管理・トラブル対策

空き家へ火災保険は必要?加入すべき理由と選び方などをわかりやすく解説

近年、全国で増え続ける空き家は、総務省によると、2023年時点で全国の空き家数は約900万戸にのぼり、その数は今後も増加が予測されています。人が住んでいないからといって、火災などのリスクがないと思っていませんか? 実は、無人の空き家こそ、放火や漏電など予期せぬトラブルにさらされやすく、深刻な損害や賠償責任を招く恐れがあるのです。

本記事では、「空き家に火災保険は必要か?」という疑問に対し、リスクの実情から補償の内容、選ぶべき保険商品、加入時の注意点までを徹底解説。火災保険の基本から、空き家特有の事情に即した実践的な知識まで、初心者にもわかりやすく整理しています。

空き家でも火災保険は必要?

空き家でも火災リスクは存在する

日本の空き家は年々増加し、2023年時点で約900万戸(空き家率13.8%)にも上ります(*1)。人が住んでいなくても火災のリスクはゼロではありません。実際、全国の火災原因の中で最も多いのは放火であり、無人の空き家は人目がない分放火される危険性が高いとされています。

 

不審者に狙われやすいうえ、老朽化した配線の漏電などによる火災も起こり得ます。誰も住んでいない空き家から出火すると発見が遅れ、被害が拡大しやすい点もリスクと言えるでしょう。

 

放置による被害・責任リスクも大きい

空き家を放置すると倒壊などにより周囲へ被害を及ぼす恐れもあり、所有者として大きな責任リスクを抱えます。適切に管理されていない建物が倒壊・火災を起こし他人に損害を与えた場合、民法第717条に基づき所有者が損害賠償責任を負います。その賠償額は場合によって数千万円から数億円と極めて高額になる可能性があります。

 

現に、危険な空き家があるだけで周辺不動産の価値が下がるケースも指摘されており、行政も「空家法」による特定空家の指定や是正勧告など対策を強化しています。空き家に火災保険をかけておけば、こうした最悪の事態に備える経済的な安心が得られます。

 

火災保険で補償される主なトラブルとは

火災・落雷・爆発による損害

火災保険では火事による焼失・損傷はもちろん、落雷やガス漏れによる爆発といった事故も補償の対象になります。

 

たとえば落雷で配電設備が破損したり、落ちた雷が原因で火災が発生した場合も保険金が支払われます。また、ボイラーや給湯器の破裂・爆発事故による建物損害なども補償されるのが一般的です(*2)。

 

空き家でもこれらのリスクはゼロではないため、万一の際に保険で損害をカバーできる意義は大きいでしょう。

 

台風・水漏れ・雪害など自然災害

火災保険は風災・雪災など自然災害による損害にも幅広く対応しています。台風や暴風による屋根の損壊、豪雪による建物の倒壊・破損なども補償対象です(*2)。

 

たとえば空き家の屋根瓦が台風で飛散した場合や、大雪で雨樋や屋根が壊れた場合でも保険金請求が可能です。

 

また、多くの火災保険では給排水設備の事故による水漏れ被害も補償範囲に含まれます。人が住んでいない空き家は水道管の破裂や雨漏りに気づきにくいため、保険による備えがあると安心です。

 

他人への賠償責任補償(延焼・破損等)

空き家からの火災が近隣に延焼した場合や、倒壊・落下物によって他人の建物や財産に被害を与えた場合、火災保険の賠償責任補償によって備えることができます。日本では失火責任法により失火による延焼について賠償責任を問われにくいものの、空き家の放火や倒壊が「重過失」と見なされれば所有者に多額の賠償請求が及ぶ可能性があります。

 

火災保険にはこうした隣家への延焼被害に備えて見舞金や類焼損害を補償する特約が用意されている場合があります(*2)。また、個人賠償責任保険をセットで付帯すれば、空き家敷地内で第三者がケガをした等の場合の賠償にも対応できます。

 

空き家が火災保険に入りにくい理由と現実

空き家は「リスクが高い物件」とみなされる

空き家は人の手が行き届かない分、保険会社からリスクの高い物件と見なされがちです。長期間人が住んでいない家屋は老朽化が進み、火災や自然災害による損害が発生しやすい傾向があります(*3)。

 

また、居住者がいないことで小さな不具合が大きな事故に発展するリスクも高まります。たとえば漏電によるボヤが放置され大火事になる、不審者による侵入や放火を許しやすい、といった点です。

 

さらに、火災保険約款上定められている「損害防止義務」(事故時に被害拡大を防ぐ努力)の履行も、無人の空き家では難しくなります。そのため保険会社は総合的にリスクが高いと判断し、空き家の引き受けには慎重になるのが現実です。

