不動産投資と節税の関係とは?

不動産投資は「節税に強い」とよく言われます。その理由は、不動産による収入(不動産所得)には減価償却費や各種費用を計上でき、場合によっては帳簿上赤字(損失)にできる点にあります。
赤字が出れば、その分だけ他の所得(給与所得など)と相殺して所得全体を減らすことが可能です(損益通算)。結果として所得税・住民税の負担を軽減できるため、高所得者ほど節税効果を実感しやすい仕組みです。
また、不動産投資は現金預金や株式投資と比較して節税効果が得られやすいとされています。例えば、銀行預金や株式の配当金・売却益には基本的に決められた税率が課税され、損失が出ても給与所得と相殺することはできません。
しかし、不動産所得の損失は確定申告で他の所得から差し引くことが認められており(*1)、給与所得があるサラリーマンが不動産賃貸で出た損失を給与とぶつけて税金を減らすことが可能です。このように、他の資産運用と比べて節税に直結しやすい点が不動産投資の大きな特徴と言えます。
なぜ不動産投資は節税に強いと言われるのか
不動産投資が節税に有利と言われるのは、課税上の優遇点が多いためです。
まず、不動産所得を計算する際には家賃収入から様々な経費を差し引けます。特に減価償却費は実際の支出を伴わない経費であり、その分だけ所得を圧縮できます。不動産の建物部分は購入代金を法定耐用年数にわたり費用配分する減価償却が適用され、毎年一定額を必要経費にできます(*3)。
さらに、不動産所得で生じた赤字は他の黒字の所得と相殺できる(損益通算)制度があります(*1)。例えば、物件の減価償却費やローン利息、修繕費などを差し引いて不動産所得が赤字になった場合、給与所得などからその赤字分を差し引いて課税所得を減らせます。
この損益通算により所得税・住民税の大幅な軽減が可能になるため、高収入の人ほど節税額が大きくなる傾向があります。特に年間所得が900万円を超える高所得者層では税率が急上昇する(課税所得900万円超で所得税率33%、住民税と合わせ実質約43%)(*2)ため、不動産の損失をぶつける節税効果が顕著です。
現金・株式との比較でわかる節税効果
現金預金や株式投資と比較すると、不動産投資の節税メリットがより明確になります。
現金預金の場合、利息収入には20.315%(復興税含む)の源泉分離課税が課されるだけで、元本に対する税優遇は特にありません。株式投資の場合も、株の売却益や配当には約20%の分離課税がかかり、仮に株式で損失が出ても他の所得と通算することは原則できません(株式の譲渡損失は翌年以降の株式譲渡益としか相殺できない)※。つまり、預金や株式の損失は給与所得などとは関係なく、税金の還付にはつながりにくいのです。
一方、不動産投資では経費計上や損益通算により課税所得自体を減らすことができます。たとえば年収800万円の会社員が節税策なしで支払う所得税・住民税はかなりの額ですが、不動産賃貸で200万円の赤字を計上すれば課税所得を600万円まで圧縮でき、その分の税金が軽減されます。株式で200万円の損失が出ても給与とは相殺できないのに対し、不動産なら給与所得と合算する総合課税の範囲で損失を活用できるわけです。
実際、課税所得が900万円を超える高額納税者ほど不動産による節税効果が期待できるとされています。
(※株式等の譲渡損失は同一年の他の株式譲渡益との相殺や翌年以降3年間の繰越控除は可能ですが、給与所得などとは通算できません。)
節税になる仕組みをわかりやすく解説

では、不動産投資で具体的にどのように節税が行われるのか、その仕組みを順を追って解説します。
不動産所得の計算上、家賃などの総収入からさまざまな必要経費を差し引くことができます。経費が多ければ所得が圧縮され、結果として税負担が軽くなります。特に減価償却や損益通算など、不動産投資特有の制度が節税に大きく寄与します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
減価償却で課税所得を圧縮
減価償却とは、不動産の建物や設備など耐久消費財の取得費用を法定耐用年数にわたり少しずつ費用配分していく会計処理です。不動産投資では建物部分の購入費用を毎年減価償却費として経費計上できます。
