不動産投資の基礎知識

空き家を個人で貸すには?|専門家が教える賃貸手順・家賃相場・よくある失敗事例まで完全ガイド

空き家は2023年に約900万戸へ増え、総住宅数の13.8%を占めました。放置すれば老朽化や固定資産税の増額などリスクが高まっています。一方で、個人で賃貸に出せば家賃収入が得られ、管理負担の軽減にもつながります。

ただし、修繕や契約方式、住宅ローンの制約など、押さえておくべき点も少なくありません。本記事では、空き家を個人で貸すための基礎知識や注意点をわかりやすく解説します。

目次

  1. 空き家を個人で貸すとは?|仕組み・貸し方の3パターンを専門家が整理
    1. 賃貸・管理委託・サブリースの違い
    2. 個人で貸す場合の前提条件
  2. 空き家を貸すべきか判断する3つの基準|貸せる物件・貸しにくい物件の特徴
    1. 築年数・立地・間取りで判断するポイント
    2. 貸すより売るべきケース
  3. 空き家を個人で貸すメリット・デメリット|収益・節税・管理負担を整理
    1. 賃貸化のメリット(収益・節税・放置リスク軽減)
    2. デメリット(修繕費・管理リスク)
  4. 空き家を貸す前の準備チェックリスト|建物状態・書類・法的条件
    1. 建物状態の確認ポイント
    2. 必要書類の整理
    3. 貸せない物件の法的条件(用途地域・接道など)
  5. 空き家を貸す手順|家賃相場の決め方・募集方法・契約まで完全ガイド
    1. 家賃相場の調べ方
    2. 入居者募集の方法(個人募集/不動産会社)
    3. 空き家バンクを活用する
    4. 普通借家・定期借家の契約形態の違い
  6. 空き家賃貸でありがちな失敗事例|トラブル・赤字パターンと原因
    1. 入居者トラブル(滞納・設備)
    2. 修繕費の想定ミス
  7. 空き家賃貸で知っておきたい最新制度・補助金|2025年版
    1. 空き家活用関連の補助金
    2. 自治体の支援制度
    3. 空き家対策特措法の最新動向
  8. 空き家を個人で貸す際のよくある質問(FAQ)
    1. 築何十年も経つ古い空き家でも貸せるものでしょうか?
    2. 自宅から遠く離れた空き家を貸す場合、どのように管理すれば良いでしょうか?
    3. 空き家を貸すより売った方が得な場合もありますか?
  9. まとめ|空き家を個人で貸す前に押さえるべき重要ポイント

空き家を個人で貸すとは?|仕組み・貸し方の3パターンを専門家が整理

 

空き家を個人で貸すとは、所有する使っていない住宅を第三者に賃貸することです。空き家活用の方法には大きく3つのパターンがあります。

 

自己管理で賃貸:オーナー自身が貸主となり、入居者募集・契約締結・家賃管理・クレーム対応まで行う方法。管理委託料が不要なため家賃収入を最大化できますが、その分、入居審査や設備管理など専門知識が求められます。

 

管理委託:契約関係はオーナーと入居者が結びつつ、物件管理や入居者対応を管理会社に依頼する方法です。管理委託料(月額家賃の5~10%程度)が発生する一方、24時間対応や家賃集金代行により管理負担が大幅に軽減されます。

 

サブリース(一括借上げ):不動産会社が物件を借上げ、入居者に転貸する方式です。空室でも一定の賃料が得られる安心感があります。ただし借上げ賃料は相場より低く設定され、契約期間中に減額されることもあります。近年はサブリースを巡る賃料トラブルも増えており、国土交通省も注意喚起を行っています。

 

さらに、2023年12月に施行された空き家法改正では、管理が不十分な空き家が「管理不全空家」と判断されると固定資産税の軽減措置が外れ、税額が最大6倍に増える可能性もあります。
そのため、空き家を「貸す」という選択肢は、老朽化や税負担を防ぎつつ収益化できる実用的な方法として注目が高まっています。

 

賃貸・管理委託・サブリースの違い

自己管理(直接賃貸)は、オーナーが入居者募集・契約・家賃管理・トラブル対応をすべて行う方式です。管理委託料が不要なため収益は最大化できますが、時間と手間が最もかかります。

 

管理委託では、入居者との契約はオーナーのまま、管理会社に実務を任せられます。遠方の空き家や忙しいオーナーに向いており、委託料を払ってもメリットは大きいといえます。