 

引き受け拒否や保険料の割高化も

前述の理由から、空き家は火災保険に加入しづらいケースがあります。特に「当面住む予定がないまま放置された空き家」の場合、保険会社から加入を断られることも少なくありません。仮に加入できても、居住中の住宅とは異なる「一般物件」として契約せざるを得ず、保険料が割高になる傾向があります。

 

実際、誰も住んでいない空き家は火災保険上は店舗や事務所などの一般物件扱いとなり、保険料率が高く設定されます。加えて、住宅物件用の火災保険では付帯できる地震保険が一般物件では契約できないなど、補償内容にも制約が生じます(*3)。

 

このように空き家への保険適用は厳しい現実がありますが、後述する専門商品や条件付きで引き受けてくれる会社も存在します。

 

空き家に火災保険をかける場合の選び方

建物の現状・利用予定に合ったプラン選び

空き家に火災保険をかける際は、まず建物の現状や今後の利用予定に合ったプランを選ぶことが大切です。

 

空き家と一口に言っても、将来的にリフォームして自分で住む計画があるのか、賃貸や売却を検討しているのか、それとも当面利用予定がないのかで適切な保険内容は異なります。

 

例えば、いずれ居住する予定がある場合は通常の住宅総合保険に加入できるケースもあります。一方、利用予定がなく老朽化が進む物件であれば、補償範囲を火災・風災など最低限に絞った簡易的なプランを選ぶ方法もあります。

 

また現在の建物の状態も考慮しましょう。老朽化の程度によっては加入できる保険商品が限定されるため、必要に応じて修繕やシロアリ駆除を行った上で保険契約することも選択肢となります。自分の空き家の状況と将来計画を踏まえ、無理なく適用できるプランを検討しましょう。

 

補償範囲・保険金額の適正化

空き家にかける火災保険では、補償範囲と保険金額を適正に設定することも重要です。過不足のない補償内容にするため、考えられるリスクと必要な保険金額を見極めましょう。

 

まず補償範囲については、火災・落雷・風災など基本的な補償は外せませんが、盗難や破損汚損など空き家には不要な項目は外すことで保険料を抑えられます。一方、隣家への賠償責任補償や個人賠償特約はできるだけ付けておくのがおすすめです。

 

次に保険金額(保険金の上限額)については、建物評価額や再建築費用に見合った額を設定します。築年数が古い空き家の場合、時価額が低く設定されることがありますが、必要に応じて評価額の見直しも検討しましょう。高すぎる保険金額は無駄な保険料につながり、逆に低すぎるといざというとき十分な補償が得られません。

 

空き家の現状と周囲への影響リスクを踏まえ、補償内容と金額を適正化することが大切です。

 

空き家専門の保険商品を扱う会社を選ぶ

空き家に火災保険をかけるなら、空き家向け保険商品を積極的に展開している保険会社を選ぶのも一案です。大手損保では空き家の引き受けを制限している場合もあるため、空き家専門のプランを持つ保険会社や共済を探してみましょう。

 

例えば、近年では特定のNPO法人と連携して空き家専用保険を開発した保険会社もあります(*4)。その商品では空き家の定期管理サービスと保険補償がセットになっており、火災時の建物解体費用や近隣への見舞金までカバーされるなど、空き家オーナー向けの手厚い内容が特徴です。

 

このように、空き家リスクに特化した保険商品は加入条件も比較的緩和されていることが多く安心です。ただし保険会社によって引き受け条件が異なるため、複数社で見積もりを取って比較検討することをおすすめします。空き家専門プランの有無や補償内容を確認し、自分のニーズに合った保険会社を選びましょう。

 

火災保険とセットで検討すべき他の保険

地震保険は加入すべき?

地震保険は、地震や噴火、津波による損害を補償する保険で、火災保険ではカバーされない「地震による火災・倒壊」などの被害に備えるものです。空き家であっても、建物が地震で倒壊したり火災が発生したりすれば資産価値が失われるため、経済的な損失に備えるためには地震保険への加入が望ましいでしょう。

 

特に日本は地震大国であり、大規模地震による被害リスクは常に存在します。地震保険は単独では契約できず火災保険とセットで加入する必要がありますが(*5)、空き家の場合も火災保険契約時に付帯が可能です。

 

ただし前述のとおり、火災保険を住宅物件ではなく一般物件扱いで契約する場合、地震保険は付帯できない点に注意が必要です(*3)。空き家の所在地が地震リスクの高い地域であったり、建物評価額が高かったりする場合は、可能な限り地震保険もセットで加入することを検討してください。