減価償却費は実際にお金が出て行く支出ではないため、その分だけ所得を減らしても手元資金は減りません。この「支出を伴わない経費」の効果で課税所得を圧縮でき、結果として所得税や住民税を軽減できます。
例えば、5,000万円の建物を購入し耐用年数が25年の場合、毎年200万円ずつ減価償却費を計上できます。仮に家賃収入と他の経費差引後の利益が200万円だったとしても、同額の減価償却費を計上すれば帳簿上の不動産所得はゼロになり、所得税・住民税を大幅に抑えられます。減価償却費のおかげで「利益が出ていても税金上は利益がない状態」にできるのがポイントです。
なお、減価償却費として計上できる金額は法定耐用年数と取得価額によって決まります。建物の法定耐用年数は構造や用途によって定められており、例えば木造住宅は22年、鉄筋コンクリート造マンションは47年などとなっています。取得した建物は基本的に定額法で耐用年数にわたり償却します(平成28年度以降、建物の減価償却方法は定額法に一本化)。耐用年数が過ぎた中古建物でも所定の算式で新たな償却期間を算出し経費化できます。
経費として計上できる費目一覧
不動産投資では収入を得るために必要な支出は幅広く経費(必要経費)として認められます。不動産所得の計算上、以下のような費目が経費計上可能です
| 経費項目 | 概要 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 物件にかかる毎年の公租公課は経費算入可 |
| 火災保険料・地震保険料 | 賃貸物件の損害保険料も全額経費 |
| 減価償却費 | 建物・設備購入費用を耐用年数で按分した額 |
| 借入金利息 | ローン利息を経費化(※土地取得利子は通算対象外) |
| 管理費・管理委託料 | 共用部維持費や管理会社への手数料 |
| 修繕費 | 原状回復・設備修理など(大規模改築は資本的支出) |
| 広告宣伝費 | 入居者募集の広告費や仲介業者への広告料 |
| 交通費 | 物件管理・巡回・入居者対応のための実費交通費 |
| 租税公課等 | 登録免許税・不動産取得税・契約印紙代など |
| 専門家報酬 | 司法書士手数料・税理士報酬など専門家への依頼費 |
このように、不動産収入を得るため直接必要な費用であれば幅広く経費にできるのが特徴です。結果として課税対象となる不動産所得(収入-経費)を小さくでき、節税につながります。
赤字でも節税できる『損益通算』とは?
損益通算とは、ある所得の赤字(損失)を他の種類の所得の黒字と相殺できる制度です。不動産投資において収入より経費が多く赤字が生じた場合、その損失額を給与所得や事業所得など他の所得から差し引くことが認められています(*1)。これにより結果的に課税所得を減らし、所得税・住民税の負担を軽減することができます。
例えば、給与所得が800万円ある人が不動産賃貸で年間100万円の赤字を計上した場合、確定申告で給与800万円と不動産▲100万円を通算して課税所得700万円とすることができます。その分、本来払うはずだった税金が戻ってくる(もしくは源泉徴収で引かれる住民税が翌年度減額される)ため、赤字でも実質的に節税になるわけです。
ただし、損益通算が認められないケースもあります。代表的なのは、別荘など趣味的な不動産の貸付による損失や、土地取得のための借入利息に相当する損失です。これらは税法上、損益通算の対象から除外されています(不動産所得の赤字でも一部通算不可)。しかし通常の賃貸用不動産であれば、しっかり入居者募集をして運用する限り損益通算の恩恵を受けられます。
まとめると、不動産投資では「減価償却などで一時的に赤字を作り、その赤字を他の所得とぶつけて税金を減らす」という節税が可能なのです。この損益通算制度は給与収入が多い人ほど有効に働くため、特に高所得のサラリーマン大家にとって大きなメリットとなっています。
不動産投資で使える代表的な節税方法5選

不動産投資に関連する節税テクニックにはさまざまなものがありますが、ここでは代表的な5つの方法を紹介します。自身の状況に応じて使えるものを把握し、適切に組み合わせることで更なる税負担の軽減が期待できます。
減価償却費の活用
前述したとおり減価償却費は強力な節税手段です。建物の購入代金やリフォーム代は一度に経費にせず、耐用年数に沿って毎年費用配分します。これによって毎年の不動産所得を意図的に圧縮できるため、所得税・住民税の軽減効果が得られます。