 

サブリースは空室リスクを大幅に低減できますが、賃料は相場より低い上、数年後に減額されるケースもあります。契約内容により大きく条件が変わるため、メリット・デメリットを精査する必要があります。

 

また、賃貸契約の仕組みとして 普通借家契約定期借家契約 の2種類があります。定期借家契約は期間満了で確実に退去してもらえるため、将来自分で使う可能性がある空き家には有効です。

 

個人で貸す場合の前提条件

空き家を貸すにはまず、所有権が明確であること が前提です。2024年4月から相続登記が義務化されており、未登記のまま放置すると過料の対象となるため、相続した空き家は早めに名義変更を済ませましょう(*2)。共有名義の場合は、全員の同意が不可欠です。

 

次に、建物が入居に耐えられる状態か を確認します。長期間放置された住宅は雨漏り、給排水設備、電気設備の不具合が多いため、専門業者による点検と修繕が必要です。

 

 項  内容
 部分リフォーム  数十万円~500万円
 全面リフォーム  500万~2,000万円
 管理委託費  家賃の5〜10%

といった費用目安も把握しておくと安心です。

 

なお、住宅ローン返済中の物件は、原則として「自己居住」を条件としており、賃貸として貸すことはできません。賃貸化を希望する場合は、必ず金融機関の承認やローンの借り換えが必要です。

 

さらに、空き家を放置すると2023年改正空き家法により「管理不全空家」に該当し、固定資産税の住宅用地特例が解除される可能性があります。適切に管理し、賃貸活用を進めることがリスク回避につながります。

 

また、空き家活用の一つとして売却を検討する場合、相続空き家に適用できる 最大3,000万円特別控除 が2027年まで延長されています。賃貸だけでなく、出口戦略として知っておくと有益です。

 

賃貸に出す際は、全国の自治体が運営する空き家バンクを活用すれば、入居者を低コストで募集できるほか、国土交通省の全国版空き家バンクを通じて広域に情報を掲載できます。

 

さらに、2025年度は国が「空き家対策モデル事業」を開始しており、改修費の1/3、解体費の2/5を補助する制度が利用可能です。リフォーム費用を抑えて賃貸化を進めたい人にとって大きなメリットとなります。

空き家を貸すべきか判断する3つの基準|貸せる物件・貸しにくい物件の特徴

空き家を貸すべきかどうかは、物件の状況や市場ニーズを踏まえて判断する必要があります。主な基準は「築年数・建物状態」「立地条件」「間取り・設備の適合性」の3点です。

 

これらの基準で客付けのしやすさを見極め、貸せる物件か貸しにくい物件かを判断します。また、条件によっては賃貸より売却の方が有利な場合もあります。以下で各ポイントを詳しく解説します。

 

築年数・立地・間取りで判断するポイント

築年数が古い空き家は、一般的に賃貸に出すハードルが高くなりがちです。実際、日本の空き家の約7割は1980年(昭和55年)以前に建てられた住宅で占められており(*3)、旧耐震基準の家屋も少なくありません。このような物件は、耐震補強や大規模リフォームが必要になるケースもあります。

 

一方で、昭和レトロな雰囲気を持つ古民家風住宅は、リノベーション次第で付加価値を高められる余地もあります。

 

立地も非常に重要な判断材料です。都市部や駅近で交通利便性が高い空き家は比較的借り手が付きやすいのに対し、人口減少が進む過疎地域やバス便のみの立地では需要が限られます。近隣にスーパー・病院・学校などの生活利便施設が揃っているかどうかも、入居希望者の判断に大きく影響します。

 

間取り・設備については、現代の入居者ニーズに合っているかを確認しましょう。例えば、トイレが和式のみ、水回りが著しく老朽化している場合は改修がほぼ必須です。

 

ファミリー向けであれば3LDK前後の間取りや駐車場の有無が重要になり、狭小な2Kなどは単身者向けに用途転換するなどの工夫が求められます。

 

最終的には、築年数・立地・間取りの総合評価から「この物件なら家賃○万円程度で、何年程度で初期投資を回収できそうか」をシミュレーションし、賃貸として成り立つかどうかを判断します。いずれの面でも条件が厳しい場合、賃貸経営は苦戦しやすく、売却や解体を含めた選択肢の検討が必要です。