 

万一の震災で無保険では、再建どころか残骸の片付け費用すら自己負担となりかねません。火災保険と併せて地震保険にも目を向け、総合的なリスクヘッジを図りましょう。

動産(家財)保険・賠償責任保険との違い

空き家の火災保険を検討する際には、動産(家財)保険や個人賠償責任保険との違いも整理しておきましょう。

 

まず家財保険とは、住宅内の家具・電化製品・衣類など生活用品に生じた損害を補償する保険です。空き家には基本的に生活家財が置かれていないか、ごく少量しかないため、家財保険は通常不要です。仮に家財道具が残っている場合でも、空き家状態では盗難リスクが高まるため早めに処分し、家財保険を外すことで保険料を節約できます。

 

一方、個人賠償責任保険は日常生活における他人への損害賠償を補償する保険です。空き家に関しては、たとえば空き家の屋根瓦が落下して通行人にケガを負わせた場合などに賠償責任保険で対応できます。ただし個人賠償保険は火災保険に自動付帯ではないため、特約で付けるか別途契約が必要です。

 

火災保険の類焼損害補償特約は自分の火災が延焼した際の近隣見舞費用を補うものですが、個人賠償保険はそれ以外の幅広い事故(例えば管理不足による事故全般)をカバーします。

 

空き家所有者であれば、火災保険による物的補償に加えて、この個人賠償責任保険にも加入しておくとより万全でしょう。

 

火災保険に加入しないと起こり得るリスク

放火被害や倒壊時の自己負担

空き家に火災保険をかけていない場合、放火などで火事が起きたり災害で倒壊したりした際の損害をすべて自己負担しなければなりません。

 

例えば放火によって建物が全焼した場合、再建はおろか残骸の撤去費用まで全額自己負担となります。前述のように、建物の解体処分には百万円単位の費用がかかるのが一般的です。保険未加入だと、このような突発的な損害に対して公的支援や補償制度はほとんど期待できず、被害額がそのまま家計の損失となります。

 

特に放火は予防策を講じていても完全には防げない犯罪リスクです。火災保険に加入していなかったために、放火被害で家屋と財産価値を丸ごと失ってしまう可能性もあります。

 

また老朽化で建物が倒壊した場合も同様で、保険金がなければ壊れた家屋の撤去費用を自腹で支払うことになります。こうした自己負担リスクを軽減するためにも、火災保険への加入は重要なのです。

 

所有者責任による高額請求リスク

空き家に火災保険へ未加入のままだと、所有者責任による高額な賠償請求リスクにも無防備な状態となります。

 

先述したように、空き家の放置が原因で火災が近隣に延焼したり倒壊によって他人に被害を与えたりした場合、所有者には法的な損害賠償責任が発生する可能性があります。その請求額は被害の規模によっては数千万円から数億円に上るケースも想定されます。

 

火災保険に加入していれば、こうした第三者への賠償金についても特約でカバーできる場合がありますが、無保険では全額自己資金で賠償しなければなりません。特に重大な人的被害(死亡・重傷など)を出してしまった場合、数億円規模の賠償判決が下る可能性も否定できず、個人では到底払いきれない負担を背負うリスクがあります。

 

空き家所有者にとって、火災保険未加入でいることはこのような財産破綻につながりかねないリスクを容認してしまうことになります。万一の賠償リスクに備える意味でも、火災保険(賠償特約付き)への加入は実質的に必須と言えるでしょう。

 

近隣トラブルや資産価値の低下

空き家に火災保険をかけていないことは、周辺住民とのトラブルや資産価値の低下にもつながる恐れがあります。

 

無保険の空き家で火災や事故が起きた場合、適切な補償が行われないと近隣住民との関係悪化を招きかねません。例えば延焼による隣家への被害を十分に賠償できないと、深刻な近隣トラブルに発展する可能性があります。

 

また、保険未加入の空き家は所有者自身も経済的リスクを恐れて放置しがちで、建物が荒廃したまま放置されれば地域の景観を損ね、周辺の不動産価値を押し下げる要因となります。行政から特定空家に指定されて固定資産税の優遇を失ったり、解体命令を受けても費用負担に窮して放置せざるを得なくなるケースも考えられます。

 

つまり火災保険未加入でいることは、空き家の適切な管理・処分を遅らせ、結果的に資産価値をますます低下させてしまう悪循環を招きます。近隣への責任を果たし、自身の資産価値を守るためにも、空き家に火災保険をかけておくことが望ましいのです。

 

よくある質問(FAQ)

Q1 人が住んでいなくても火災保険に入れる?