特に節税を狙う場合、減価償却費を多く取れる物件を選ぶ戦略が考えられます。例えば、建物割合が高い物件ほど減価償却費は多く計上できます。また、中古で耐用年数が短い物件は年間償却額が大きくなるため節税効果が高まります。逆に、土地のみや建物でも耐用年数が長い新築は毎年の償却費が小さいため、節税インパクトは小さめです。
減価償却費の計算は税法で定められているため、自分で操作はできませんが、どのような物件を買うかで節税額に差が出ます。たとえば木造の中古アパート(耐用年数短め)を購入すれば、毎年多額の減価償却費を計上して他の所得と通算できます。一方、新築マンション(耐用年数長い)だと年間償却額は小さくなります。こうした違いを踏まえ、物件選びの段階から減価償却を意識するのも節税策の一つです。
修繕費・管理費の経費計上
不動産経営では修繕費や管理費も漏れなく経費計上して節税に役立てましょう。建物や設備の故障・劣化に対応する修繕費用は発生年度の必要経費になります(*3)。エアコンや給湯器の交換、壁紙や床の張替え、原状回復クリーニング費など、賃貸経営上必要な修繕は計画的に行い、支出した年に経費にします。
特に大規模修繕(外壁塗装や屋上防水、配管工事など)は数百万円単位になることもあり、実施した年は大きく所得を圧縮できます。ただし建物価値を高める増改築は資本的支出として減価償却になりますので、費用の性質に応じて正しく処理しましょう。
また、管理費・管理委託料も見逃せません。マンションなら管理組合に納める管理費・修繕積立金、戸建やアパートでも共用部分の維持費、清掃費などは経費です。管理会社に物件管理を委託している場合の手数料ももちろん必要経費になります。これらは賃貸経営上必ずかかるコストですから、その分課税所得が減り節税につながります。
青色申告による特別控除
個人で不動産賃貸を行っている方は青色申告を活用することで大きな節税メリットが得られます。青色申告とは所得税の申告方法の一つで、事前に申請して複式簿記による帳簿付けや決算書の作成を行うと、様々な特典が受けられる制度です。
最大の特典は青色申告特別控除で、一定の要件を満たせば所得から最大65万円を控除できます(*4)(電子申告または電子帳簿保存を行う場合。それ以外でも最大55万円控除、簡易帳簿でも10万円控除)。例えば不動産所得が100万円の人が青色申告で65万円控除を受ければ、実質所得35万円となり税負担が大幅に下がります。
さらに青色申告には赤字の繰越控除(3年間)や、青色事業専従者給与(家族に支払う給与を経費算入)などのメリットもあります。特に規模の大きい大家さんや副業で本業収入がある方には青色申告は必須と言えるでしょう。
青色申告をするには開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出し、日々の取引を正規の簿記で記録するなどの要件がありますが、専門家に依頼すれば難しくありません。手間をかけても節税メリットが大きいので、不動産オーナーであれば積極的に青色申告を検討しましょう。
法人化による節税
不動産所得が大きくなってきた場合、法人化(会社設立)は有効な節税手段の一つです。個人の所得税は累進課税で最高税率45%(住民税を含めると最大55%)に達しますが、法人税率は原則一律23.2%です。さらに、中小企業者等については所得年800万円以下の部分に15%が適用される特例があり、この特例は2027年3月31日まで2年間延長されています(*6)。そのため、高い税率が適用される個人所有よりも、法人として物件を保有したほうがトータルの税負担を抑えられるケースがあります。
↓
課税所得 ≦ 900 万円
● 法人設立コスト > 節税効果 → 個人のままが無難
↑ / ↓
課税所得 > 900 万円
● 法人課税:税率 約23%
▶ 法人化で約20ポイントの節税余地
但し、設立・会計・申告コストを要確認
法人化の節税効果としては、他にも所得分散や経費範囲の拡大があります。法人にすると自分自身に役員報酬という形で給与を払い、家族を役員や従業員として給与を支給することで、所得を家族に分散できます。また、法人の方が経費として認められる範囲が広い傾向があります。例えば個人事業では難しい自分自身の給与(役員報酬)や社会保険料の法人負担、交際費の一定額控除など、法人税の計算上有利な点もあります。