 

貸すより売るべきケース

賃貸で利益を出すのが難しい空き家は、無理に貸すより売却を検討した方がよいケースがあります。老朽化が著しく、修繕費が想定される家賃収入に見合わない物件は、更地にして売却した方がトータルの損失を抑えられることも少なくありません。

 

また、極端に需要が少ない過疎地や、人口減少が顕著な地域にある物件は、長期間空室が続くリスクが高くなります。このような場合、賃貸にこだわるよりも、早めに売却して資金化した方がリスクを低減できる可能性があります。

 

さらに、再建築不可物件など法的制約のある不動産は、将来的な活用の幅が限られます。建て替えができず、リフォームにも制約があるため、長期的な賃貸運用には不向きな典型例です。権利関係が複雑で、相続人が多く話がまとまりにくい物件も、売却によって問題を整理できる場合があります。

 

相続した空き家については、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例(いわゆる「相続空き家の3,000万円特別控除」)があり、この制度は2027年12月31日まで延長されています。賃貸活用が難しい物件では、この特例を活用した売却も有力な選択肢になります。

 

また、売却時には民間仲介だけでなく、自治体が運営する「空き家バンク」を活用することで、地方移住希望者など通常とは異なるニーズ層へアプローチできる可能性もあります。

 

以上のようなケースでは、不動産会社や税理士などの専門家に相談し、賃貸・売却・解体の選択肢を比較検討したうえで、最適な出口を早期に決めていくことが重要です。

 

空き家を個人で貸すメリット・デメリット|収益・節税・管理負担を整理

空き家を賃貸に出すことには、収益面や税制面でのメリットがある一方、修繕費負担や管理上のデメリットも存在します。ここでは賃貸化の主なメリットと、注意すべきデメリットを整理します。

 

賃貸化のメリット(収益・節税・放置リスク軽減)

空き家を貸す最大のメリットは、毎月の家賃収入が得られることです。賃料収入によって固定資産税や火災保険料などの維持費を賄い、うまくいけば利益を生み出すことも可能です。

 

特に住宅ローンが残っていない相続空き家であれば、家計の「副収入源」として有効活用しやすくなります。

 

また、税制面のメリットも見逃せません。賃貸経営にかかる修繕費や固定資産税、管理委託料、ローン利息などは必要経費として不動産所得から控除できます。

 

さらに賃貸用として利用している土地については、「小規模宅地等の特例」によって一定の面積まで相続税評価額が大きく減額される場合もあり、相続税対策としても有効に働くことがあります。

 

相続空き家を将来的に売却する選択肢を取る場合でも、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例が利用可能です。賃貸と売却、いずれの出口を選ぶにしても、税制を踏まえた戦略を立てることで手取りベースのメリットを高められます。

 

さらに、空き家を賃貸として活用することで、放置リスクを軽減できる点も大きなメリットです。誰も住んでいない家は老朽化や不法侵入・不法投棄などのリスクが高まりますが、入居者がいれば換気や日常的な使用により建物の状態が保たれやすくなります。

 

2023年12月に改正された空家等対策特別措置法では、「管理不全空家」に認定されると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が最大6倍程度に増加する可能性も示されています。賃貸化によって適切な管理が行われている状態にしておくことは、こうした税負担増のリスクを抑えるうえでも有効です。

デメリット(修繕費・管理リスク)

一方で、空き家を貸すことには費用面・管理面でのデメリットもあります。

 

まず、入居募集前に必要となるリフォームや修繕費などの初期投資が発生します。古い空き家では特に、水回り設備(キッチン・浴室・トイレ・給排水管)の交換や内装改修、外壁・屋根の補修などが必要になることが多く、その費用は部分的な修繕でも数十万円〜数百万円、全面的なリフォームでは500万〜2,000万円程度に達するケースもあります。

 

これらの初期投資を家賃収入で回収するまでには、数年〜十数年単位の時間がかかることもあるため、中長期的な収支シミュレーションが欠かせません。

 

賃貸化後も、空室リスクは常に存在します。借り手がつかなければ固定資産税や保険料、管理費などの維持費だけが出ていき、赤字となる恐れがあります。また、入居者がいても退去が発生すれば、次の借り手が決まるまで収入が途絶えます。地域の需要動向や賃料相場を踏まえ、現実的な稼働率を想定しておく必要があります。

 