はい、空き家でも火災保険に加入することは可能です。

ただし通常の住宅用火災保険とは扱いが異なる点に注意が必要です。誰も住んでいない空き家は多くの場合「一般物件」として契約することになり、保険料が割高になったり補償範囲に制限が出るケースがあります(地震保険が付帯できない等)。

 

一方で、例えば一時的に空き家になっているだけ(転勤や入院で一時不在、売却や賃貸の準備中など)の場合は、従来どおり住宅物件扱いで火災保険を継続できることもあります。保険会社によって引き受け条件が異なるため、現在空き家状態でも加入可能な商品を扱う会社に相談するとよいでしょう。

 

ポイントは、空き家である事情を正直に申告し、それに合った契約形態(一般物件用プラン等)で加入することです。無人だからといって火災保険に入れないわけではありませんが、条件面で制約がある点を理解しておきましょう。

 

Q2 相続した空き家も対象になる?

相続により取得した空き家でも、火災保険に加入することは可能です。

 

相続直後は所有者名義の変更手続きなどが必要になりますが、新たな所有者として火災保険契約を引き継ぐか、新規に契約し直すことで補償を確保できます。

 

注意点として、相続登記が未了で名義が故人のままになっている場合、保険契約には正式な所有者として登録が必要になるため早めに登記変更を行いましょう(*3)。保険会社によっては、相続手続き中(遺産分割協議中等)であっても一旦仮契約の形で火災保険に入れる場合もありますが、基本的には現所有者名義での契約が求められます。

 

また、相続した空き家が老朽化している場合は保険引受けに修繕が条件となることもあります。相続物件こそ火災保険に加入し、予期せぬ火災・災害や管理上のリスクに備えておくことが大切です。

 

万一、相続した空き家で事故が起きれば相続人(新所有者)が賠償責任を負うことになるため、早めに保険手配をしておきましょう。

 

Q3 築年数が古くても加入できる?

築年数が相当古い空き家でも、加入を引き受けてくれる保険商品はあります。

 

ただし建物が古い分、保険会社によっては引受条件が厳しくなったり、保険料が高めに設定される可能性があります。実際、築古の木造住宅は火災・倒壊リスクが高いため、保険料率が割増となるケースがあります(*7)。

 

また老朽化の程度によっては、一部保険会社で引受不可となる場合もあります。例えば屋根や柱が著しく傷んでいるような物件だと、保険加入前に修繕や耐震補強を求められることがあります。そうした条件をクリアすれば、築50年以上の古民家であっても火災保険に入れた実例はあります。

 

なお、築年数が古い住宅では評価額(保険金額)が低く算出されがちです。保険金額は実勢価値を反映した時価で設定されるため、築古物件では満額でも再建費用を賄えないこともあります。その点も考慮し、必要に応じて保険金額の調整や共済への加入など柔軟に検討すると良いでしょう。

 

まとめ|空き家の火災保険は『義務ではないが、実質必須』

空き家に火災保険をかけることは法律上の義務ではありません。しかし、本記事で見てきたように空き家を巡る火災リスクや賠償リスクは決して無視できない大きなものがあります。

 

人が住んでいなくても火災や自然災害は発生しうるうえ、空き家を放置することで近隣へ多大な損害を与えるリスクも抱えています。万一の際に経済的破綻を防ぐためには、火災保険への加入は実質的に必須と言えるでしょう。

 

保険料は多少かさむかもしれませんが、空き家専用の保険商品や特約を活用すればリスクに見合った補償を得られます。空き家をお持ちの方は、「自分は大丈夫」と楽観せず、本記事で紹介した理由や選び方を参考に火災保険の加入を前向きに検討してください。

 

空き家の火災保険は、いざという時にあなたの大切な資産と周囲の安全を守る強い味方となってくれるはずです。

 

出典元
*1 総務省「令和5年住宅・土地統計調査 (参考分析)共同住宅の空き家についての分析
*2 日本損害保険協会: 「火災保険
*3 JA共済総合研究所「わが国の空き家の現況・対策と空き家に関するリスク
*4 日新火災海上保険: 「特定非営利活動法人空家・空地管理センターとの提携による空き家専用保険の発売
*5 財務省: 「地震保険制度の概要

 

執筆者

執筆者

神戸 翔太

クールコネクト(株)

代表取締役

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群馬県伊勢崎市を拠点に、農水産物の生産・卸売を中核事業として展開。農業で培ったネットワークを活かし、外国人向け不動産賃貸・社宅代行、空き家活用、清掃事業など周辺領域にも事業を広げ、地域の課題解決に取り組んでいる。

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