ただし法人化にはコストも伴うため、具体的には「課税所得が900万円を超え税率が33%(住民税含め43%)になる層」で検討するのが目安とされています。
相続税対策としての不動産活用
不動産投資は相続税・贈与税の節税にも有効です。現金で資産を持っているより、不動産に替えておいた方が評価額(課税評価額)が低くなる特性があります。
相続税評価額は一般に時価の約80%程度が目安と言われ、土地や建物は現金より低い価値で評価されます。さらに、賃貸物件の場合は貸家・貸家建付地として評価額が大きく減額されます。
| 項目 | 更地で保有 | 賃貸アパートを建てて保有 |
|---|---|---|
| 土地の評価 | 自用地評価(100%) | 貸家建付地評価 自用地評価 − (借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合) ⇒ 約20〜30%評価減 |
| 建物の評価 | 該当なし | 貸家評価 固定資産税評価額 − 借家権割合(30%) ⇒ 30%評価減 |
| 借入金の効果 | なし | 取得ローン残高は債務控除 ⇒ 課税資産をさらに圧縮 |
| トータル節税効果 | 評価減なし | 土地・建物・債務控除の 三重効果で現金保有より有利 |
※ 行き過ぎた節税スキームは否認リスクもあるため、正当な範囲での活用が前提です。
節税目的の不動産投資で本当に得をする人の特徴
不動産投資による節税効果が高いのは、主に以下のようなケースです。当てはまる方ほど、不動産投資を活用した税負担軽減のメリットが大きいでしょう。
高所得者層(年収800万円以上)
年収や所得の多い高所得者ほど、不動産投資の節税メリットが際立ちます。理由はシンプルで、累進課税による税率が高いためです。年収800万円以上(課税所得で約695万円超)になると所得税率23%〜33%、住民税と合わせた実効税率は30%超〜40%超にもなります。この層が不動産の減価償却や損益通算で所得を圧縮すれば、その圧縮額に30〜40%もの税率が掛かっていたはずの税金をセーブできるわけです。
特に年収1,000〜1,200万円前後(課税所得900万円超)の人は節税効果が大きいとされています。課税所得900万円を超えると所得税率が33%に跳ね上がり住民税と合わせ約43%になります。例えば年間100万円の不動産損失を出せば、その43万円分の税金が浮く計算です。
逆に年収500万円程度(課税所得300万円台)の方だと税率20%前後なので、同じ100万円の損失でも節税額は20万円程度に留まります。こうした差から、「不動産投資の節税は高額納税者ほど効果が大きい」と言われるのです。
ただし注意点として、税金が減ること自体に喜んで本業収入以上の赤字を出してしまっては本末転倒です。あくまで不動産収支はできるだけプラスかトントンに近づけ、その中で帳簿上の利益を減らして節税するのが理想です。高所得の人ほど節税額は大きいですが、同時に不動産投資自体の収支もしっかりシミュレーションした上で臨むことが大切でしょう。
不動産投資を長期で考えている人
長期的視野で不動産投資に取り組む人も、結果的に節税メリットを享受しやすいです。減価償却や損益通算による節税は、物件を保有し続ける期間中に得られるメリットであり、長く運用するほどその恩恵が積み重なります。
例えば築古アパートを購入して減価償却4年間で大きく節税した場合でも、その物件を短期で売却すると今度は譲渡益に対して税金(しかも5年未満なら約39%の短期譲渡税)がかかります。せっかく所得税を減らしても、短期売却で譲渡所得税を多額に納めてはトータルで損得ゼロかマイナスになりかねません。
一方、長期保有を前提にしていれば、減価償却費で圧縮できる所得税の節税効果をフルに享受できますし、物件売却時も5年以上経てば税率約20%の長期譲渡所得扱いとなり税負担を抑えられます。
また長期運用者は青色申告の損失繰越控除(最大3年)なども活用しやすいです。例えば初年度に大規模修繕で赤字を出しても、3年以内にその赤字を将来の黒字と相殺できます。長期で見れば節税効果を余すことなく活かせるでしょう。
中古物件の方が節税しやすいって本当?

