控除されます。
また、一定のリフォームを行えば翌年度の固定資産税が半減される特例もあります。地方自治体も移住者向けリフォーム補助や空き家バンク成約時の奨励金など独自の支援策を展開しています。
これらの最新情報をリフォーム計画前に調べ、使えるものは漏れなく使うことで、総費用を賢く抑えることができます。
空き家リノベーションの成功事例

空き家を賃貸併用住宅にして副収入化
空き家を購入後リノベーションし、自宅兼賃貸住宅として活用することで家賃収入を得ている成功事例もあります。
例えば築古の戸建てを最低限の内装リフォームで賃貸可能な状態に整え、空き家を戸建て賃貸物件として再生したケースでは、約100万円という低コストの改修で入居者が見つかり、毎月の家賃収入で改修費用を回収できたと報告されています。
自らも住みながら一部を賃貸にする「賃貸併用住宅」とすれば、ローン返済の一部を賃料でまかなうことも可能です。需要のあるエリアであれば、空き家を活用した賃貸経営は副収入源として有効な選択肢となるでしょう。
ただし賃貸用途に転用する際は、耐久性や設備面で借主が快適に暮らせる水準に仕上げることが肝要です。
築50年の住宅を快適な移住先に再生
都会から地方への移住者が、空き家だった築50年ほどの古い住宅をフルリノベーションして快適な住まいに蘇らせた例もあります。
ある昭和築の木造住宅では、購入後に約200万〜300万円をかけ耐震補強と断熱改修を含む全面リノベーションを実施しました。その結果、新築を建てるより費用を大幅に抑えつつ、古民家ならではの味わいを残した温もりある空間が実現しています。キッチンや浴室など水回り設備も一新し、現代の暮らしに必要な利便性も確保しました。
地方移住の際、空き家を自分好みに再生して住むことで、古き良き田舎暮らしの雰囲気と現代的な快適さを両立できた好例と言えます。移住者同士や地元住民との交流も生まれ、空き家再生が地域コミュニティの活性化にも寄与したケースです。
よくある質問(FAQ)
Q1 空き家バンクの物件はなぜ安い?
空き家バンクに掲載されている物件は、一般市場では買い手がつきにくいものも含まれるため、相場より割安な価格設定になっているケースが多いです。
空き家バンクは自治体が運営し登録・閲覧が無料のため、「とりあえず登録している物件」も少なくありません。その結果、老朽化が進んだ物件や立地条件が不利な物件も掲載され、価格が抑えられる傾向があります。
実際、「普通なら売れないような物件も空き家バンクには登録されており、比較的安い傾向にある」との指摘もあります。ただし安い理由には相応の訳(リフォーム費用の発生、利便性の低さなど)があるため、価格だけで飛びつかず物件の状態や条件を見極めることが大切です。
Q2 買った後に再建築できない場合は?
購入した空き家が再建築不可物件だった場合、残念ながら建物を取り壊して新築し直すことはできません。
建築基準法の接道義務を満たさない土地に建つ家屋は原則として建替えや大規模改築が認められないためです。その場合は現在ある建物をリフォーム・リノベーションして使い続けるしか選択肢がありません。
増改築も法律の範囲内でしか行えず、将来的に資産価値も限定的となります。購入前に再建築の可否は必ず役所で確認すべきですが、万一「再建築不可」と判明した場合は、用途転用(例:貸店舗や倉庫にする)や土地ごと第三者に売却するといった検討が必要です。
いずれにせよ再建築不可物件は活用や処分に制約が多いので、事前に専門家に相談して対応策を探ることをおすすめします。
Q3 どの段階で専門家に相談すべき?
空き家の購入やリノベーションにおいては、できるだけ早い段階から専門家に相談するのが望ましいです。
物件選びの段階では不動産会社や空き家バンクの窓口で物件の法的条件を確認したり、建築士に同行を依頼して建物の概況を見てもらうと安心です。
購入を決める前のインスペクションではもちろん専門家の力が必要ですし、リノベーション計画に入る段階では建築士やリフォーム会社と綿密に打ち合わせを重ねます。特に築古物件の再生には専門知識が欠かせず、自己判断だけで進めるのはリスクがあります。実際「老朽化した空き家の改修は建築士や施工業者、行政と連携しながら計画すべき」と指摘されています。
資金計画も含め、疑問点は各分野の専門家に遠慮なく相談し、適切なアドバイスを得て進めましょう。
まとめ|空き家リノベは「物件選び×資金計画×地域目線」が成功のカギ!
増え続ける空き家問題に対し、中古住宅を購入してリノベーションすることは、住まい手にとって理想の家を安価に実現すると同時に、社会的にも空き家解消に寄与する有効な手段です。
本記事で述べたように、成功のポイントは「良い物件を見極める目利き力」「綿密な資金計画」「地域に開かれた活用視点」の3つに集約されます。中古物件選びでは将来的な売却や賃貸も見据えて価値を見極めることが重要で、資金計画では補助金やローンを駆使して無理のないプランを組むことが求められます。
また地域資産として空き家を活用する視点を持てば、単なる自分の家づくりに留まらずコミュニティへの貢献にもつながり、結果的にプロジェクトが円滑に進むでしょう。こうした観点が指摘されている通り、空き家リノベーションの成功には多角的な視野と準備が欠かせません。ぜひ入念な計画のもと、自分らしい理想の住まいを空き家から生み出してみてください。
出典元
*1 総務省: 「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」
*2 国土交通省: 「既存住宅・リフォーム市場の活性化に向けた取組み」
*3 国土交通省: 「令和6年度住宅市場動向調査~調査結果の概要(抜粋)~」
*4 国土交通省: 「住宅リフォームの支援制度 ※令和7年6月2日時点」
*5 日本長期住宅メンテナンス: 「シロアリ被害実態調査報告書」
*6 国土交通省: 「狭あい道路対策に対するガイドライン」
*7 国土交通省:「改正宅地建物取引業法の施行について」
*8 住宅金融支援機構: 【フラット35】
*9 国土交通省: 「接道規制のあり方について」