管理の手間とトラブル対応も大きな負担になり得ます。設備故障への対応、家賃滞納時の督促、騒音やゴミ出しなど近隣トラブルの解決など、オーナーには賃貸経営に伴う責任が生じます。特に遠方の物件では自主管理が難しく、管理会社への委託がほぼ必須となり、その分の管理委託料もコストとして見込まなければなりません。

 

こうしたリスクを抑える手段として、契約形態の選択も重要です。空き家を将来自分や家族が利用する可能性がある場合や、相続人間で将来の利用方法を相談しているケースでは、契約期間満了で確実に明け渡しができる定期借家契約を選択することで、貸し出しに伴う心理的・法的な不安を軽減できます。

 

空き家を貸す前の準備チェックリスト|建物状態・書類・法的条件

空き家を賃貸に出す前に、オーナーが確認・準備すべき事項をチェックリスト形式で整理します。建物状態の確認、必要書類の整理、法的条件のチェックという3つの分野を事前に整えることで、賃貸開始後のトラブルを防ぎ、安心して運用できます。

 

建物状態の確認ポイント

まずは空き家の建物状態を詳細にチェックしましょう。屋根・外壁の破損や雨漏り、構造部分の腐朽やシロアリ被害がないかを専門家に点検してもらうことをおすすめします。特に1981年(昭和56年)5月以前に建築確認を受けた建物は旧耐震基準が適用されており、耐震診断や補強工事が必要になる場合があります。

 

なお、旧耐震基準の物件では、賃貸契約時の重要事項説明で耐震診断の有無を告知する義務があります。

 

長期間空き家だった住宅では、給排水管の錆つきやボイラー・給湯器の故障が起こりやすく、築30年以上の場合は水道管の清掃(5〜6万円)や漏水修繕(8万円程度)が発生するケースもあります。水回り設備の交換や内装の改修が必要な場合は、数十万円〜数百万円規模の初期投資を見込む必要があります。

 

小規模な補修(網戸交換・壁紙補修など)はオーナー自身でも可能ですが、屋根修理・外壁補修・耐震補強・水回り交換といった大規模改修は専門業者に依頼します。火災警報器の設置も義務化されており、寝室や階段など自治体が定めた場所に設置し、作動確認を行いましょう(※罰則はなし)。

 

最後に、ハウスクリーニングで室内外を清潔に整えることで、入居希望者の印象も大きく向上します。

 

必要書類の整理

空き家を貸し出す際には、書類の整理も重要です。まず、物件の権利関係を示す登記事項証明書や公図を最新の状態で用意し、土地境界や所有権を明確にします。建築確認済証や検査済証、設計図書が残っていれば、建物の安全性や構造説明に役立つため揃えておきましょう。

 

▼ 賃貸運用で準備しておくべき書類

書類名 内容・用途
 オーナー本人の身分証明書  賃貸契約時の本人確認に必要(運転免許証・マイナンバーカード等)
 登記事項証明書  所有者確認・土地建物の権利関係を示す基本書類
 公図・建物図面  土地境界・建物概要の確認に使用
 建築確認済証・検査済証  建物の安全性・適法性の説明に利用
 修繕履歴・保証書(シロアリ防除・リフォーム明細など)  建物状態の説明資料として有用
 媒介契約書(任意)  仲介・管理を不動産会社へ依頼する場合に必要

▼ 空き家バンク登録に必要な一般書類

書類名 内容・用途
 空き家バンク登録申込書  各自治体が指定する申込書。登録には必須
 登記事項証明書  所有者であることの証明
 固定資産税・都市計画税納税通知書  課税情報の確認に利用
 本人確認書類  オーナーの本人確認(免許証・マイナンバーカード等)
 物件写真・間取り図  公開情報として必要。オンライン掲載にも使用

自治体により必要書類が異なるため、登録前に案内を確認しましょう。

 

貸せない物件の法的条件(用途地域・接道など)

空き家の中には法令上、賃貸として貸し出すことが難しいケースもあります。まず確認すべきは 用途地域 です。一般的な住宅地であれば問題ありませんが、工業専用地域など居住が想定されない地域では住宅として貸せない場合があります。

 

次に重要なのが 接道義務(建築基準法) です。幅4m以上の道路に2m以上接していない土地は、建替えができない「再建築不可物件」となります。再建築不可でも居住自体は可能ですが、賃貸契約の重要事項説明で必ず告知する義務があり、隠して貸すことはできません。