不動産投資の経験者の間で「節税目的なら中古物件が良い」と言われることがあります。結論から言えば、中古物件の方が減価償却費を多く取れるケースが多いため、節税しやすい側面があるのは事実です。
ただし中古物件特有のリスクや注意点もあります。ここでは中古(築古)物件の節税上のメリットと、そのメリットを享受するためのポイントを解説します。
中古物件は耐用年数が短く減価償却しやすい
中古物件の最大の利点は、法定耐用年数が短いため減価償却期間が短縮され、年間の償却費を大きく計上できることです。税法では中古取得資産の耐用年数は次の算式で求められます。
-
- 法定耐用年数の一部を経過した資産
残存耐用年数=「法定耐用年数-経過年数」+「経過年数×20%」
- 法定耐用年数の一部を経過した資産
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- 法定耐用年数を全部経過した資産
耐用年数=「法定耐用年数の20%」※端数切捨て、2年未満は2年
- 法定耐用年数を全部経過した資産
例えば法定耐用年数47年のRC造マンションの場合、築15年なら残存耐用年数35年、築36年なら18年、築42年なら13年となります(*5)。築42年(法定耐用年数超過)の場合、新築時なら47年かけて償却するものを13年で償却できる計算です。
ことを意味し、その分所得を圧縮できる金額が大きくなります。したがって中古の築古物件ほど「効率よく減価償却費を計上して不動産所得を抑えたい人向き」と言えるのです。
ただし、減価償却期間が短いということは償却が終わるのも早いことを意味します。4年や5年で償却が終わってしまうと、その後は減価償却費という節税手段がなくなります。
また、後述するように中古物件は維持費や空室リスクも高まりがちです。従って、中古物件で早期に節税メリットを得つつ、その間に繰越控除なども視野に入れて計画を立てることが重要になります。
築古物件投資のメリットと注意点
築古物件には節税以外にもメリットがいくつかあります。
| メリット | 説明 |
|---|---|
| 初期投資を抑えやすい | 物件価格が安いため、自己資金が少なくても購入しやすい。 |
| 高い表面利回り | 価格が安いわりに家賃水準は維持されることが多く、利回り=家賃収入 ÷ 物件価格 が高くなる。 |
| キャッシュフローが出やすい | 高利回りにより手残りが大きく、赤字を出さずに 節税メリット(減価償却)を享受しやすい。 |
一方、築古物件には当然デメリットやリスクもあります。
| デメリット / リスク | 説明 |
|---|---|
| 修繕費用の増大 | 築年が進むほど設備・構造の老朽化が進行。 国交省資料では築25年超の2回目・3回目の大規模修繕は 初回の倍以上の費用例も。 ⇒ 事前の建物調査と十分な修繕積立が必須。 |
| 空室リスクの増大 | 見た目・設備の古さで競争力が低下し入居付けに時間がかかる。 旧耐震(1981年以前)物件は耐震性の不安で敬遠される傾向も。 ⇒ 立地・管理状態の見極めと リフォーム・耐震補強の検討が必要。 |
総合的に、築古物件は「節税メリットは大きいが、維持管理に手間と費用がかかりやすい」と言えます。上手く運用すれば高利回りと節税の両取りも可能ですが、十分な自己資金とリスク管理が求められます。空室が埋まらず赤字ばかりでは節税以前に投資として失敗してしまうため、立地選びや物件の事前調査など慎重に行いましょう。
法人化するとさらに節税できる?個人との違いとは

不動産投資を続けて物件や収入が増えてくると、法人化の話題が出てきます。法人化には確かに節税上のメリットがありますが、一方でデメリットや手間もあります。ここでは個人と法人で税制上どう違うのか、どんな人が法人化すべきかを解説します。
法人税と所得税の節税比較
最大の違いは税率構造です。個人の所得税は累進課税で所得が増えるほど最大45%(住民税含まず)まで税率が上がります。
一方、法人税は法人の種類や所得額によりますが、中小法人であれば所得800万円以下15%、超過部分23.2%に固定されています(*6)。大法人でも概ね23.2%の実効税率です。つまり、個人は最高55%(所得税45%+住民税10%)なのに対し、法人は最大でも約30%前後に収まるのです。
この差は大きく、特に個人所得が高い人ほど法人化した方がトータル税率が下がります。
例えば個人で課税所得1,000万円(税率33%+住民税10%=43%)の大家さんの場合、法人にしてその利益を法人税で納めれば23%程度で済みます。仮に利益が同じでも税率が半分近くになる計算です。個人の所得が900万円を超え33%税率ゾーンに入ったら、法人化を検討するタイミングとも言われます。
もっとも、法人化すれば全てが得になる訳ではありません。法人には毎年法人住民税の均等割(最低でも7万円程度)がかかり、税理士等への顧問料や決算書作成コストも発生します。
所得が小さいうちはそうしたコストで節税分が相殺されてしまう可能性もあります。一般に「所得規模が大きくないと法人化のメリットは薄い」とされるのはこのためです。
所得分散・役員報酬の活用
法人化のメリットとして、所得分散と経費範囲の拡大も見逃せません。個人で不動産収入を得ている場合、自分の所得が増えるだけですが、法人にすると利益を給与として自分や家族に振り分けることができます。
例えば家族を役員や従業員にして適正な役員報酬・給与を支払えば、法人の利益を圧縮しつつ家族側に所得を移転できます。家族それぞれの所得が低ければ税率区分も低く、一家全体の税負担を減らすことが可能です(*6)。
さらに、法人では自分への支払も経費にできます。個人事業では自分自身の生活費は経費になりませんが、法人なら自分への給与(役員報酬)として会社の損金に算入できます。社会保険料も法人負担分は経費です。
その他、法人は原則全所得を一体で損益通算するため、例えば不動産事業と他の事業の利益・損失をまとめて相殺できます(個人だと所得区分ごとに通算制限があります)。欠損金の繰越控除期間も法人は最大10年と長く、個人(青色申告で3年)より優遇されています。
ただし法人化すると経理の透明性が高まり、プライベートな支出を経費にすることは難しくなる点には注意です。法人のお金と個人のお金は明確に区分し、法人カードや社用車の私用などは税務上否認される可能性があります。適切にやれば交際費等の範囲も広がりますが、ルールを守らないと逆にペナルティ(税務調査で否認・追徴課税)を受けるリスクもあるので、専門家の指導を仰ぐと良いでしょう。
節税だけを目的にした投資はNG!注意点とリスク

ここまで節税メリットに焦点を当ててきましたが、「節税のためだけ」に不動産投資をするのは危険でもあります。最後に、節税目的の投資で陥りがちな注意点・リスクを整理します。
節税よりも赤字が増えるケース
最も気を付けたいのは、節税額以上に赤字(実損)が膨らんでしまうケースです。例えば高所得者が節税を狙って都心のワンルームマンションを借金で購入し、減価償却で節税したとします。しかし家賃収入よりローン返済や管理費の方が多く、毎月キャッシュフローがマイナスになっていたらどうでしょうか。確かに所得税の還付はあるかもしれませんが、実際には家計から持ち出しが発生し続け、トータルでは「税金を減らすためにより大きなお金を失っている」状態になりかねません。
節税はあくまで利益に対する税負担を減らす行為であって、損失自体を利益に変える魔法ではありません。例えば100万円の損失を出して税金が30万円減ったとしても、差引70万円の実損が残ります。「税金が戻ってきたから得した」と錯覚し、残る損失部分を軽視してはいけないのです。特に利回りの低い物件や借入比率の高い投資では、このような傾向に陥りやすいので注意が必要です。
現に、安易に節税をうたった不動産営業で物件を購入した結果、家賃収入より支出超過となり、節税額以上の持ち出しに苦しむ例も見受けられます。節税は大事でも、最終的にはキャッシュフローがプラスであることが前提です。物件選びの段階で「節税額」だけでなく「実質的な収支(税引後キャッシュフロー)」をシミュレーションし、節税後も手元にお金が残る健全な投資計画を立てましょう。
脱税とみなされる行為に注意
節税と脱税は紙一重と言われますが、当然ながら違法な手段で税を免れる行為は厳禁です。具体的には、経費にならないプライベートな支出を経費と偽って申告したり、架空の経費計上・収入除外(いわゆる利益の簿外飛ばし)をしたりする行為です。これらは明確な脱税行為であり、税務調査で発覚すれば重加算税など厳しいペナルティが課されます。
不動産投資に関連してありがちなケースとして、自宅部分と賃貸部分の経費按分があります。例えば自宅兼賃貸の住宅で、自宅部分の光熱費やリフォーム費まで全額経費に入れてしまうのは不適切です。
また家族を従業員に仕立てて給与を払い経費化する場合も、実態以上の金額を支給すれば経費と認められません。過度な節税スキームは税務署に否認されれば一転リスクとなりますので、ルールの範囲内で行うことが重要です。
近年では海外不動産の減価償却による節税スキームなど、行き過ぎた手法には法改正でメスが入っています。税務当局も不自然な赤字申告には目を光らせており、大きな損失で節税しているケースは税務調査の対象になりやすいとも言われます。
正当な節税と租税回避・脱税の線引きは専門家でも難しい部分がありますので、「疑わしき行為はしない」のが鉄則です。心配な場合は税理士に相談し、適法かつ妥当な節税策を講じましょう。
売却時に課税される「譲渡所得」にも注意
不動産投資の節税では売却時の税金にも注意が必要です。減価償却で所得税を減らしていても、いざ物件を売却した際に譲渡所得税が発生することがあります。
譲渡所得とは売却額から購入額や諸経費、減価償却費累計額を差し引いた残りの利益に対して課税される所得です。特に長期間所有して減価償却を取り切った物件は要注意です。減価償却が進むと帳簿上の簿価(未償却残高)は低くなります。