 

旧耐震基準(1981年5月以前)や違法増築がある物件も、安全性の観点から賃貸運用が難しい場合があります。これらの条件を満たしているかどうかは、自治体の建築指導課や不動産会社へ相談することをおすすめします。

 

また、2025年4月から建築基準法の4号特例が縮小され、建築確認審査の対象が広がります。古い空き家では、今後の法改正によって不適格となる可能性があるため、賃貸前に専門家へ相談しておくと安心です。

 

心理的瑕疵(事故物件など)がある場合は、原則3年間は告知が必要とされています。ただし、事件性や社会的影響が大きい場合は、3年を超えても告知が求められることがあります。

 

空き家を貸す手順|家賃相場の決め方・募集方法・契約まで完全ガイド

空き家を賃貸に出す具体的な手順を、家賃設定から入居者募集、契約締結まで順を追って解説します。

 

一般的な流れは
①家賃相場のリサーチ・設定 → ②入居者募集(個人募集または仲介依頼) → ③賃貸契約の締結
というステップです。各段階のポイントを押さえて、効率よく進めていきましょう。

家賃相場の調べ方

まずは、空き家を貸すうえで最も重要な「家賃設定」から始めます。家賃は立地・築年数・広さによって大きく変わるため、周辺の相場を調べることが不可欠です。

調べ方の基本は以下の通りです。

〈家賃設定の具体的な手順〉

    1. 不動産ポータルサイトで近隣の類似物件を検索

    1. 立地・築年数・間取りが近い物件を5〜10件比較

    1. 地元の不動産会社2〜3社に賃料査定を依頼(無料が多い)

    1. 自物件の強み(駐車場・庭つき・日当たり)と弱み(築古・駅遠)を踏まえて調整

    1. 「早期に借り手がつく価格」に設定する

総務省の「住宅・土地統計調査(令和5年)」では都道府県別の平均家賃も確認できます。(*4)例えば、東京都87,126円、神奈川県70,922円など、地域で大きな差があります。ただし実務ではより細かなエリアや築年数の違いが大きく影響するため、統計値は「大まかな参考値」として捉える必要があります。

 

付加価値がある物件は相場より高め、反対に築古など弱点がある場合は相場より低めに設定することがポイントです。

 

入居者募集の方法(個人募集/不動産会社)

家賃を決めたら、次は入居者募集です。募集方法は「個人募集」「不動産会社への仲介依頼」空き家バンクの活用」の3つがあります。

個人募集を利用する

SNSや知人紹介、オーナーが直接掲載できるサイトを利用する方法です。ただし、

    • 問い合わせ対応

    • 内見調整

    • 契約書の作成

    • トラブル対応

などをすべて自分で行う必要があるため、経験がないとトラブルにつながりやすい点に注意が必要です。特に宅地建物取引士による「重要事項説明」がないため、契約内容が不十分となり、後々の紛争リスクも高まります。

 

不動産会社に依頼する

広告、問い合わせ対応、内見、契約書作成までプロが代行します。業者間ネットワークに情報を掲載できるため、個人募集より圧倒的に多くの借り手へアプローチ可能です。

仲介手数料は賃料0.5〜1ヶ月分+消費税が相場(宅建業法で上限が規定)となっており、依頼者の承諾があれば「1ヶ月分+消費税」まで受領できます。

 

空き家バンクを活用する

自治体が運営する空き家バンクに登録すれば、「地方移住希望者」や「古民家を探している層」などにアプローチできます。登録には書類が必要ですが、費用は無料〜低額の場合が多く、空き家活用では近年特に利用が増えています。

 

普通借家・定期借家の契約形態の違い

借り手が決まったら、最後は賃貸借契約の締結です。契約形態は「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。

 

普通借家契約

もっとも一般的な契約で、通常は2年契約・更新可能です。借主が希望すれば基本的に更新できるため借主保護が強く、オーナー側は正当な理由がない限り解約ができません。

長期間貸したい場合には適していますが、「将来自分で住む予定がある」「相続後に利用するか未定」などの場合には不向きになることもあります。

 

定期借家契約

契約期間の満了で確実に終了する契約方式です。オーナーは期間満了後に確実に物件を返してもらえるため、

    • 将来自分で住む可能性がある

    • 相続人との共有物件で将来の利用が未確定

    • 一時的に貸したい

などのケースに適しています。

 