例えば購入価額4,000万円・減価償却累計4,000万円なら帳簿価額1円というケースもあります。この状態で売却すると、売却価格のほとんど全てが譲渡所得となり、そこに税金がかかります。節税で先送りした分の税金が売却時に一気に来るイメージです。
ただし譲渡所得税の税率自体は所有期間5年超なら約20.315%、5年以下でも約39.63%です。高所得者の所得税率(最大55%)に比べれば低い水準です。そのため、「高い所得税を減らし低い譲渡税を払う」という観点では依然メリットがあるケースも多いです。
実際、短期間に減価償却費で所得税を大幅軽減し、物件売却益には20%課税される方がトータル節税になる場合があります。
重要なのは、売却時にも税金が発生することを織り込んで戦略を立てることです。短期譲渡になると税率約39%と高いため、購入後すぐ売ると節税分を相殺する税負担が出る恐れがあります。可能なら5年以上保有して長期譲渡(税率約20%)にしたり、売却年度に他の損失を当てて譲渡益を圧縮するなどの工夫も検討しましょう。
節税効果を最大限にするためのコツ
不動産投資の節税効果をフルに引き出すには、単に方法を知るだけでなく実践面での工夫も大切です。節税策は正しく使ってこそ意味がありますし、長期にわたってメリットを享受するには計画性が必要です。
信頼できる税理士・会計士と連携する
不動産投資家にとって税務のプロとの連携は非常に有益です。信頼できる税理士や会計士を顧問に付けることで、節税のアドバイスや適正な申告サポートを受けられます。
複数の物件を所有したり法人化する場合は特に、自分だけで税務を最適化するのは困難です。プロに任せれば、最新の税制に基づいた節税対策を提案してもらえますし、帳簿付けや申告のミスも防げます。
また、税理士がついていることで税務調査への対応も安心です。不明瞭な経費計上などがあると税務調査が入りやすいですが、日頃から専門家のチェックを受け適切に処理していれば問題ありません(大きな損失計上で節税している場合は調査が入りやすいため要注意)。
税理士は調査時の窓口にもなってくれるので、精神的負担も軽減されます。節税に関してもプロフェッショナルの力を借りることが最短・最大の効果を生むと言えるでしょう。
毎年の申告をきちんと管理する
節税効果を持続させるには、毎年の確定申告を適切に行うことが不可欠です。経費計上漏れや申告ミスがあると、本来受けられる節税メリットを逃してしまいます。日頃から領収書やレシートは整理・保管し、家事按分が必要なもの(自宅兼用の費用など)は合理的に振り分けて記録しておきましょう。
特に減価償却費の計算は年ごとに忘れず実施する必要があります。法定耐用年数内であれば毎年計上しなければなりませんし、未償却残がある限り計上可能です。
たとえ利益が出ていなくても減価償却費だけは必ず経費に算入しましょう(計上しなかった減価償却費は、将来譲渡時の取得費からも差し引かれるため二重損になります)。青色申告の場合、65万円控除を受けるための帳簿作成・提出期限も守らねばなりません(*4)。
こうした税務管理のルーチンをきちんとすることで、節税効果が最大化されます。逆に杜撰な管理をしていると、後で修正申告や追徴が発生し、せっかくの節税が無駄になる可能性もあります。毎年の決算・申告は手間ですが、ここをしっかりやることが長い目で見て大きな節税につながると心得てください。
物件購入前から節税戦略を立てる
最後に、物件購入前の段階から節税を織り込んだ戦略を立てておくことも重要です。どの物件をいくつ買うか、資金計画をどうするかによって、将来の税負担は大きく変わります。
購入前にシミュレーションを行い、「この物件を買ったら何年でどのくらい減価償却でき、どの程度税金が減るか」を試算してみましょう。複数物件を段階的に買い増す計画なら、青色申告や法人化のタイミングも含めて検討します。
例えば、最初は給与所得と損益通算して節税し、将来的に不動産所得自体が黒字化して税負担が出てくるなら、その時点で法人化して法人税率に切り替える、といった長期プランも考えられます。相続対策も視野に入れるなら、どのタイミングで贈与するか、物件を売却して現金に戻すかなど、税金面から見た最適解をシナリオとして描いておくと安心です。
もちろん不動産市況や法改正など不確定要素もありますが、少なくとも節税の仕組みを理解した上で事前に戦略を持つことが大切です。それによって物件選びの基準も変わってくるでしょう。賢く資産を増やし守るために、購入前の段階で税務面のシミュレーションを怠らないようにしましょう。
よくある質問(FAQ)

最後に、不動産投資の節税に関して読者の方からよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめます。初心者の方が勘違いしやすいポイントや、押さえておきたい注意点を確認しておきましょう。
Q1 赤字でも節税になるって本当?