重要:終了通知義務
期間が1年以上の定期借家契約では、1年前〜6ヶ月前までの間に借主へ終了通知をする義務があります(借地借家法38条6項)。これを怠ると契約終了が認められない場合があります。

 

また、定期借家は借主に不利な契約となるため、一般的に家賃が通常より少し安めに設定される傾向があり(目安:一戸建てで約2.2%減/アットホーム調査)、契約締結時には書面で内容を明確に説明する必要があります。

 

さらに、定期借家は更新がなくても、双方の合意があれば新しい契約として「再契約」を結ぶことも可能です。

 

空き家賃貸でありがちな失敗事例|トラブル・赤字パターンと原因

空き家を賃貸する際によく見られる失敗事例にも目を向けておきましょう。

 

ここでは、オーナーが陥りがちなトラブルとして「入居者トラブル」「修繕費の想定ミス」「管理方式の選択ミス」の3つを取り上げ、その原因を解説します。事前に失敗パターンを知っておくことで、対策を講じて成功率を高めることができます。

 

入居者トラブル(滞納・設備)

賃貸経営において、入居者とのトラブルは代表的な失敗パターンです。なかでも深刻なのが家賃滞納です。入居審査を甘くしてしまい、支払い能力に不安のある借主と契約してしまうと、滞納が長期化し回収不能になるリスクがあります。

 

日本では、家賃滞納があってもすぐに強制退去させることはできず、内容証明での督促・契約解除通知・明け渡し訴訟・強制執行というプロセスを踏む必要があります。状況にもよりますが、滞納発生から明け渡し完了まで半年〜1年前後かかることもあり、その間の家賃はほぼ回収できません。

 

対策としては、

    • 安定した収入・勤務先の有無などを確認する入居審査の徹底

    • 保証会社の利用(初回保証料:総家賃の約50%前後/月額保証料:総家賃の1〜2%/更新料:年1万円程度が目安)

    • 連帯保証人の確保

などが重要です。保証会社を利用することで、滞納時でも一定の家賃回収が期待でき、オーナーのリスクを大幅に軽減できます。

 

さらに、ペット禁止物件での無断飼育や、ゴミ出しルール違反・騒音トラブルなど、入居者マナー起因のトラブルも発生し得ます。入居時に「禁止事項・ルール」を書面で明示し、署名をもらうこと、管理会社に委託している場合は24時間対応やクレーム対応の体制を事前に確認しておくことが重要です。

 

修繕費の想定ミス

また、設備トラブルも空き家賃貸で起こりやすい問題です。築古の空き家では、入居後に給湯器の故障や水漏れ、エアコン不調などが発覚するケースが多く、修理費用は基本的にオーナー負担となります。設備トラブルが続けばクレームから早期退去につながることもあります。

 

これを防ぐには、契約前に設備の点検を行い、不具合があれば事前に交換・修理しておくことが大切です。

設備 寿命の目安 注意ポイント
 給湯器  10〜15年  寿命が近いと故障しやすく、入居後のトラブル原因になりやすい
 エアコン  10〜13年  古い型は電気代も高く、早期交換で入居者満足度が向上
 給排水管  築30年以上は要注意  漏水・錆詰まりリスクが高く、事前点検・部分交換が推奨

空き家賃貸で知っておきたい最新制度・補助金|2025年版

近年、空き家活用を支援する制度が次々と整備されています。最後に、2025年時点で知っておきたい主な制度や補助金を紹介します。補助金は年度ごとに条件が変わるため、最新情報を確認しながら活用しましょう。

 

空き家活用関連の補助金

国や自治体では、空き家の解体や改修を支援する補助制度を実施しています。2025年度の京都市の制度を例にすると(*5)、

 

    • 解体費用の1/3補助(上限60万円)

    • 三世代同居・近居のためのリフォーム補助:最大60万円〜90万円

など、従来と比べて内容が変わっています(※「改修費2/3補助」の制度ではなくなっています)。その他多くの自治体でも、

    • 老朽空き家の除却費補助(上限20万〜100万円と自治体により幅あり)

    • 空き家改修リフォーム補助
      などが整備されています。

さらに、2025年度の国の重点補助制度は以下の通りです。

 

国の主要な補助金(2025年度)

① 長期優良住宅化リフォーム推進事業(国土交通省)

項目 内容
 補助区分(評価基準型)  最大80万円/戸(条件により最大130万円)
 補助区分(認定長期優良住宅型)  最大160万円/戸(条件により最大210万円)
 補助率  工事費の 1/3
 対象工事  耐震改修、省エネ化、劣化対策などの性能向上工事
 申請期間  2025年3月31日〜12月31日 ※予算枠に達し次第終了

② 住宅省エネ2025キャンペーン(国交省/経産省/環境省)

 先進的窓リノベ2025  最大 200万円/戸
 子育てエコホーム支援事業  最大 60万円/戸
 給湯省エネ2025  高効率給湯器の導入に 最大21万円/台
 給湯省エネ賃貸セット(賃貸向け)  制度継続

これらは併用できるケースもあり、空き家のリフォーム費用を大幅に圧縮できる場合があります。

補助金は、

    • 着工前申請が必要

    • 予算枠に達すると早期終了

    • 国と自治体の併用ができない場合もある

などの注意点があるため、事前の制度確認が重要です。

自治体の支援制度

補助金以外にも、自治体が独自に用意している支援制度があります。代表的なのが空き家バンクです。空き家情報を自治体が登録・公開し、移住希望者や地元の借り手に紹介する仕組みで、

    • 仲介手数料の補助

    • 移住者向け家賃補助

    • リフォーム補助の併用可能

といった特典を用意している自治体もあります。さらに、自治体によっては、

    • 建築士・宅建士による専門家無料相談

    • NPOと連携した空き家管理サービス

    • 見回りサービスの費用補助

などを実施しており、所有者の負担軽減に役立ちます。

 

空家等管理活用支援法人の指定が進行中(2023改正法)

2023年12月の改正空家法に基づき、自治体が管理・活用を支援する「空家等管理活用支援法人」を指定する制度がスタートしました。

自治体(都道府県) 指定された団体・企業
 藤枝市(静岡県)  2024年11月 民間企業(県内初の指定)
 調布市(東京都)  NPO法人 空家・空地管理センター など
 堺市(大阪府)  不動産コンサル団体

など、全国で指定が広がっています。

支援法人は、空き家の点検・管理、相談対応、利活用提案、マッチング支援などを行ってくれるため、遠方の空き家所有者には特に有用です。

 

空き家対策特措法の最新動向

2015年に施行された空き家対策特別措置法は2023年に改正され、空き家対策がさらに強化されました。(*1)

 

今回新たに導入されたのが 「管理不全空家」 の区分です。これは、放置すれば「特定空家」になり得ると判断される段階の空き家で、市町村が指導・勧告できる仕組みです。

 

「管理不全空家」、「特定空家」のいずれに該当しても、固定資産税の住宅用地特例(1/6軽減)が除外される可能性があり、税負担が大幅に増える恐れがあります。

 

一方で、改正法では市町村が空き家活用促進区域を定める制度も創設され、区域内では規制緩和により老朽空き家を活用しやすくする動きもあります。例えば、兵庫県赤穂市では建築制限が緩和され、店舗・宿泊施設への転用も可能となる区域が指定されています。

 

こうした「罰則強化」と「活用支援」の両面を理解し、空き家所有者は適切な管理と活用を心がける必要があります。

 

空き家を個人で貸す際のよくある質問(FAQ)

築何十年も経つ古い空き家でも貸せるものでしょうか?

 

回答:貸すことは可能ですが、「安全性」と「ニーズに合うか」が重要です。

 

古さそのものは賃貸不可の理由にはなりません。実際、昭和期に建てられた古民家や団地住戸など、築50年以上の住宅でも貸し出されている例は多数あります。なお、一般社団法人古民家再生協会の定義では、「伝統構法で建築された築50年以上の建物」を古民家とするとされています。

 

ただし、古い物件では以下の点を特に重視する必要があります。

 

まず安全性の確認(必須)

古い建物で最も重要なのは耐震性です。1981年(昭和56年)以前の建物は旧耐震基準のため、耐震診断を推奨します。

    • 耐震診断費用:5〜30万円(木造)

    • 耐震補強工事:50〜300万円程度

これらは補助金の対象になる場合もあります。

 

リフォーム・設備更新

古い物件は水回り・内装の老朽化が多いため、生活に支障が出ない状態に整える必要があります。

 

また近年は、古い物件を「DIY型賃貸」として貸し出すケースも増えています。入居者が自分の好みで内装を改修できる契約で、「オーナーはリフォーム費を抑えられる」、「入居者は自由な住空間を作れる」というメリットがあります。

 

古民家賃貸の需要が増加中

若い世代や外国人居住者に「古民家のデザインや雰囲気」が人気となっており、リモートワーク普及を背景に地方移住とセットで需要が高まっています。

 

自宅から遠く離れた空き家を貸す場合、どのように管理すれば良いでしょうか?