はい、本当です。
不動産所得で経費が収入を上回り赤字(損失)になった場合、その損失は確定申告で他の所得と相殺(損益通算)できます。結果として課税所得が減り、払う税金が少なくなるため、赤字であっても税金面ではメリットが生じます。
例えば給与所得しかない場合には会社が年末調整で税金を天引きしていますが、不動産の赤字を申告すると払いすぎた税金が還付されます。ただし赤字そのものは現金のマイナスである点に注意しましょう。極端に赤字を出せば税金以上に手出しが増えるので、節税目的でも赤字幅はコントロールすることが大切です。
Q2 節税目的で購入したら損をすることもある?
十分ありえます。節税ばかりに気を取られて投資判断を誤ると、トータルで損失が出る可能性があります。
例えば節税になるからと利回りの低い物件をフルローンで購入すると、家賃より返済等が多くキャッシュフローはずっとマイナスになります。この場合、税金は減っても毎年の赤字補填で資金流出が続き、差引損失の方が大きくなる恐れがあります。
節税はあくまで不動産投資の副次的なメリットであり、投資判断時には物件の収益性や将来性を第一に考えるべきです。「減価償却できるから」と飛びつくのではなく、収支が成り立つ物件かを見極めることが大前提となります。
Q3 副業でも不動産投資の節税効果はある?
副業としての不動産投資でも効果はあります。むしろ本業に給与所得があるサラリーマン大家こそ、損益通算による節税メリットを享受しやすい立場です。
副業で得た不動産所得が赤字なら本業の給与から引けますし、黒字でも青色申告特別控除などで税負担を減らせます。ただし留意点として、副業の規模によっては確定申告の義務が生じることです(給与以外20万円超の所得があれば要申告)。
また会社によっては副業の届け出が必要な場合もあります。税法上は副業だろうと本業だろうと不動産所得の扱いに違いはありませんので、堂々と確定申告し、利用できる節税策を適用しましょう。
まとめ|不動産投資の節税は『仕組み理解』と『戦略』が鍵になる
不動産投資は適切に行えば効果的な節税手段となり得ます。本記事で解説したように、減価償却費や損益通算、青色申告の特典、法人化など多彩な仕組みを駆使することで、大幅に税負担を軽減できるケースもあります。ただし強調しておきたいのは、節税はあくまで投資の副産物であり、投資そのものの成功と両輪で考えるべきという点です。
節税効果を得るためには、まず不動産投資で安定した収入を確保し、適切な経費計上や長期的な視野での運用が必要です。節税の仕組みを正しく理解し、将来を見据えた戦略を立てることが何より重要です。税金は確かに大きなコストですが、そればかりにとらわれると判断を誤ります。大切なのは資産を着実に増やし守ること。その過程で税制のメリットを最大限に活用する、というスタンスが健全です。
最後に、不動産投資の節税は専門的な部分も多いため、不安な方はプロの力を借りながら進めることをおすすめします。信頼できる税理士や不動産の専門家と連携し、合法的かつ効果的な節税策を講じてください。知識と戦略を持って臨めば、不動産投資は節税の強い味方になってくれるはずです。
出典元
*1 国税庁: 「No.1391不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」
*2 国税庁: 「No.2260所得税の税率」
*3 国税庁: 「No.1370不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
*4 国税庁: 「No.2072青色申告特別控除」
*5 国税庁: 「No.5404中古資産の耐用年数」
*6 中小企業庁: 「法人税率の軽減」