回答:遠方物件は“自主管理”よりも“専門家に任せる”のが基本です。

① 不動産管理会社へ委託(最も現実的)

    • 管理委託料:家賃の5〜10%が相場
      例)家賃5万円 → 管理料2,500〜5,000円

    • 入居者対応、設備トラブル、退去立会いなどを代行

    • 緊急時も迅速に対応してもらえる

② 空き家管理サービスを併用

賃貸前の管理や長期空室時に便利です。

    • 料金:月5,000〜15,000円程度

    • 月1回訪問なら8,000〜10,000円前後

    • 通風・通水、ポスト整理、簡易清掃、写真報告などが含まれる

③ サブリース(一括借上げ)

管理負担ゼロだが賃料は低め。条件によっては賃料減額や中途解約が発生するため、契約条項の確認が必須です。

 

空き家を貸すより売った方が得な場合もありますか?

回答:あります。以下の条件に該当する場合、売却が合理的な選択となります。

売却した方が得な具体例

判断基準 内容
 修繕費が高額になる場合  リフォーム後に賃貸しても回収が困難なほど老朽化が進んでいるケース
 空室リスクが高い立地  過疎地など需要が乏しく、長期空室となる可能性が高い物件
 再建築不可・法的制約がある物件  賃貸需要が低く、将来的な資産価値も伸びにくい
 管理の手間を避けたい場合  遠方で管理負担が大きい・トラブル対応が難しいなど

将来住む可能性がある場合は?

賃貸ではなく、定期借家契約で一時的に貸すという選択もあります。期間満了で確実に退去してもらえるため、将来利用する予定がある場合に向いています。

 

売却を選ぶ場合に使える制度

空き家売却時に活用できる代表的な税制優遇は以下の通り:

    • 相続空き家の3,000万円特別控除(2027年まで)
      「相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却するなどの一定要件を満たせば適用可能です。

賃貸化が難しい物件では、この控除を使った売却が財務的に最も有利となるケースがあります。

 

まとめ|空き家を個人で貸す前に押さえるべき重要ポイント

空き家を放置すると老朽化や防犯面の問題に加え、改正空家法により「管理不全空家」に指定されて固定資産税が増額されるリスクもあります。

 

こうした負担を避けつつ資産を活用する方法として、賃貸化は有力な選択肢です。家賃収入が得られるだけでなく、管理状態が保たれ空き家の劣化防止にもつながります。

 

ただし、築年数が古い物件は耐震性や水回り設備の確認、必要な修繕費の把握が不可欠です。事前に住宅診断を行い、費用対効果を踏まえて賃貸化できるか判断しましょう。

 

立地条件や需要が乏しい物件では、賃貸より売却が有利な場合もあります。相続空き家の3,000万円控除など、売却時に使える制度も活用できます。

 

また、補助金・空き家バンク・専門家相談など、自治体や国の支援策を上手に利用することで、空き家活用のハードルは大きく下がります

 

空き家の状態や将来の利用予定に応じて、最適な方法を選択することが大切です。

 

引用元:
*1 全日本不動産協:「空家措置法の改正法が施行|変更点や対応を解説
*2 法務省:「相続登記の申請義務化に関する概要資料
*3 国土交通省:「令和元年空き家所有者実態調査 報告書
*4 総務省統計局:「令和5年住宅・土地統計調査
*5 京都市:「空き家等の活用・流通補助金 要綱

執筆者

執筆者

高橋 雄太

クールコネクト(株)

取締役

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群馬県前橋市出身。大手投資用マンション販売会社の営業・管理を経て、2025年にクールコネクト株式会社取締役COOに就任。「稼働中物件ナビ」の運営・コラム監修も担当。現場経験をもとに、不動産投資の収益性・リスク・物件選びに役立つ実務的な情報を発信している。

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